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希望のエリクサー

 「エーレンの街の人達は僕以外もういないと思っていました」

 騎士の言葉にアッシャムが独り言の様に声を発する。ガレがアッシャムの肩に手をかけて声を掛ける。

 「あの街の住人は多くがあの争いの犠牲になりましたが、逞しく生き延び大陸を渡ったものも多いと聞きました。いつか仲間を探すのも良いのでは無いですか?嘆き悲しむだけが弔いでは無いと私は思っています」

 その言葉を聞いた私はガレという騎士の見方を少し変えることにした。これは覚悟も信念もない者には言えない言葉だと思ったからだ。この男は真に優しき強い騎士だと思った。

 「今私達騎士団に協力してくれているハイエルフはプビュレのみです。プビュレはあの争いで妹を失ったと言っていました。他の生き残った家族と大陸を渡るつもりだったようですが、貴方が生きていると知り1人この地に残ったと言っていました。アッシャム殿、プビュレとは?」

 「・・・・・・家が近所で、小さい頃良く一緒に遊んだ・・・・いや悪さを一緒にやった悪友です。そうですか・・・・ビューが・・・・ビュー・・・・」

 アッシャムの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。その涙をガレがハンカチで拭う。

 「良き友だったのですね。プビュレの存在はあの男にはバレていません。ハイエルフが近くにいるなんて分かれば何をするかわからないのがあの男です。そこは我々も全力で守ります。安心して下さい」

 ガレがアッシャムに微笑む。アッシャムはガレにしがみつく様にして泣きじゃくった。嗚咽にも近いその涙が私達の心にも刻まれた。アッシャムの痛みを過去を少しだけ垣間見た気がした。ガレはアッシャムの背に腕をやり抱きしめるようにその涙を隠した。

 アッシャムは一頻り泣くと落ち着きガレからそっと離れる。ガレはアッシャムの顔を見ると納得したのか腕を離しアッシャムから離れた。

 男同士の友情って言うのかな、女にはない繋がりを見た気がして少し心がほっこりした。

 「アッシャム、よろしいですか?あなたの悲しみも憎しみも悔しさも理解したいと思いますが、今は神子様を守るため、フェンリル様を守るためにこの者達の情報が必要です」

 ジュランがアッシャムへ声を掛ける。それにアッシャムも頷き同意する。

 「そういうことですので、話の続きを・・・」

 ジュランがガレに向かってそう促す。ガレは話を続けた。

 「事の始まりは1年以上前に遡ります。ある日突然あの男が皇帝に面会を要求しに城にやってきました。あの男が生きていたのは数百年以上前。まさか本人とは思わず、奴の名を語った偽者だと1度は追い返しました。しかしその後奴から手紙が届きそこには驚くことが書かれていたのです。それを読んだ皇帝は直接会うことを了承しました。皇帝はあの男と合う前にスパイを用意し、ある国へと派遣しました。それが倭国です。そこでスパイ活動をしていた者から次々と驚く情報が流されて来たのです。その情報の中にあの男が珠子様と同じ世界から渡って来た異世界人とあり、皇帝も今回の殲滅を決めました。それから我々騎士団もあの男を滅ぼすべく鍛錬に励んでいました。そんな時ユウがこの国に来て、テントーレの王族が召喚を行ったことその召喚者数人を国外追放したことを知りました。皇帝はこれは追い風だと判断し、あの男と表面上手を組む事で目眩ましになるかもしれないと、それ以上にあの男の目的を潰せるチャンスを得られるかもしれないと今回の計画を立てました」

 ガレの話を黙って聞いていたフェンリルがガレに話しかける。

 「皇帝はどうやって領主を倒そうをしている。一捻りとはいかぬ相手だ。どれほどの者を従えているかも分からん」

 「それに関してはご安心下さい。全て調査済みです。あの男は倭国でいくつかのパーティーを組んでいるようですがそれぞれのパーティーに他のパーティーが有ることを知らせおらず、パーティー間での連携はありえません。そしてそれは亀裂を生むと皇帝は考えています。それぞれのパーティーに騎士団の諜報員を接触させましたがそれぞれが自分たちだけだと信じているようです。あの男が使いそうな手です。そこでそれぞれに他にもパーティーが存在すること、他のパーティーのほうが重宝されていることを伝えれば内部から崩壊すると考えています。全てのパーティーを合わせて総勢387名。これがあの男の目的に賛同した者です」

 「ではその目的というのは」

 「あの男の目的はこの世界の破滅です」

 「「「!!!」」」

 ガレの言葉にフェンリル、アッシャム、ジュランが言葉を失う。

 「この世界にやってきた時はどうやら違った様ですが・・・・」

 ガレが静かに言葉を続ける。

 「あの男には元の世界に家族がいたようです。子供が2人いて、男の子と女の子。その女の子がどうやら元の世界では治すことの出来ない病に罹ったようで、この世界に有るエリクサーを持ち帰ることが始めの目的だったようです。しかしエリクサーは簡単に得られる物ではありません。製造方法も有るにはありますが成功率が低すぎて製造する者はいません。ダンジョンで獲得出来るのを期待する他ないのが現状です。それでもあの男は諦めずに探し続けたそうです。それがいつしか絶望に変わり次第に目的が変化し、今の目的へと変わった。皇帝の元へと届いた調査報告です」

 ガレの話に皆静まる。

 私はタカシ・シラヤナギのことを思った。もし彼がエリクサーを手にし、元の世界へ戻る方法を見つけることが出来たら。そもそもこの世界に召喚なんてされなかったら。もしもは意味がない。それでも彼の子供のことを思うと、彼が絶望を感じた痛みを感じずにはいられなかった。

 それでも彼がやった事は赦せるものではない。あの奴隷商も解って加担していたとはいえ、人を使い捨てにするなんて許せない。

 彼がこの世界にやって来た時のことを思い出してくれると良いと思った。そしてまた家族と暮らせると良いなと願ってしまった。

 「それで珠子様にお願いなのですが・・・・」

 ガレが突然私に話しかけてきた。

 「え?!あ、はい。なんですか?」

 「材料はこちらで調達済みですので、貴方にエリクサーを作って頂きたいのです」

 「え?は?」

 いや、あんたさっき自分で言ったんやん!成功率低いって・・・・・。

 「エリクサーの製造が失敗する理由は判明しているんです。全ては魔力量です。エリクサーを作るにはエルフやハイエルフを凌ぐほどの魔力が必要なのです。ですので、過去海の向こうで成功したと言われた時に伝わったのも、数人の魔導師だ途切れること無く魔力を注ぎ込み続けたからだと言われています。あなたならお一人でも可能だと信じています。お願いします」

 私は恐る恐る訊ねる。

 「そこまでしてエリクサーを作りたい理由は何ですか?」

 私がそう尋ねるとガレは笑顔で答えた。

 「まだ元の世界へ戻せる方法は分っていませんが、エリクサーさえ手に入れればあの男の考えが変わるかもしれません。そうすれば無用な争いをせずに済むかもしれません。・・・・あなたの希望もそうだと思いますが」

 こちらの考えを見透かすようにガレは微笑んでいる。確かに争わずに事が解決するならその方がいいに決まっている。私は暫く考え込み、条件を付けて承諾することにした。

誤字脱字報告宜しくお願いします。

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