もしもあの時
私の地元は九州の南部の田舎でした。
当時、小学3年生だった私は、決して活発な方ではありませんでしたが、少しばかりの正義感を誇りにしていたような少年でした。
その当時、学校では、まだテレビの情報が話題の中心で、今のように小学生がスマートフォンを持てるような時代ではありませんでした。
しかし、時代は変わっても、その当時から変わらないものもあります。
それは、学級内でのいじめです。
1人の少し見た目が人より劣る女子生徒をクラスのみんなでよってたかってバカにしたり、椅子を蹴ったり、悪口机に書いたり。
酷いもんでした。
私は、参加こそしていませんでしたが、悪いことと知りながらも、集団的圧力に負けて、ただ、それを見ていることしかできませんでした。
私以外にも一人、そのいじめに参加していない生徒がいました。お恥ずかしながら、その生徒は私の初恋の相手なのですが、、、彼女はずっと、休み時間も席を立つことも無く、何かをひたすらにノートに書き殴っていました。彼女は時おり、ノートを立てて、トントンと机を叩き、『よしっ!』とニコッと笑っていました。その姿に私はとても惹かれていたように思います。しかし、水面下でいじめはエスカレートして行き、とうとう、その子は学校に来なくなりました。それから、彼女に会うことはなく、私は、市外の中学校へ進学しました。もしあの時、私が声をかけていれば、と思うと、今でも胸が痛みます。そう、彼女の名前は、工藤真奈美、と言いました。