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第32話 託された願い

 竜王討伐後、王都の王室にて女王ベネディと魔王フィラン、騎士団、上流階級のエルフが集っていた。


「イトナ、私たちを集めて何の用だ。もう竜王は討伐したのだ、そこの男と顔を合わせる必要は無いはずだ」


 女王ベネディは魔王フィランを一瞥して、イトナに問いかける。


「みんなで協力して倒したのに、その言い草はないのではないですか?」


「うるさい、若造が。答えよイトナ、なぜ私たちを集めた」


「私が竜王と対峙した時、奴は既に消耗し疲弊していました。竜王を討伐できたのは、エルフと人間と魔族が協力したからです。私たちは助け合わなければ、生きていけない小さな存在です。決して自分の存在を奢ることなく、他者を想い敬う心が必要です。これからはエルフも人間も魔族も平等にそして、共に生きるべきです」


 イトナの意見に団員と上流階級のエルフは、騒つき戸惑う。


「何を言うか!そんなことできるわけなかろう!」


「そうだ、今さら無理に決まっている!」


 当然のように上流階級のエルフたちが反論する。


「私はエルフと人間、両方の血を受け継いでいます!母は救世主の子供にして、陛下の妹です!」


「そ、そんなの嘘に決まっている!」


「イトナの言うことは事実だ」


 女王ベネディが認めたことにより、イトナの言葉は真実味を帯びる。


「なっ……」


 衝撃の事実に上流階級のエルフたちは言葉を失う。団員も言葉を失い、お互いの顔を見合わせることしかできない。


 周りが固まる中、一人イトナに拍手を送る者がいた。その男の拍手の音が王室に響き渡る。


「いやーそれはいい考えですね。種族の差別や殺し合いにはうんざりしていたところです」


 魔王フィランはイトナの意見に賛同する。


「長年の歴史で作られた種族の偏見や誤解を解き、和解に持ち込む。どれほど長く険しい道のりを選択しようとしているのか承知の上での言葉か?当然その選択をよく思わない者もいる。そいつらを説得し、平和な世界を示し導かなければならない。その覚悟が貴様にあるか、イトナ」


「はい。あります」


 女王ベネディの問いにイトナは躊躇いなく答える。その目は全てを背負い覚悟を決めた者の目だ。


「そうか。なら、私は王の座を降りる」


「な、何を言いますか!陛下!」


「イトナが目指す世界は私の築き上げた世界とは正反対だ。私がここにいる理由は無い。私はこの国を出る。貴様らも好きにしろ」


 女王ベネディの引退に上流階級のエルフたちは肩を落とす。


「この国から出る?そんな生ぬるいこと僕は許しませんよ。あなたは、多くの人間の尊厳を奪い、命をも奪った。それに魔族の言い分も聞かず、この国から追い出した」


「なんだ、若造。処刑を望むならそれでもいい。どうせこの世界に私の居場所は無い」


「処刑も生ぬるい。あなたにはこれからもこの国に居続けてもらいます。これから時代は急速に変わります。あなたには前時代的な考え方にしがみつく、老人たちの説得という役割があります。あなたの命が尽きるその日まで、その役割を担ってもらいます。で、いいですよね?イトナさん」


「はい。陛下にも協力して頂きたいです」


 女王ベネディは目を見開き絶句する。自分がこのような言葉を言われる立場にあるとは到底思わなかったからだ。


「ふっ、好きにしろ」


 女王ベネディはイトナに協力することを承諾した。


 これからこの世界の在り方は大きく変わる。今まで自分にとって、当たり前だったことや信じられてきたことが覆った時、混乱や暴動は必ず起きるだろう。


 それでも、イトナは全ての種族が共に手を取り合い、一切の争いが無い平和な世界を実現するために歩みを止めない。


 全種族の悪を背負った彼にイトナは願いを託された。


 それは今は亡き少女の願いでもあった。


 今を生きる全ての者がその願いを踏みにじれることなく、持ち続けられるように。


 その願いをいつの日にか、叶えられるように。


 イトナは全種族の悪、竜王エンディグスに誓うのだった。

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