第13話 州都へ
州都への馬車は、やはり出発を止めていて、馬車の前では、出発を急ぐ者たちが抗議の声を上げていた。
馬車を運行する側は、護衛不足を説明していた。
見るからに、弱そうなハンターが一人。
新人ハンター君が一人。
うーん、これは出ないな。
アランは、諦めて店で携帯食を購入して歩いて行くことにした。
何しろ自分には、マジックハウスがあるし、自分の身は自分で守れる。
「スタさん、ボッサ、携帯食買いに行くぞ。」
アランが、馬車に背を向けると後ろから大声で男が声をかける。
「おい、あんた!あんた魔法使いだよな。」
えっ、俺じゃないよね。
恐る恐る馬車の方に振り向くと、先ほどの弱そうなハンターが、これまた貧弱な男を捕まえていた。
茶番!
魔法使いなら、大概、相手が魔法使いだと分かるが、あの貧弱な男は、絶対魔法使いじゃない。
「あのハンター、よっぽど急いでるんだな。」
馬車の出発を待つ者たちは、魔法使いがいるなら問題無いだろうとみんなで詰め寄り始めた。
「なんか、出発しそうだね。」
アランは、携帯食は止めにして、馬車のところに向かった。
馬車3台、荷馬車2台が出発した。
どんだけ待ってたんだよ。
これだけの人の抗議じゃ、馬車の運行側もすぐ折れるよね。
しかし、人が多いな。
祭りでもあるのか?
スタンは膝の上、ボッサは、足と足の間に寝ている。
馬車の運行側から、2匹分の料金を取られそうになったが、赤ちゃんは料金を取らないんだからと抗議した。
「ほら、こんなに小さな赤ちゃんなんだから!」
いつの間にか子猫サイズになっているスタンを、アランは、馬車の運行側のおやじの前に付き出した。
グッジョブ!スタさん!
っというわけで、無事にアランたちは、1人分の料金を払い馬車で州都に向かっていた。
いくら何でも、そんな凄い魔獣この辺にいないだろ。
アランは、辺りを見回した。
しかし、馬車は異様に早く走っている。
手綱を持つ男も顔面蒼白だ。
どんだけビビってんの。
馬車壊れないよね……。
「魔獣だ!」
後ろの馬車から叫び声が上がった。
1人が叫ぶと、皆、大騒ぎになった。
何やら、大きな魔獣のようだ。
アランは、前から2番目の馬車に居て良く見えない。
後ろの馬車には、新人ハンターとなんちゃって魔法使い、前にはあの茶番のハンターがいる。
「一番前に乗りやがって、自分だけ逃げ切るつもりだな!あのハンター。」
前の馬車が、凄い速さで後続を置いていく。
「スタさん、州都までまだ遠いよー。」
アランは、スタンにスリスリする。
スタンはまた震えていて、ボッサは、またやってやるぜとばかりに後ろを威嚇している。
「まったく。また投げ飛ばされるぞ。」
アランは、ボッサをなだめるように撫でた。
この距離じゃ、州都からの兵は当てになら無いよな。
後ろの馬車がよれて、アランにも魔獣が見えた。
デカくない!
魔獣は、予想をはるかに上回る大きさだった。
後ろの新人ハンター君じゃ、荷が重い。
なんちゃって魔法使いは、なんちゃってだし。
「普通、こういう時は凄い奴が現れるんじゃないの。」
……現れねぇ。