距離感と1人の騎士
前話少し訂正しました。
ちょっと移動で平坦な話が続きます.....すみません。
私達は馬車に揺られ、フェンリルは私達の乗ったキャビンの真隣を並走している。
フェンリルの走る速度と馬とでは全然違うが、フェンリルが走りたいように走れば馬は追いつけないし、馬の近くを走れば馬が興奮して暴走してしまうため、キャビンの隣をピタリと並走している。
「なんか、コハク走るって言うより早歩きくらいな感じじゃない?」
私がそう話をすると、ジュランやミリロ・アッシャムが窓からフェンリルを見た。
すると皆クスクスと笑い出す。
「そうですね。ま〜馬の速度は早く走らせても80㎞そこそこでしょうから、フェンリル様には退屈でしょうね」
「そうか〜。なにげに本気で走らせたらコハク爆走するよね?私乗せてるの忘れて」
私がそうボヤくとアッシャムは堪えられないように声を出して笑い出した。それに釣られるようにミリロとジュランも笑った。
「あれは、・・・・アハハハ、凄かったですね・・・・ハハ」
「アッシャム〜・・・・笑いすぎ」
「すみません。ごめんなさい」
そう謝るが目に溜まった物を指で拭いながらまだ笑っている。
こっちは本気で死ぬって思ったんだから!
「コハクって本気で走ったらどのくらいの速さで走るんだろう?」
「種族としての大凡の速度は200km程度だと言われています。しかし、フェンリル様はそれよりももう少し早く走れるでしょう」
新幹線と並走できた・・・・・・。
私あの時死んでてもおかしくなかった。生きてて良かった・・・・・。
後でぶん殴っとこう。あの時体は全く力が入らないほど一反もめん並にヨレヨレだったからな!
当人はそんなこと知ったことではないように、渡した飴を美味しそうに舐めている。
馬車は森の中を進み暫くすると馬を休ませるために休憩すると言われ、私達も馬車から出て体を伸ばした。そんな私達の側にフェンリルが寄ってくる。
「このスピード何とかならんのか?余計に疲れてしまうわ!」
「我儘言わないで。馬にコハク並に走れっていいたの?無理に決まってるでしょ!」
私の言葉に納得行かないような顔をするフェンリル。私はフェンリルを撫でてやり、アイテムボックスに入れていた残ったお菓子を出してあげた。それを見ると不満顔は何処へやら。嬉しそうに口へ放り込んでいる。それをミリロが羨ましそうに見ていた。
「目的地に着いたらご飯を食べれるようにしてもらうから。ちょっと我慢して」
ミリロにそう声を掛けるが、今度はミリロが不満顔だ。も〜、何なのこの食い意地メンバー。
私は呆れてジュランとアッシャムを見るが、2人も大して反応は変わらなかった。フェンリルのお菓子を羨ましそうに見ていた。
は〜…...。あ、そうか。昼ご飯食べずに移動を優先しようってなったからか!それを思い出して騎士の1人に昼ご飯を食べていないからここでササッと食べさしてもらっても良いかと聞いたら、長居は出来ないがと許可をもらえた。直ぐに近くの切り株に準備してあった食事を出す。
「皆、食事してもいいって言うから、早く食べちゃって!」
そう声を掛けると皆一斉に駆け寄ってきた。
皆無言で料理を食べている。その様子を見て騎士が話しかけてきた。
「食事はいつもこんな感じなんですか?」
「ああ、食事に夢中で一言も発しない事もありますが、野営の夕食時はガチャガチャとうるさいですよ」
「そうですか。楽しそうですね」
私と騎士がそう和やかに会話しているとフェンリルとミリロがおかわりを要求してきた。直ぐにおかわりを出すとまた黙々と食べ始めた。
食事をしてお腹が膨れると満足したのか、不満顔は笑顔に変わっていた。
私は騎士に「すみません、ありがとうございます」と伝えると笑って「構いませんよ」と答えてくれた。
馬に休息を十分与えられたため再び馬車に乗り進む。後は目的地までノンストップで進むと言われ、フェンリルは休憩前と同じ様に私達の乗ったキャビンの隣を並走している。ミリロはお腹いっぱいになったからなのか涎を垂らしながらウトウトしていた。ジュランはそんなミリロに頭を預けて珍しく寝ている。
アッシャムは私の隣でそんな2人をクスクスしながら見ている。
「アッシャムも寝てて良いよ」
「いえ、僕は大丈夫です。珠子様は休まれないんですか?」
「うん。私も大丈夫。そう言えばアッシャムって何でキルトの街へ戻ったの?何となく嫌な記憶の街だろうって思ってたんだけど」
「そうですね。少し僕の話をしてもいいですか?」
そう言ってアッシャムが穏やかに離してくれた。
アッシャムのこれまでの事を・・・・・・。
アッシャムがずっと話をしてくれていたから退屈しなかった。
アッシャムは今20代前半に見えるけど、187才何だって。60才前に街を飛び出して色々な所に行ったけど、皇国での仕事が1番大変だったと教えてくれた。アッシャムが皇国に来た頃はまだハイエルフに対して世間の風は厳しかったみたいだけど、3年もしない間に法が整備されハイエルフが守られるようになったそう。それからはハイエルフの豊富な魔力を必要とする場所で馬車馬のように働いた、というより働かされたそうだ。十分すぎるくらいの報酬を貰えたから不満が有ったわけでは無いそうだが、それを良いことにめちゃくちゃ働かされたそうだ。だから皇国での仕事が1番大変だったそうだ。
私は少し笑いながら話を聞いていた。
アッシャムの話は深刻に話せば悲惨にも受け取れる内容なんだろうけど、軽快に話してくれるから和やかに聞いていられる。気を使ってくれているのが分かる。それと同じくらいの距離間も分かる。
きっと何処まで踏み込んでいいのか、何処まで近づけば安全なのか図っているんだろう。その気遣いと保身に胸がちょっとチクッとしたけど、今は何も言わない。だってそれがアッシャムのやり方なんだろうから。こちらを押し付けたくは無い。
「あ、アッシャムはどんな魔法を使えるの?」
「幻惑魔法は見ているので知ってますよね。それ以外は基本魔法は使えます。それ以外は草木魔法と氷魔法ですね。得意な所だとこんなものです」
「そっか〜。あ、私は治癒魔法と雷とタイフーンと火魔法。でも火魔法はまだ訓練してないからあんまり・・・・へへぇ....」
「では、この旅の中で使えるようになりましょうね」
アッシャムは優しく私に微笑んだ。
誤字脱字報告宜しくお願いします。




