第25話 俺の、俺の……
どっ、どう言うこと……。
俺の、俺の主張は……。
「以上だ。」
ローブの男たちが帰って行く。
「待て!他に特級は?」
アランは、慌てて声をかけた。
「いない。お前が戦況を見極めて、みんなのフォローをしてやれ。」
先ほど、通達書を掲げた男は、爽やかな笑顔を見せた。
いらんわ、そんな笑顔!
アランは、椅子にへなへなと座った。
何これ。
俺、特級になりたいとか言ってないし、今、薬草探し中なんだけど。
アランは、立ち上がり急いで宿屋を出た。
スタンとボッサは、慌ててアランを追いかけた。
「随分ひどい扱いじゃないですか。」
アランは、魔法協会の会長がお茶するカフェに来た。
「あぁ、悪いね。どうにも適任がいなくてな。人材不足だよ。困ったもんだ。」
会長は、穏やかに笑った。
「何があるんです?」
「本当に、人材不足に、……そうだな、ハンターとの折り合いが悪いことも、この討伐に関わっているかな。」
会長は、ゆっくりとお茶を飲む。
それ、会長と統治者の折り合いじゃなくて……。
「昔は、パーティーを組んで魔獣退治に行ったもんだが、最近は無くなったな。」
会長が、懐かしむように遠くを見ている。
「そんな強力な魔獣が、現れていないからなんでは?」
アランは、ため息をついた。
パーティーを組んで行くことが、正しいわけではない。
必要であれば、一緒に組んでいるはずだ。
それに、ハンターは、魔獣を相棒にしている。ひとりではない。
「街の外で、魔獣を倒しただろう。あの馬車に特級魔法使いが乗っていた。良い腕だと特級に推薦した者がいてな。通達書を持って行った者だ。」
あいつか!爽やか野郎め。
「迷惑ですよ。まったく。」
アランは、呆れた。
「まぁ、そう言うな。我々は、少々サボり過ぎた。大きな問題がないからと魔獣を放置していた結果、魔獣が増えていたことに気付かなんだ。」
「そんなに、増えているんですか。」
「あぁ、今回の討伐に上級魔法使いがいないだろう。他の討伐に当たっているよ。」
会長は、アランを見据える。
「すまんが頼まれてくれ。中級は、腕の良いのを揃えている。私が若ければ行くんだがね。」
会長は、紅茶を飲む。
その姿は、凄く歳を感じさせ、そして、少し、寂しそうに見えた。




