第43話 理由
アランは、優勢を守っていた。
彼女が繰り出す魔法は、それほど強力なものはない。
だが、今まで、特に魔法協会の会長達が倒せなかったのには、理由があるはず。
しかし、彼女なんで杖持ってるの?
死んでないのか?
杖は、持ち主の死とともに、この世から消え去る。
アランは、杖を振りながら彼女に接近する。
殺せない理由かー。
「うちの会長と出来てました?」
杖と杖を剣のように合わせながら、彼女に聞いてみる。
「クリストファー?」
彼女は、懐かしい人を思い出したように嬉しそうに答えた。
クリストファー?
えっ、そんな名前だったけ、俺の師匠と同じじゃん。
そういえば、初代会長って、クリストファーなんたらだったな…。
…えっ、この人いくつよ?
うーん、的が外れたかな。
アランは、考えながら彼女の攻撃を交わす。
うわっ、前髪焦げたじゃん!
「もう、そろそろ観念したらどう?坊や。」
彼女が、大きく後ろへ飛び退いて、微笑む。
嫌な、微笑みだなー。
「うわっ!」
アランの後ろで、声がした。
アランが振り向くと、そこには新人ハンターくんとスタンとボッサが転がっていた。
「はーーーーー!」
「あらぁ、不思議ではないでしょう。出ていく魔法があるんだもの、入ってくる魔法があっても。」
彼女が、さも可笑しそうにに笑う。
新人ハンターくん達には、光るものがついていた。
彼女は、いつの間にやらアランの側にいた者が、アランに親しい者として、呼び寄せの魔法をかけたらしい。
…なるほどね。
大切なら、守りながら戦いなさいってことか。
こんなことされたら、本当に戦いづらいっての!
つまりは、情をチラつかせた戦法か。
汚ねーな。
会長達にも、この戦法通じたのかよ。
情なんて無さそうなのに。
アランは、また、ため息をついた。
あの印取らないと、外に逃しても、また戻って来るよなー。
俺の力尽きるわ…。




