第51話 祝賀会
アランは、スタンとボッサを連れて、統治者の住む、あの大きな宮殿の前に来た。
すでに、宮殿の前はハンターと魔獣、魔法使い達が大勢いて、話しながら宮殿の中へと進んでいた。
アランは、最高級のローブを羽織い、スタンとボッサは、一応、蝶ネクタイを着けさせてみた。
ちょっと大きかったかなー。
お揃いのチェック柄の大きめな蝶ネクタイをしているので、常に顔が上向いているような。
大きめじゃないと、ボサ毛ーのせいで隠れちゃうんだよねー。
なんか、ちょっとおバカさんっぽく見えるかなー。
柔らか素材だし、緩めに着けたからゆるせ、スタさん、ボッサ。
統治者主催のパーティーとはいえ、ハンターや魔法使い達相手なので、服装は気を使う心配は無い。
ハンターにしてみれば、普段から正装しているようなもんだ。と言いたいところだろう。
統治者は元ハンターだから、まったく気にしないし。
気兼ねしなくて良いパーティーだな。
魔獣も連れて入れるし。
「楽しみだな。スタさん、ボッサ!」
アラン達は、意気揚々と宮殿へ入って行った。
おおーー、スゲー!
こんな広間見たことねぇー。
これなら、魔獣が入ってもいいわけだ。大きな庭園に続くガラスの扉が開け放されていて、さらに広く見える。
噴水の辺りなどライトアップされ、庭にもテーブルがあり、ソファーもあるので気持ち良さそう。
音楽が奏でられ、食べ物も美味そうー!
立食とはいえ、料理の数が半端ねぇー。
アランは、楽しくて楽しくて、とりあえずグルッと見て回ることにした。
見て回るだけじゃ、もう無理ー。
アランは、料理をたくさん皿に乗せ、食べ始めた。
すぐさま、スタンとボッサの前に、皿が置かれ、肉が乗せられた。
スタンとボッサも、食べ始める。
似たもの同士。
しかし、凄いな、ここの給仕。
立ち止まって食べ始めると、魔獣達にも、食べ物が振る舞われる。
しかも、スタンとボッサが食べ終わると、ミルクを持ってきたよ。
スタさんは、またお子様サイズなので、ミルク貰ってるよ。
…あざとい。
「アラン、おいで。紹介しよう。」
……嫌、結構です。と言いたかったが、アランは仕方なく、魔法協会の会長のもとに行った。
会長は、ハンターの会長と統治者を改めて紹介してくれた。
そこには、強面や魔法使いのリーダーもいて、今回の討伐に対して労いを言われた。
そして辺りにどよめきが起こると、統治者の嫁と娘達が広間に現れ、父である統治者のもとにやって来た。
大丈夫かー。
強面は真っ赤になってガチガチじゃねーか。
強面の相棒のニゲル種が、娘達の前に出る。
良く出来た相棒だなー。
それに引きかえ俺の相棒は、まだミルクを飲んでるよ。
「良い子ね。この子の名前は?」
姉のほうが聞き、妹はニゲル種を怖がらずに撫でている。
さすがハンターの娘だな。
アランは、給仕から受け取った果実酒を飲んだ。
「レディ・ソフィア。」
アランは、果実酒を吹き出しそうになった。
どんだけ俺のハンターのイメージ壊すんだよ。
強面の相棒は、例の女の子が大好きな童話、スタン王子をキスで人間に戻したヒロインの名前だった。
ヤベー、スタさんの名前聞かれる前に、退散しなければ。
「かわいいー。」
見つかった。
娘達の視線の先には、腹を見せ床に転がるあざとポーズのスタンがいた。
今は、やめろ!
「名前は?この前、外庭でひっくり返ってた子達よね。かわいいわ。」
娘達は、スタンとボッサに夢中だ。
もう後にはひけねー。
アランは覚悟を決めた。
「妹が名付けたですが、こちらがスタン、そしてこっちはボッサです。」
「まぁ、スタン王子ね!」
娘達が喜ぶ。
ちげーよ、ただのスタンだよ。王子じゃねーよ。
「そうか、スタン王子か。」
強面が嬉しそうだ。
仲間を見つけたたような目で見るな!
「みんな、あの童話が好きね。」
統治者の嫁が笑う。
好きじゃねーよ。
アランは、早くこの場から離れたかった。