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第133話 会いたい人

 アランは、スタンとボッサ、ジュビと一緒に、薬草園で薬草の世話をしていた。


 あれから3日かかったが、体は、あの薬草のお陰で良くなり、あとは、寝たきりになったために落ちてしまった筋力が戻るだけになっていた。


 美味しいご飯も、美味しいお酒も美味しくいただけた。



 アランは、薬草をみんなが探してくれたことに感謝しながら、薬草園にいた。


 薬草に対してへの興味が、より一層深まっていて、これからの人生、薬草を見つけ、増やし、新たな調合でより良い薬を作り、新しい薬草の品種を考え、人のために役立てたいと思っていた。



 ボッサが勢いよく地面を掘っている。


「手伝ってくれているのか?」

 アランが、葉の様子を見ながら声をかける。


 立ち上がり、ボッサを見た。


「……休憩かっ!」

 さっきまで走り回っていたから、涼をとっているらしく、ボッサとスタンが、穴の中で丸まっている。

 最後はジュビが、ボッサとスタンの上に飛び乗る。



「……まったく、丸く固まったな。まるで、ララフィーみたいだ。……マティス王子、元気かな。」


 アランは、明日、あの薬草を採りにラシフィコ州に向けて旅立つ。


 途中、マティス王子、タイラーやラリーにも、病気が治ったこととお礼を伝え、ラシフィコ州に着いたら魔法協会にも行かなければと思っていた。


 会長とも、会わないとな……。

 父さん、母さん、それに妹にも……。

 たくさんの人が、心配してくれたんだと改めて思った。



「アラン、大丈夫?」

 ニーナが、心配そうにアランに近づいた。


「ありがとう。もう心配しなくても大丈夫だよ。……本当にありがとう。」

 アランは、ニーナの頭を撫でた。


「もうー、その扱いで、私への返事は確定ね。私だってもっと早く生まれていれば、シンシアさんと良い勝負だったはずよ!……まぁ、いいわ、ラシフィコ州まで、また、よろしくね。」

 ニーナは、笑顔でアランに向かって手を広げた。


「うん、よろしく。」

 アランも、笑顔でニーナとハグをした。


「おいおい、何してんだよ。」


「そうよ、かわいいお嬢さんと!」


 アランの後ろには、ポールとシンシアが立っていた。


「そうですよ、師匠!」


「エオイン、俺は師匠じゃない……」

 アランは、否定したが笑顔だった。



「はい、これ。」

 シンシアから、封筒を受け取った。


「何これ?嘆願書?」

 アランは、封筒を開けて呟いた。


「一応、難しいことは分かっているわ。でも、師匠が少しでも早く出れたらと思って、ポール達と書いたの。」

 シンシアが、アランの腕をさする。

 魔法協会から申請出来るけど……。


「魔法協会や、その……戦いの最中に亡くなった人や、病気が長引いている人の家族からも、嘆願書は出されているんですよ。……何を隠そう、うちのおじいちゃんも。」

 エオインは、最後は小さな声で話した。


「そうか、あの人も……。」

 魔法協会の会長は、アランの師匠の師匠だ。


「俺も、事件のことは、詳しくは教えてもらってないけど、人を助けるために戦ったと聞いてるし、師匠の師匠だから、きっと事情があったんだろうと思って……。」

 エオインは、最後は自信無さげに話していた。

 たぶん、亡くなった人と、病気の人とは、元弟子を捕まえに来た3人の事だろうと思った。

 本当のことを、聞いてないのだから、嘆願書の署名なんて考えるよな……。


「ありがとう。事情があっても人を殺したことは変わらない。……ラシフィコ州に着くまでに、もう一度署名するかどうか考えてほしい。自分の考えで決めてほしいんだ。良く分からないで署名なんかしないほうが良いし、署名しなくても、俺はなんとも思わないよ。」

 アランは、エオインの署名を返した。


「俺は、返さなくていいからな。」

 ポールが言うと、ニーナも返さないでと小さく手を振った。


「お前達こそ、良く考えろ。一応預かるけど、ラシフィコ州でまた聞くからな。」

 アランは、嬉しい気持ちでいっぱいだが、師匠は喜ばない気がした。

 そんな人だった。




 翌朝、アランは、診療所の前に立って伸びをした。


 スタンが伸びをして、ボッサも伸びをする。

 真似っ子どもめ。


 これから、また旅に出る。


 ポールとニーナ、エオインは、ラシフィコ州まで一緒だ。

 あの薬草のある森にも、行きたいと言っているが、あの魔女も手こずる魔獣相手なので、ベテランハンターと魔法使いを連れて行こうと思っていた。

 まぁ、絶対に行くとポール達は息巻いているので、上手くチームが作れれば連れて行くかもしれない。


 しかし、お子様達御一行をどうするかだなー。

 また、ラシフィコ州にある登録証のジジィの所に預けるかな、……嫌がるだろーな。


 とりあえずギルドで依頼を出してみるつもりだ。

 強い連中が集まってくれれば、俺が守ってやれるし。


 誰が、一緒に行ってくれるかな。楽しみだ。



「アラン、気をつけてね。」

 シンシアが、寂しそうに微笑んだ。


「……あぁ、薬草をたくさん集めて戻って来るよ。手紙も書くし。」

 アランは、シンシアを抱きしめた。


「師匠によろしくね。会うんでしょう。」


「……うん、行ってみようと思う。病気治ったよって言って来る。」

 アランは、心配そうに笑った。


「大丈夫よ。師匠の心配を一つでも減らしてあげなさい。」

 シンシアの言葉に、アランは、ほっとしたように笑った。



「よし、さぁ、野郎共、行くぞ!」

 アランは、スタンやボッサに呼びかけた。


 ジュビが、アランの頭を頭突く。

「お前もだよ、行くぞ!」

 アランは、笑顔でシンシアとクライブに手を振った。




 馬車で、南に向かっていたが、エオインの作った防御壁が弱っていた。


「直したほうが、いいんじゃないか?」

 アランは、エオインを突付くと、恥ずかしそうに呟いた。

「すみません、力不足で……。」

 馬車を先に進ませた。

 あとは、歩いて南まで行ける。


 エオインが防御壁を直している間、スタンとボッサ、ジュビが遊び回り、まっすぐ南に向かって走って行く。


「おーい、勝手に遠くに行くな!」

 アランが、大声で叫ぶ。



「……ほら、見ろ。」

 スタンとボッサ、ジュビが凄い形相でアランの下に戻って来る。


 また、あの空飛ぶ魔獣に追いかけられてる。


 そんな高くまで防御壁作れないからなー。


「さぁーて、久しぶりに使うなー。」

 アランは、嬉しそうに呟いた。


 炎が現れ、あっという間に美しい銀の杖となった。


「相棒ども!俺にまかせろ!」

 アランは、笑って杖を掴んだ。



 ✥✥✥ End ✥✥✥



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