第110話 現実
アランは、王宮で目を覚ました。
マティス王子が、タイラーとラリーを強引に説得して、倒れたアランを王宮に連れ帰ったのだ。
タイラーとラリーは、1日中、怪我人の手当てで、森の中を駆け回りボロボロだったそうで、王宮にいる医者に任せてほしいとのマティス王子の説得に渋々従ってくれたらしい。
幼馴染の悲しげな顔を見ずにすんで、アランは、少しホッとした。
「そろそろ、最期の場所を考えてはどうかね……。」
王宮の医者に告げられた。
タイラー達に、言わせずにすんで良かったな……。
マティス王子からは、医者から現状を聞いたのだろう、先生、嫌だよと泣かれた。
身近な死が多すぎたな、可哀想に。
ララフィー達は、3匹だけまだ生きている。
2匹は、マティス王子に看取られた。
まだ、乳飲み子の魔獣の子など、大人だって助けられない。
気丈に振る舞うマティス王子は、少しだけ大人びたように感じた。
アランは、少し体調が戻るとマティス王子に暇をもらった。
「いつまでも、先生は僕の先生だから。」
マティス王子から、クビを言い渡されずに暇を与えられた。
「戻ったら、また色々教えてほしい。」
最後は、子供らしく、アランに抱きついた。
「ありがとう。君は良い生徒だよ、もっともっと、色んなことを学びなさいい。人生が楽しくなるよ。」
アランは、マティス王子を抱きしめた。
タイラーとラリーの怒りは凄いものだ。
「お前は、ここにいろ!」
二人とも、ジャイロには、代わりの者が行くべきだと怒っていた。
タイラーとラリーは、唇を噛みしめ不服そうにアランの前に立っている。
あぁ、子供の頃、学校で全ての教科で俺が満点とった時に見た顔だ。
悔しくて悔しくて、眉間にシワを寄せ、唇を噛みしめる。
今、二人は、何も出来ない自分達が悔しくて、怒っている。
……俺って、昔から意地悪。
「ジャイロに行って、最後の悪あがきをしてくるさ。」
アランは、二人を抱きしめた。
「大丈夫、ポールとニーナが、しつこくて。まだついて行くって聞かないんだよ。……1人じゃないから、大丈夫。」
アランは、二人の背中をポンポン叩くと笑顔を見せた。
アランは、タイラーとラリーの診療所を出て行く。
笑顔で手を振って。




