第46話 スタンとボッサ
新人ハンターくんが、矢を放つ。
スタンが、小さな火の玉を飛ばす。
本当に、小さな小さなな火の玉が、デンガに当たり、下に転がる。
…スタさん、また嘔吐していてる。
頑張れ。
ボッサは、デンガの後ろ足やら尻尾に噛みついては、急いでアランの所に戻り、また噛みつきに行っている。
アランは、痛みに堪えながら、ボッサがデンガに攻撃を受けないように、防御壁を作り守ってやる。
…しかし、ボッサの奴、中々腹立つ攻撃だなー。
ちょびっと噛まれるって痛いよなー。
とりあえず、ナイス!ボッサ!
デンガは、小さな痛みの連続で、怒り狂っている。
「ボッサ!」
デンガに殴られそうになったが、躱してアランの所に走って来た。
ボッサ、スゲーすばしっこい!
新人ハンターくんが矢を射ちまくっている。
…他に攻撃無いのかよ。
スタンの鳴き声が聞こえた。
アランが、スタンを見ると、今までで1番、体が大きくなっていた。
スタンは、いつもみたいに少し体を曲げている。
「おぉーー、スタさんやるのか!」
いつもとは違う大きな火の玉が飛び出し炸裂した。
が、スタン自身もびっくりしたのか、よろけて座りこみ、火の玉は、デンガではなく、洞窟の上にあたり、岩が落ちて、デンガの頭を直撃した。
うーん、なんかだけど。
スタさん、ナイスファイト!
デンガは、よろけながらも前足を振り上げ、新人ハンターくんを壁に叩きつけた。
新人ハンターくんは、立ち上がれず壁の所でうずくまっている。
デンガが咆哮をあげる。
アランは、もう限界と感じた。
みんなを守れないし、自身も病気のせいで威力のある魔法を繰り出せなかった。
体の至る所が痛い…。
「…薬草、間に合わなかったな。」
最後の力を振り絞って、みんなを洞窟の外へ出さなければ。
アランは、スタンとボッサ、新人ハンターくんを防御壁で囲い、宙に浮かべると、壁にもたれ掛かり、スタンとボッサを見た。
スタンとボッサが、かしかしと音を立てながら、凄い速さで防御壁を掻いている。
そんなことしても俺の防御壁は、破れんぞ。
アランの頬を、涙がこぼれる。
「…スタさん、強くなれ。」
「…ボッサ、大きくなれ。」
サヨナラだ。
デンガが、アランの前に立ち咆哮を上げる。
突然、防御壁が破れ、スタンとボッサ、新人ハンターくんが地面に落ちる。
「えぇっ、なんでーーーーーー!」
デンガが、炎に巻かれ、凄まじい唸り声を上げる。
アランの前には、1人の男の後ろ姿があり、振り向いた。
「苦戦中かね。」
魔法協会の会長が、涼しげに問いかけた。
クソじじぃー。
いいとこ取りかよ。
俺の涙、返せや!




