表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/133

第27話 しばしの分かれ

 翌日の朝、アランはいつもと違う装いで食堂にいた。


「よう、結局行くのか。」

 強面こわおもてが声をかけてきた。


「魔法協会からの要請なんでね。」

 アランは、じゃがいものポタージュをスプーンですくって口に流し込む。


 うっ、旨い。


 チキショー、討伐に出たら美味しい食事も、しばらく食べれない。


 スタンとボッサを見ると、カリカリを食べたり、ミルクを飲んだり忙しそうだ。


「んっ、ちょっと、スタさん、それボッサのミルクだから。」


 店の女の子は、ミルク、カリカリ、ミルク、カリカリと横に並べて置いてくれたので、夢中で食べているスタンとボッサは、真ん中に置かれたひとつのミルクを取り合いし始めた。

 バカですねー。

 もうひとつのミルクを忘れてる。


 アランは、スタンのミルクを真ん中に置いた。

 これで横から、カリカリ、ミルク、ミルク、カリカリの順番に並んでいる。

 スタンとボッサは、今度は、間違えず、それぞれのミルクを飲んでいる。


「あーぁ、行きたくないなぁー。」

 アランは、心の声が駄々漏れだった。




 重い足を引きずり、登録証を作った店に来た。


 店のオッサンに申し込み書を書かされ、料金を払った。


「万が一の時は、どうするね。」

 オッサンに嫌なこと聞かれたが、店側としては必要なことだろう。


「妹に2匹とも、送ってほしい。」

 可哀想に、スタンはまた出来の悪い弟に戻る。まぁ、ボッサも同じポジションだろうな。


 まぁ、頑張って生きて帰って来るけどさ。


「そうだ、干し肉あるけど買わないか。安くしとくよ。大量に仕入れたから、サービスで多くしてやる。」

 オッサンは、味見でひとつくれた。


 アランは、干し肉を噛みきる。

「うん。いけるな。買っていく。」

 アランは、いつものカバンを開いて下に置くと、スタンとボッサが寄って来た。


「ダメだぞ。お前たちは、ここでお留守番だ。」

 アランは、2匹を店のカウンターに乗せる。

「良い子にしてるんだぞ。」

 アランは、2匹の頭を撫でてやる。


「じゃあ、預かるな。」

 オッサンは、2匹をまとめて奥の檻に連れて行った。

 ガシャンっと、扉を閉めたのだろう音とともに、オッサンが話しかけてきた。


「干し肉をもう一袋、サービスでやるよ。ほら。」

 オッサンは、毛皮の袋に入れて持って来た。


「何これ!ふさふさー。」


「ハンターに貰ったんだ。この袋もいっぱいあるから干し肉入れておけ。」


 アランとオッサンは、やいのやいのとカウンターで話し込んでいた。



 オッサンの所にある檻は、扉を開けるのも閉めるのも、摘まんで開け、摘まんで閉めるのだが、オッサンは、アランに干し肉を渡すのに気をとられ、勢いよく扉を押しただけだった。


 オッサンとアランが、話し込むなか、扉が開いた暗い檻の奥には、光る目がゆっくりと前に進み始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ