第42話 仲間
奥から、洞窟の大きさいっぱいの蜘蛛のような魔獣が現れる。
8本の足の内3本に、糸でひと束にされた人間とニゲル種が捕まっている。
皆、ぐったりとして生きているのか死んでいるのか分からない。
「ミヨンドレから離れろ!」
強面の指示で、皆下がり始める。
巨大な蜘蛛のような魔獣は、ミヨンドレと言い、糸を吐き獲物を捕らえる。
捕まったら、仲間の助けなしには逃げられない。
今、仲間が多くいるこの状況なら、助かることができるはずだが。
ミヨンドレが、大量の糸を吐いた。
アランは、杖が金色の光を放ち伸びると、鞭のようにしなり、糸を切り裂いた。
一部の糸が、ハンターと魔法使いを捕らえ、ミヨンドレの下に引き込まれる。
捕まったハンターの相棒のニゲル種が糸を噛み切ろうと糸に喰らいつく。
すぐさま、他のハンターや魔法使いが動きだした。
ここまでの戦いで、仲間意識が生まれているのだろう。
素晴らしい連係で、ミヨンドレの下から仲間を取り戻していく。
後は、先に捕まった者たちだ。
強面がミヨンドレの下に入り込み、左側の足を切り落とすと、魔法使いのリーダーが防御壁で、強面を守る。
捕まっていたハンターとニゲル種の相棒が下に落ちた。
アランは、すかさず杖を鞭のように振り、落ちた者たちを引っ張り出す。
「息があるぞ!」
後ろから声がする。
「すぐ、洞窟から出ろ!」
アランの声と同時に、ミヨンドレの巨体が、何もしていないのに倒れてくる。
巨体が倒れて来たところで、ミヨンドレの足を切り落とし、捕まっていた魔法使い2人をまた、杖を使い引っ張り出した。
そして、ミヨンドレの巨大が倒れ、凄まじい音が収まると、キーンと甲高い音が響く。
アランは、防御壁を作ったが、音は跳ね返せなかった。
アランの後ろの仲間達は、皆、固まった状態で止まっていた。
驚く表情のまま、皆、動かない。いや、動けないのだ。
「間に合わなかったか…。」
アランは、こうなる前に、仲間達を撤退させたかった。
アランは、仕方なく魔法で仲間達を洞窟の外へ逃し、自分は、薬草やら栄養ドリンク的なのを急いで補給して、ため息をついた。
割に合わないよ、まったく!
暗がりから、蜘蛛の糸で全身を覆った女が、ミヨンドレの死体の上に現れた。
ミヨンドレの死体から降りてくる女は、腰をいやらしく振りながら笑った。さぞ昔はイイ女だったろうと思わせる顔つきだが、顔色は、紫色になり、とても生きている人間には見えなかった。
蜘蛛の糸で覆われた体をしならせ、アランの前に立つ。
女は、顔色とは違い艶のある声で、アランに話しかけた。
「丁度良かったわ。子供が欲しかったところよ。」
「あー、結構です。」
アランの即答とともに、戦いが始まった。




