GPS
「おい、どこ行った?探せ、探せ!」
この時私達はこの山々に囲まれた地形のせいもあり、完全に油断していた。邸からの追っ手無いと思っていたけど跡を付けられていたようだった。
私達はそのまま湖の辺で座りこの機会にとばかり話し込んでいた。
タカシ・シラヤナギの事。皇帝の申し出。擬きの仲間の事など話題が尽きることは無かった。
暫く話し込むとフェンリルが腹が減ったと言ったので食事の用意をした。
素材は有るからフェンリルに食事を取らせることをメインにメニューを考えた。
ちょっと時間が掛かっても皆好きな唐揚げと肉野菜餡掛け風と肉スープとパンの残った物全てを出した。皆久々に気が抜けたのか、ちょっと笑顔ある食事時間となった。
私とミリロは片付けをして、ジュラン・アッシャム・フェンリルは野営に仕えそうな薪や水の確保をしてくれていた。
アッシャムがジュランに汲んだ水を渡し、それをフェンリルが見ていた時、フェンリルが突如この湖の場所へ来た道を睨んだ。
ジュランとアッシャムがそれにより警戒する。
ジュランはミリロに視線を送り何かを訴える。
するとミリロは私を庇うように立ち、警戒を露わにする。
皆が同じ方向を睨んでいる。
私は理由が分からず聞きたいことも聞けずに居る。
皆が警戒態勢でいる中、湖への入口奥からガヤガヤと人の声が聞こえてくる。その声で私も身構える。
数人の奇妙な格好をした男性3人程が見えた。
3人は私達とは反対側に歩いていき林の陰に隠れ見えなくなってしまった。
3人の男性をみたミリロは脱力していた。フェンリルもふ〜っとため息を吐き警戒を解く。
ジュランとアッシャムは未だ警戒しているのが分かるほど気を張っていた。
「あれはこのブルーバレの近くに集落を持つ種族だよ。数は多くなく、穏やかな争いなんて知らないって程の優しい種族だよ。ルブル族って言ったと思う」
ミリロが未だ警戒しているジュランとアッシャムにそう話す。するとジュランとアッシャムもふ〜っと息を吐き警戒を解く。
「そうでしたね。ミリロはこのあたりの事、少しは記憶があるのですね」
「そんなに沢山のことは覚えてないよ。ここを通り抜ける時大人達に聞いたことを少し覚えてるくらい。あのルブル族に助けられた事が1度あるんだよ」
これだけ厳しい環境で生活出来る種族が居るんだ〜、と感心しながら聞いていた。
「助けられた?」
「うん。私達は50人近くでこの地を越えようとしていたんだけど、その年は雨季がずれ込んで早くにこのブルーバレも雪で覆われたんだ。引き返すべきだったんだろうけど、その時の長が進むって決めたから皆歩き続けたんだ。でもこのブルーバレの閉ざされた季節を越えることは難しく、全滅を覚悟した時ルブル族の子供達に集落へ手を引かれて入ったんだ。その手招きが無かったら間違いなく皆寒さで死んでたと思う」
ミリロの話にジュラン達が息を呑む。
「それは災難でしたね。ではあの種族の中にミリロの事を覚えている人はいそうですか?」
「それはどうかな。ルブル族は50年生きないって言われているみたいで、皆大体40才くらいで亡くなっちゃうみたい。その時子供だった子たちが覚えているかどうか・・・・・」
「そうですか・・・・・。神子様を逃がすのにいい場所だと思ったのですが・・・・」
私を逃がす・・・・・?何故ジュランは私を逃がしたいのだろう?森は無事に抜けたし、追いかけられている形跡もないよね?
「ジュラン?」
「はい。神子様どうしましたか?」
「いや、何で私を逃がそうとしているの?何から逃がそうとしているの?」
私がジュランに問いかけるとジュランはミリロやアッシャム、フェンリルを見て驚いたような表情をしている。
「神子様?気づいていないのですか?フェンリル様にこの様な変なものを取り付けたのは、我々を監視、若しくは追跡するためと考えるのが当然です。そのうえで我々は森を抜けたところで1晩夜を明かしました。そこで敵の気配は感じませんでした。これが異常なのです」
私は頭の上に盛大に”?”を乗せる。
「お主は・・・・。抜けておると思っていたがここまでとは・・・・・・。ジュランは追手を付けないなら何故この様な物を取り付ける必要が有ったかと言っているのだ。魔力を吸い取るものでないのなら、追手の目印以外何の意味があるというのだ!」
フェンリルからそう言われて、ふと頭に浮かんだものが有った。しかしそれはアロンアルファーの比では無い。そんなもの宇宙科学が有ってこその代物だ。この世界に衛星なんてものあるわけがない。だから直ぐにその考えを打ち消した。しかしそれならば態々フェンリルの毛に埋もれるように目立たぬ足の付け根付近に取り付けたのも納得がいく。追手の目印という方が無理がある。”GPS”なら送受信でなく、発信するだけならこの大きさでも問題ないだろう。益々わからなくなる。あのバカ領主は何がしたいんだ?!
この世界の神達は気づかなかったのか?
それともまだ衛星のようなものは持ち込まれていないのか?
だとするとこれはどうやって役割を果たしているのだろう・・・・・。
気づかぬ内に下を向きブツブツと念仏のような独り言を言っていたようだ。お陰で久しぶりにフェンリルの前脚顔面グリグリを受けてしまった。
「・・・・ひ・・・・む・・・・」
私が必死に声を出そうとするとミリロが気づいてフェンリルの脚をどかしてくれた。
「また1人でブツクサと・・・・。われらに話せ。話さねば分かってやることも、助けることも出来ぬ」
フェンリルにそう促され考えていたことをありのまま話した。私自身がまだ考えを纏めきれていないからどれ程誤解されずに伝わったか分からない。それでも皆で乗り越えていけるだろう。だって皆仲間だし!
「それでは神子様はこれが”ジーピーエス?”という物だと思われるのですね。それでその”ジーピーエス?”というのは相手の居場所を知ることが出来ると云うことですか・・・・・」
ジュランが私の話を聞き、確認の様に話すと下を向き考え込む。少ししてふっと顔を上げると緊張したように話しだした。
「事態は我々が思っているよりも深刻かもしれません」
誤字脱字報告宜しくお願いします。




