ファルカス帝国第一騎士団
ギルドのこともあり、私達は必要なものだけを買い込み、そうそうに街を後にした。
テントまで戻ってみると、フェンリルとアッシャムはまだ戻っていなかった。
「まだ水場探しているのかな?」
「いえ、川の大まかな場所は伝えたので、水汲みしているところでしょう。かなりの距離がありましたから」
そうして買い物班の私達は昼ご飯の準備をして2人が帰ってくるのを待った。
太陽が真上に昇る少し前に2人は戻ってきたが、フェンリルの足から血が出ていた。
それを見たジュランはすぐさま止血をし治癒魔法を掛けたが、以外に傷が深いらしく手間取っていた。それを見て私が代わるといい、私が治癒魔法を掛けた。久しぶりに使った治癒魔法だけど、エンリオ達に鍛えられたお陰でブランク関係なく使えた。少しするとフェンリルの傷口も塞がっていき、痛みもなくなったようだった。
フェンリルの治療が終わると、一緒に行動していたアッシャムに事情を聞いた。
するとアッシャムは俯いて、何かを話そうとする度上向くが、また直ぐ俯いてしまった。
その様子にただ事ではないことを感じたジュラン達はフェンリルに問いただした。
しかしフェンリルは木の枝に少し引っ掛けただけだといい、話そうとはしなかった。
こうなると私達が疑うのは2つ。
ハイエルフだとバレた。そしてもう1つは擬き関連つまりはあの男か、タカシ・シラヤナギが関係していること。
どちらであろうとこの場所に留まることは危険であることには変わりない。昼食の準備は済んでいたが、移動しようとなった。
テントを畳み、荷を纏め出発しようとしたその時、背後から声を掛けられた。
「ヒジリ・コトネで間違いないな?」
それは冒険者ギルドに居た鎧姿の騎士風の男たちだった。
ジュランとミリロ、それにフェンリルが騎士と私の間に割って入る。
両者に緊張が流れる。しかしそれを解いたのは以外にもアッシャムだった。
「皆さん、大丈夫です。彼らは帝国騎士団の騎士たちです。皆さんに危害を加えることはありえません」
アッシャムの言葉にいつも冷静なジュランまでもが驚く。アッシャムの言葉が帝国騎士との繋がりを示唆していたから。
「アッシャ、・・・ヴン。アッシャムは彼らのことを知っているの?」
「はい。勿論です」
私の言葉に関係を隠すつもりもないようだ。しかし、アッシャムと帝国騎士とどの様な繋がりが・・・そう思っていると、騎士の1人が頭の麺の部分を持ち上げ”よっ!”って感じで挨拶をした。
私達は理由が分からず、皆で顔を見やる。
「以前私が日銭稼ぎで色々な事をしたというのはお話しましたよね?その時帝国内の森で大きな討伐が有ったんですが、それに参加したことが有ったんです。その時は確か・・・・・ああ、木こりって事で参加したんだ!」
アッシャムのその言葉に騎士たちは全員笑い出し、ガヤガヤと昔話を始める。
どうやらアッシャムは割の良さでその討伐に参加したく身分を偽ったらしい。それが元で怪しまれ拘束されたようだが、アッシャムが観念して本当のギルドカードを提示するとあっさりと討伐に参加させてもらえたそう。
「初めっからハイエルフだって言ってればややこしい事もなかったのにな」
「ま、今でこそハイエルフの売買や拘束を禁止しているがちょっと前までは帝国もハイエルフの誘拐なんてザラだったしな」
騎士たちが各々思い出話をする。
要するに、アッシャムが昔彼らにお世話になったことがあると・・・・・・。
私達はアッシャムに冷めた視線を送る。
アッサムはそれに気がついたのか、凍ったように私達に背を向けたままで居る。
「そう。それはそうと、帝国の騎士様達が私にどの様な御用でしょうか?」
私が思い出したように尋ねると、騎士たちが私を見て用件を伝えてきた。
「皇帝陛下がお会いしたく、お連れするようにとのことでお迎えに上がりました」
私達はアッシャムも含め全員固まった。フェンリルは私をとっ〜ても訝しげな目で見てたけどね。
私は会ったこともない人に何かできるような芸は持ち合わせておりません!!
しかし固まっていた所で呼び出されてしまったものはしょうがない。ジュランに聞いてみたけど、今後の命の保証がなくなるだけだから、取り敢えず直接あって話を聞いたほうが良いとのこと。・・・・不敬罪とかになりかねないってことかな?
皆観念して騎士に従った。
皇族用の立派な馬車だが流石にフェンリルは乗れないと、馬車に並走することになった。
「申し訳ありません。まさかフェンリルを従魔にしているとは思っても居なかったもので・・・・」
馬車に乗り込み腰掛けた私達に騎士の1人が申し訳無さそうに謝ってくれた。
私は開いたままの扉から上半身を少し出し、騎士に返事をし、馬車の近くであくびをしているフェンリルに声を掛けた。
「大丈夫です。コハク、飴要る?」
そう聞くとフェンリルは私達の方を向き答えた。
「ああ、前の袋に入れてくれ」
私はそう言われ、玉にした飴ではなく棒状の飴を麻袋に入れ、走りながら舐めれるように麻袋の口から出るようにしておいた。
「あれは?」
この世界では飴は無いのか、珍しいのか騎士の1人が魔力飴のことを聞いてきた。
「ああ、口に入れて溶かしながら食べるお菓子です」
そう説明するとその騎士は驚くことを聞いてきた。
「貴方の居た世界、日本にあるお菓子ですか?」
その言葉に私とジュラン、ミリロは最大限の警戒をする。しかし、騎士は何か問題だっただろうか?というような表情をして、フルフェイスの鎧なのに頭をポリポリ掻く仕草をする。その様子に他の騎士も集まりだして、フェンリルに渡した麻袋を見る。一通りみて満足したのか、別の騎士が私達の疑問と警戒を解いてくれた。
「私達の仲間に、貴方と同郷の人間が居るのです。ユウスケ・ナカムラ。ご存知でしょ?貴方と一緒にこの世界に召喚されてきた者です」
中村雄介。精霊の森に一緒に捨てられたクラスメート。
「彼は、今・・・・」
「ファルカス帝国第一騎士団の団員です。無事ですよ」
その言葉に何故か安堵する。大して仲が良いわけでもない。それどころか言葉すら交わしたことはない。でも、・・・・・無事で良かった。
私は馬車の中に体を戻し体を折る。胸の辺りで両手を握りしめ、感じたことのない感情の高ぶりを身体全体で耐える。
精霊の森に放置された時、真っ先に危険を察知したのは彼だった。私は他の2人と一緒に居たからまだそれでもマシだったのかもしれない。しかし彼は1人であの危険な状況と戦い、1人で逃げ切ったのだ。私はもう死んだものだと思っていた。だから生きていると聞いて、心の底から安堵している。
そう、私はあの森でオリファンに出会い、ハイエルフの村で安全に保護されていた。だからずっと消えない罪悪感のようなモノが心にこびりついて居たのだ。それが漸く取り払えた様な気がした。
頬を伝う涙は、帝国の冷たい風に冷やされ熱を感じなかった。
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