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第4話 戻るために

「こ、これで大丈夫なのか?」


「後はわたしに任せてください」


 今、我は外に繋がる門に向かって普通に町中を歩いている。


 ゴミの山から見つけたすっぽり頭が入る大きめの服を着て顔を隠し、自然を装っているがこれはこれで怪しいのではないのか……?


 上半身裸は覚えられやすいし、見つけやすいという理由で小娘にこの姿にさせられたが、誤魔化せるのか疑問だ。


「そこの二人、少し話を聞きたいのが」


 ほら騎士団が来てしまった。


「ここらで上半身裸の少年を見かけませんでしたか?エルフ様に手を挙げたとして、今捜索中なのですが」


「いえ、見かけませんでした」


「そうでしたか。あと、後ろの方の顔を見せてくれませんか?」


 騎士が我に目を向ける。どうする、ここで拒否すれば一気に怪しまれる。


「すみません。主様は顔に火傷の跡が残ってましてお見苦しい顔を見せまいといつも隠しているのです。奴隷のわたしに協力できることは何でもやりますのでどうか、主様の心中察して頂けないでしょうか?」


「すみません!エルフ様でしたか!失礼致しました!」


 小娘は我の手を引き騎士団を回避した。


 相手に自分を奴隷と認識させたことで、我をエルフだと思わせたのか。


 現在エルフは人間より上の存在となっている。エルフが一度拒否したことを認めない者はいないと確信した上での発言であったか。ほう、なかなか切れるではないか。


 このまま進めれば脱出できると思ったのもつかの間、門は固く閉ざされていた。反逆者を逃さないためか。この状況で無理やり押し倒すことは困難だ。


「どうする?門は閉まっているぞ」


「あの馬車の荷台に隠れて通るのはどうでしょう?」


 小娘は指で門付近にある馬車を指した。

 

 小娘に聞けばあれは商人と呼ばれる人間の物で様々な町を転々とし物売りをしているらしい。


 操縦士不在の馬車を狙い、素早く荷台に潜り込む。幸い、今の我の体は小さく大きな荷物の陰に簡単に身を潜めることができた。


 荷台は布で外からは見えない仕様になっているから、気付かれることはない。


 すると、小娘は我の体にピタリとくっつく。

 顔を見ると頬が緩んでいるのが分かる。今まで自分を縛っていた全てから解き放たれて嬉しいのだろう。


 しばらくすると馬車が動き出す。荷台からだと状況は分からないが、時間の経ち方からして門を突破することに成功したみたいだ。


 だが、これからどうするか。仮に白髪のエルフがもうこの世にいないならば、果たして我はもとの姿に戻ることができるのか?


「あの、これからどうしますか?」


「この馬車の行先はどこだ?」


「分からないです。どこに着くのか、何時間かかるのか。なので目を盗んで途中で降りてもいいかもしれないです」


 明確な目的地は決まっていない。下手に途中で降りても迷ってしまえば元も子もない。


「次の町に着くまでこのまま馬車に乗り続けよう」


「分かりました。じゃあ、その、良ければ、町に着くまで竜王様のこと教えて頂けませんか?」


「よかろう」


 小娘は我の生い立ちに興味津々のようだ。


 小娘は我に心を許し、自分には害の無い存在だと信じ切っている。あのエルフを殴ったのは気に入らなかったからだ。別に小娘を助けたかったわけではない。良い方向に解釈してくれたのなら好都合だ。


 目覚めてからこの貧弱な体に何度も憤りを覚えた。元の姿なら人間から逃げる屈辱も甚振られる屈辱も助けられる屈辱も全て感じなくて済んだ。


 この体でなければ……と何度も考えたが、それを考えるのは無駄だと気付いた。我はこの体を、この最悪な現実を受け入れる。


 そして必ず元の竜の姿に戻る方法を見つけ出す。


 そのために、この娘を利用する。

 何の役にも立たないプライドは捨てて、戻れるのならどんなものでも利用してみせる。


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