第128話 もふもふ
アランは、とうとう寝込み始めた。
具合が悪いと言い始めた最初の頃は、まだ食事は、テーブルで食べていたが、最近は、ほぼ自分の部屋で、スープなどを食べるか、食べないで寝ているかになった。
「スタさん、……重いよ。」
アランの左肩あたりに、頭を乗せているスタンをもふもふする。
「柔らかいな。……でも、重いぞ。スタさんが、毎日、重しになっているせいで、スタさん、毎日夢に出てくるんだからな。…しかも、俺が行きたいと思う野原にぜんぜん行けないんだ。スタさんが邪魔してさ。まったく、夢ぐらい好きな所に行かせてくれよ……、なっ、邪魔するな……。」
アランは、力なく呟く。
アランは、最近怖いぐらいスタンに追いかけられ、飛び掛かられて、目が覚める毎日だ。
しかも、スタンは、アランの側を離れない。
トイレも部屋の片隅にしてしまう為、シンシアがトイレを作ってやったぐらいだ。
気が立っているのか、アランの側に来る者に、いつも唸っているし、アランに対しても、遊んで来いとスタンの体を押したりすると、唸って甘噛され困っていた。
どうしたんだよ、スタさん?
スタンは、アランを見て、ぷぃっとそっぽを向く。
なんか、喋らなくても通じてるよな。試してみるか……。
……あっ、窓に肉がくっついている!
スタンは、飛び起きた。
テレパス!凄くねー!
スタンは、アランを見ると不貞腐れたように、ドカッとアランにぶつかって座り込み、また寝始めた。
ヘル種の能力なのかなー。
すげーな、……スタさん。
アランは、またうとうとし始めた。
また、あの野原が見える。明るい陽射しで、暖かくて気持ちいい!
アランは、周りを見渡す。
良し、スタさんはいない。今がチャンス!
アランは、駆け出した。
良し、行ける!
アランは、不意に後ろを振り向いた。
げっ、スタさん!
なんだよ、なんで現れるんだよ。
アランの後ろには、凄い形相で走ってくるスタンがいる。
ひぇ~、踏み潰されるー!
スタンは、アランが見たことがないくらい大きくなっていた。
どわー、死ぬ!
スタンに乗っかかられ倒れるが、重くない!
もふもふ毛から、上半身だけ這い出ると、スタンが満足気に、アランの頭を舐めてくる。
くっそ、重くない筈なのに、下半身が出れない。
くっそー。どけ、このもふもふ!
アランは、必死にもがいて這い出ようとしているが出れない。
くっそー、くっそー!
「アラン?……アラン!」
うー、うー言いながらアランが、目を開けるとシンシアが目の前にいる。
「スタさん、駄目よ、病人の上で寝ちゃ!」
シンシアが、スタンを持ち上げる。
スタンが、してやったり顔をアランに向けていた。
この、もふもふ野郎め。