2つの思い
「なんで直ぐに言ってくれないの?そうしたら何か出来たかもしれないのに!ジュランが居なくなることなんてなかったかもしれないのに!!」
そうフェンリルを罵った私にミリロが立ち塞がった。
「神子様!言い過ぎです。フェンリル様だって態と言わなかったわけじゃないんです。私達だってアッシャムの事気にも留めなかったでしょ?仲間だなんて言っておきながら」
ミリロにそう言われて頭が少し覚めた。
私はフェンリルに「ごめんなさい」と言った。フェンリルは「すまん」とだけ言った。
私は本当に子供なんだなと思った。こんな時ジュランだったら、ミリロの様に冷静に考えられたら。タラレバで感情ばかりが頭を支配していく。皆と旅を続けるなら大人にならなきゃ。
私は頬をパンパンと叩き頭を切り替える。
「よし、先ずはジュラン、アッシャムの捜索を優先しよう。なんで居なくなったか分かれば探す場所も絞れるかと思ったけど、兎に角探そう!コハクは引き続き匂いから探せそうなら探してみて。ミリロもちょっとは匂い分かるのかな?そうなら手懸りを追いつつ匂いでも探してほしいんだけど」
私の話に2人は笑顔で頷いてくれた。
感謝はこんな非常事態じゃなくて常日頃出来るようにしなくちゃ。
よし、私も2人を探そう!
ミリロとフェンリルはそれぞれ足跡や行きそうな場所等手懸りをもとに、匂いも嗅ぎつつ探してくれているようだ。だって、2人ともめちゃめちゃクンクンしてるもん・・・・・。私はそんなこと出来ないから、ミリロとフェンリルが探さない所を探そう。そうなると来た道を戻るんだよな〜......。ジュランはその可能性が0では無いだろうけど、アッシャムは戻るかなぁ?だって、奴隷になってた街だよ?嫌だよね・・・・・。
そうは思えど、私が探せる場所は街へ向けての道。来た道を戻りながら街へ向けて歩いていく。その間もジュランとアッシャムの名を呼びながら、たまにすれ違う人達に情報を貰いながら・・・・・。
「あ〜あ、そのエルフなら見たよ。でもかなり前だよ。夜明け前にキルトの外壁の所から出発して朝日が照りだす前にすれ違ったから、相当急がないと追いつけないんじゃないかな。でも、そのエルフ小さな女の子を追いかけているように見えたけど・・・・」
ジュランと、アッシャムだ!!
私はその情報をくれた冒険者にお礼をいい、テントまで戻った。ミリロとフェンリルが戻って居ないだろうと思ったけど、先に戻っていたようだ。
私はテントまで小走りで駆け、2人に話しかけた。
「どうしたの?早くない?見つかった?」
2人は顔を見合わせて私を見る。
私は2人を交互に見つめ返事を待つ。
「動く可能性のある水辺や林の中を探したのだが、それはここへ着いた時の水汲みや薪集めのときのものだと思う。匂いもほどんど消えていた」
「そっか・・・・・」
「しかし」フェンリルが私の話を切るように話しを続けてきた。
「しかし、来た方角から風が吹いた時、ジュランとアッシャムの匂いを感じた。微かだが確かに感じた。2人は一緒に居るようだ」
私はフェンリルの言葉に確信した。冒険者の情報。フェンリルの嗅覚。ジュランは何らかの事情でテントを離れたアッシャムを追っている。
理由は分からないけど、アッシャムはキルトの街へ戻っている。
奴隷になっていたのにどうして?分からないことだらけだけど、今は2人を見つける事が最重要事項だ。私はこの場を離れて街へ引き返すには時間が遅いと思い明日の朝出ようと言ったが、ミリロもフェンリルもそれでは遅いと言い返した。
「アッシャムが何故この場を離れたのか分かりません。しかし、明日ではジュランが危ない事は予測が付きます。夜間の移動が危険なのは十分理解しています。それでもジュランとはずっと一緒に旅をしてきたんです。助けに行きたい!」
ミリロの切実な訴えは理解出来た。でも…。フェンリルをみると頷かれた。フェンリルもそうすべきだと思っているようだ。
ならば行動は早いほうが良い。
「ご飯を食べたら直ぐ出発しよう」
「それでは遅い!」
フェンリルにそう言われたけどこれは譲れない。
「ミリロもコハクも朝も昼も食べずに夜通し走り続けるつもり?しっかり食べてもらうからね!」
私はぱぱっと出来る物に絞り2〜3品の料理を出した。ミリロもフェンリルもしっかり腹拵えをして、野営の片付けも手伝ってくれた。
そうして私達は予定していた旅路を引き返し、再びキルトの街を目指した。
日が傾きだし、道が少しづつ見づらくなっていく。
「コハク、大丈夫?道見える?」
「大丈夫だ、われは夜目が利く。お主こそ振り落とされるな。いつもより早い速度で移動しているからな」
確かにフェンリルはいつもより速い速度で走っていた。ミリロもそれに遅れを取らないようにいつもより真剣な顔で飛行中。
夕方は数組の旅人とすれ違ったが今は深夜くらいの時間。この世界には当然日本のような街灯は無い。街の中に僅かに街灯が灯る大きな街も有るけど外壁の外にあることは無い。誰も管理できないからという所も在るが、外壁の外は魔物に壊されてしまう可能性が高いからだ。だからフェンリルもミリロも真っ暗の中をひた走っている。記憶の道を辿って街までの道を思い出す。田んぼや畑のような段差は無かった。いくつか大きな石を見たけど、今夜は月明かりがある。これだけ灯りが在ればそれだけ大きなものならぶつからないだろう。ミリロはフェンリルの後ろをピッタリくっついて飛行しているから、フェンリルがぶつからなければミリロも大丈夫だ。
私は東京という都会に生まれ、そこから出たことが無い。だから夜でも灯りが無い事の不便がどれほどのものか知らない。だからとにかく2人が安全に街までたどり着くことを願う。
「大丈夫だと言っているだろう。お主は無駄な所で心配性なのだな」
フェンリルの背で祈るような気持ちで居たら、フェンリルに見透かされて茶化された。
そんなやり取りをミリロに聞かれ、ミリロが私の隣に並ぶように飛行し、「大丈夫です」と背を撫でられた。
「はい、2人を信じます」
「ジュランも、アッシャムも!」
ミリロに笑顔で返された。
そうだね。きっとあの2人も無事だ・・・・。信じよう。
そうして私達は暗闇の中をひた走る。
誤字脱字報告宜しくお願いします。
予定していたことは出来ませんでしたが、ちょっとは羽を伸ばせました。
明日は、10時に更新します。
今夜更新したので、8時の更新はなしです。




