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召喚の条件

 フェンリルは皆の顔をぐるっと見てからゆっくり話しだした。

 「あの日は、邸に着く前に騎士から言われて居たのだ。邸内は主の私室の為如何なる魔獣で有ろうとも侵入する事は出来ない。従って主の従魔やペット達が居る場所て待機して貰うことになる、と言われた。われはお主等が罰を受けてはと思い、言われたことに従った。今思えばそれが…いや、招待を断らなかった事が間違いだったのかも知れない」

 フェンリルがそう言ったので私はすかさずその言葉を打ち消した。

 「皆は何を何処まで聞いたのかわからないけど、私達を邸に迎え入れた時にいた執事がタカシ・シラヤナギだった。領主のフリしてたのが本物の執事。私はタカシ・シラヤナギ本人からそう聞いた。それすらも虚偽かもしれないけど、あいつは皇帝も利用できるから組んでいるだけだと言っていたし、キルトの街の奴隷商も捨て駒だって言ってた。コハクは私達が何か処罰されるって言うようなこと言われたってこと?」

 「いや、明確に言われたわけではない。しかしお主と契約を交わした以上、そういった事態になりかねない事も想定して置かなければいけない。お主の力はいかようにも使い道が在るからな。お主が奴隷に等なればわれ等はクピトに申し訳が立たぬ」

 フェンリルなりに先をよみ危惧してくれたんだ。確かに言い掛かりを付けかねない奴に見えた。

 フェンリルには返し切れない恩が出来たかな!?

 「クピトとは?もしや創造神クピト様ではないですよね?」

 アッシャムが驚いたように確認してきた。

 「そうだ。アッシャムには話しても構わぬか?」

 私はフェンリルの問いに頷いた。

 「コトネは前創造神とクピトとの力の結晶なのだ。謂わば子も同然。だから彼奴らが狙っていると言うわけではないのだ。コトネは別世界からやって来たものでな、この世界の人間とは力がケタ外れて違うのだ。キルトの初代領主もコトネと同じ世界からやって来た者だ」

 フェンリルの説明を黙って聞いていたアッシャムは驚きを隠せないように私の顔を見た。

 「話がそれてしまったが、戻して構わぬか?」

 「・・・・・・はい、大丈夫です」

 アッシャムが俯き返事を返した。

 アッシャム大丈夫かな?後でちゃんと話さなかったこと謝らなきゃ!

 「そうしてわれだけ引き離され、真っ暗な部屋に通された。夜目が利くわれでも全体は分からなかった。そのくらいの暗い場所に通され、気付いたら魔力が吸われていた」

 その言葉に皆アッシャムを見た。確かにアッシャムは魔力が吸い取られているのでは?と言うようなことを言っていた。ジュランでさえそこまでは言っていなかった。アッシャムは何かに気付いたのだろうか?

 皆アッシャムを見たまま黙ってしまった。

 するとアッシャムはフェンリルを見て何やら耳打ち仕出した。2人だけで話が進んで居るようで、フェンリルも頷いたり1言2言返している。

 「アッシャム、2人だけで何の話?気になるじゃん!」

 私はアッシャムにそう訴えるが、アッシャムはお構い無しでフェンリルと話を続ける。

 一頻り話すと「時が来ればお話することになると思います」といい、アッシャムは黙ってしまった。

 フェンリルもアッシャムとの話は話す気がないらしくあの邸での話に切り替えてきた。

 「どれほどの時間が経ったのか分からないほど時が経ち、われを部屋から出す者が現れお主等がいる場所へと連れて来られた。それが大まかなあの邸でのわれに起こった出来事だ」

 大まかって…。大雑把過ぎでしょ!

 「もう少し自分の身に起きたこと、わからないの?」

 「分からぬ。どの様にして魔力が吸い取られたのかすら分からぬのだ」

 フェンリルの言葉に私たちは皆が黙り込んだ。これといった手懸りがなく、これで終わりと思って良いのかすら分からない。しかしそれはジュランとアッシャムが打ち消した。

 「魔力吸収の事はまだまだ用心するべきでしょう」

 「ええ。僕もそう思います。そもそも今も吸い取られ続けていると思ってます。フェンリル様の体を隈なく調べるべきだと思います」

 アッシャムの真剣な目に皆は呑まれそうになるのを堪えた様に見えた。私はフェンリルを見て異変が無いか気にするが、体力的な事以外は然程問題は無いように思える。

 「コハク?どう?体、何処かおかしな所とか違和感を感じる所は在る?」

 そう私が問うとフェンリルは体をブルブルと振るう。すると何かに気付いたのか後ろ足の付け根辺りを気にしだした。

 「どうしたの?何か変なの?」

 「ああ。左後脚の付け根辺りに何かくっついていないか?」

 そうフェンリルが言うので皆で左の後ろ脚を見てみる。するとフェンリルの訴え通り何か小さな丸い物がくっついていた。

 それを慎重に取り外す。どういう原理か、この世界には在るわけ無いだろうと言うような物でくっつけられた様に毛にしっかりと張り付いていて、無理やり取ろうとすれば毛まで毟り取ってしまいかねないため、物の近くの毛を刃物で慎重に切って取った。

 フェンリルから外し、ジュラン達がまじまじとそれをみる。

 私はフェンリルの足を見た。それが取付けられていた所には確かにこの世界には無いはずのものが付いていた。

 「これ、私の元いた世界に有ったアロンアルファって接着剤で、くっつけたら取るのは不可能な代物だよ。誰がやったかは分かるけど、この世界にこんなモノどうやって持ち込んだの?」

 私は疑問をそのまま口にした。

 私達は教室からこの世界に召喚されたけど”モノ”は持ってこられなかった。ポケットに挿してたペンや髪留め、要するに身につけてた”モノ”は持って来られたけど、それ以外はこの世界には持って来られていない。鞄を握っていた子も居たはず。私はあの時、確か日誌を読んでいた。なのに日誌は私の手には無かった。なら、あの男はどうやって”こんなモノ”この世界に持ち込んだんだ!?

 私はスカートのポケットに入れていたティッシュもハンカチも持ってこられなかった。・・・・・、そうだバレッタも髪やポケットに留めていた子は持っていた。でも手に持って遊んでいた子はあの後バレッタを使っていなかったはず…。

 アロンアルファなんてポケットに入れられても、身に付けられる物じゃない。

 私は皆の視線に気付かず、考えに耽ってしまった。

誤字脱字報告宜しくお願いします。


更新遅くなりすみません。

月曜日に会社で派手に転んで手を打撲して、1週間経った今も入力は痛みが伴う程度には内出血してる状態で書くのが遅く、更新出来ませんでした。

痛みが和らげばまたちゃんと更新する様にします!

枝話入れて90話以上。他に面白い作品が沢山ある中で読んで頂けて嬉しいです。

ちょっとでも楽しんでもらえるように、ちゃんと暇つぶしになる様に頑張ります!ありがとうございます。

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