第103話 シャムリとボッサ
アランとニーナは、いつの間にか話すのを止めて、森を進んでいた。
肩に乗るスタンの毛が逆立ち始めた頃、ボッサが前に出て低い姿勢で唸り始める。
チルチルも、ボッサの後ろに立つ。
森の中から、シャムリの群れが現れた。
シャムリ達は、唸りながらボッサの前に立ちはだかり、血気盛んな若いシャムリが歯を剥き出して、小さなボッサを威嚇する。
ボッサは、低い姿勢から、小さい体を伸ばすように小さなジャンプを繰り返し、ニゲル種らしい負けん気を見せている。
たくましくなって……、それに比べて。
「……スタさん、数で負けてるから行ってあげて。」
アランは、スタンを肩から下ろす。
スタンは恨めし顔で、アランを見ると、トボトボ歩いてチルチルの後ろに立つ。
「スタさん、反対、チルチルと並んで。頑張って!」
スタンは、仕方なさそうに前に出ると、チルチルの横に立ち、シャーっと威嚇した。
……いや、何で子猫サイズのまま?怖くて大きくなれるの忘れてるの。
その時、振動がアラン達を襲った。
シャムリ達は、慌てて振動が来た逆に走り出す。
スタンとボッサが、慌ててアランのもとに戻って来た。
「向こうだ!」
男達の声が聞こえた直後、ハンターとは思えない小綺麗な格好の男達が、木々の間から現れた。
「どこだ!」
高音の声が響く。
男達が避けると、これまた更に小綺麗な格好をした10歳ぐらいの子供が、弓を持って現れた。
……魔獣より面倒くさそうとアランは、うんざりした顔をした。
「なんだ、そいつは!」
甲高い子供の声が、森に響く。
そいつって、明らかに俺を見てるよなー。腹立つわー!
「お前、シャムリを見たか?」
子供が声高々に話す。まるで声がデカいほうが勝ちのように。
「……どっか行きましたよ。」
アランは、つまらなそうに返事した。
「おい、何だ、その話し方は!」
これまた大声で、子供の側の男が一歩前に出る。
今度は、おいかよ。そいつ、お前、おい、って、てんこ盛りだな。
「かまわん、シャムリを追いかけるぞ!……ん、あれは?」
子供は、木の枝を指差す。
「ララフィーと言う魔獣でございます。」
さっきの大声男は、腰を折り声を和らげ話す。
ララフィー達が、怯えてまた固まっている。
子供が弓を構えた。
「痛っ。」
アランは、杖を出して、弓を構えた子供の腕をはたいた。
「あれは、ギルドの討伐対象の魔獣ではありません。」
アランは、冷たく言い放つ。
隣りの大声男が口をパクパクさせている。
「ぼっ、僕を誰だと思っている!」
子供が、腕を擦りながら目を見開いて、アランを見る。
「知りません。ただハンターの真似事をされるなら、ハンターの心得を学びなさい。闇雲に、命を軽視されるなどもっての外です。」
アランは、だんだんと目が据わってきた。
「だって…、痛っ!」
「だってじゃありません。」
アランは、今度は、杖で軽く頭を叩いた。
「きさまー!このお方は、州王様のご子息、第一王子マティス様であられるぞ!」
来たよー、超ー面倒くせー。
アランは、シャムリと一緒に逃げれば良かったと思って、大きくため息をついた。




