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フェンリルの贖罪とアッシャムの秘め事

 キルトの街を出発して順調に足を進めている。

 昼を少しすぎるけど、もう少し足取りを進めた所で、休憩を取るのにちょうどいい所がありそうだと走り続けている。

 アッシャムもジュランやミリロより上手に飛行している。ジュランもミリロも魔力飴を1度以上摂取しているがアッシャムは1度も食べていない。飛行魔法は魔力消費を抑える飛行方法が在るようだけど、それでも魔力を消費し続けるから大変なはずなんだけど、フェンリル云わくエルフとハイエルフとでは基礎魔力自体が違うのでそのせいだろうと言っていた。

 そんな事を聞いたら、フェンリルに舌を噛むぞと注意された。

 「着いた〜!!」

 「お主は・・・・・」

 フェンリルに呆れられたけど、気にしない。背に乗ってるだけでも疲れるものは疲れる。主にお尻が!!私達は漸く街を出て初めての休憩を取る。早速遅めのお昼ごはんの準備。皆なれた物でテキパキと準備を手伝ってくれる。アッシャムはその様子を驚いたように見ていた。

 「皆さん役割が決まっているのですか?」

 何となく今の感じになっているので誰も自分の役割だとは思っていないだろうと思うけど、「何となくだよ」と返事をしておいた。それが良くなかったのかもしれない。アッシャムは真面目な性格のようで、この後の片付けや野営のとき、自分が何をすれば良いのかやたらと聞いてくる。気にせずに手伝えることが在れば手伝ってって言ったんだけど新参者だから何か役に立たなきゃとか思ってるのかな?

 ジュラン、ミリロともコソッと話して見守ろうとなった。そのうち馴染めば自分で勝手に自分の役割は見つけてくるだろうと・・・・・。

 役割なんて無くても、好きなように居場所を作ってくれれば1番良いのにと思うが、人の気持はどうする事も出来ない。本人が納得行くまで周りは待つしか無いのだ。こんな時って焦れったいと言うのか、歯痒いというのか、なんとも言えない気持ちだと知ることが出来た。

 私はアッシャムの行動を見ながら料理を作った。そう入っても宿で持たしてもらったお弁当も全員分在るから汁物と肉を焼いただけの簡単ランチとなった。

 「久し振りのおにぎり〜。美味し〜!!」

 「これはおにぎりと言うのですか?なんとも不思議な食べ物ですね。米を固めているのですね。それなのにホロホロと口の中で粒が解けてとっても美味しいです」

 お!?ジュランには好評ですな。

 ミリロは・・・・・・微妙?美味しくないのかな?

 「ミリロ〜、美味しくない?口に合わなかった?」

 私の問いにミリロは慌ててそうではないと反論した。

 「ただ、この中心部にある物は肉だと思うのですが、今まで食べたこと無い肉なんです。何の肉なのかなと思って」

 あ〜、私は直ぐにキルト周辺で取れる鳥だと分かったけど、皆ミンチ肉を食べたこと無いのかな?だから食感が変わっただけで食材が分からないんだ。

 「例の街周辺で取れる鳥肉だと思うよ」

 「え?!でも味が・・・・」

 「うん、ミンチ肉だとまた食感が変わって味も違うように感じるよね。ミリロはミンチ肉嫌い?」

 私がそう言うとミリロはおにぎりの中に入っているミンチ肉を凝視した。

 「いえ、とても美味しいです。このミンチ肉って作れるものなのですか?」

 「あ〜、私が居た所では肉をミンチにする道具が在るんだけど、こっちでは無いからどうだろうね。街にいる間にミンチ肉の存在に気付ければ良かったんだけど、帰りにまた立ち寄って聞いてみよう。この先でもその道具が手に入れば作るよ!このミンチ肉使い道は色々有るからさ!」

 私がそう言うとフェンリルもジュランも目を爛々と輝かせた。

 1人アッシャムは違った。

 「珠子様は何処のご出身なのですか?」

 「え?何で?」

 私が不思議に思い聞き返すとアッシャムは困ったように口ごもった。

 「あ・・・・いえ、特には・・・・・」

 「ふう〜ん。そっか!」

 何となく済んだ会話だったが本日2度目の失敗ごとだった。アッシャムの話をもう少ししっかり聞いておくべきだった。アッシャムはハイエルフなのだ。ハイエルフの寿命は長い。若く見えても人やエルフのそれとは一致しない。アッシャムは知っているのだ。召喚術、そして召喚される者のことを・・・・・・。この疑問を解かなかった事が後に騒動の火種になるが、召喚がどれ程重大なことかを知らない私は気にすることもなくその会話を忘れてゆく。騒動が起こってアッシャムに理由を聞いて納得するのだが、それまで私は自分では注意していたつもりの会話の中にこの世界の人間ではないことを示唆する言葉が含まれていたことに気づかなかった。いつもなら注意してくれるジュランも食事に夢中で私とアッシャムの会話を聞いていなかった。


 食事と少しの休憩を済ませ、また今日の野営地へ向けてひた走る。その間アッシャムの様子がおかしかったみたいだけどフェンリル以外は誰も気づかなかった。それでも食事と少しの休憩だけでは消費した魔力を補うことは出来ずに、途中アッシャムも魔力飴を食べてくれた。そうして見かけ上は仲良く旅を続けている。何時間かぶっ続けで走り今日の野営地へ着いた。するとアッシャムが自分が水を汲みに行ってくると行ってバケツを持って川の方へ消えていった。

 「気にしているのかな?」

 「そうですね。こればかりは見守るしかないでしょう。気をもんだ所で本人が納得しなければどうすることも出来ません。そっとしておきましょう。限度を超えるようであれば、諌めればいいだけです」

 ジュランがそう言ってくれたからアッシャムが消えた方を見つめて頷いた。

 早く馴染んでくれたら良いな〜。

 私のそんな思いとは逆のアッシャムとフェンリル。フェンリルはアッシャムが行った方を見つめ続けて、いつもなら私がアイテムボックスから食材を出す所を見ていることが多いのに、この日は昼からずっとアッシャムのことを気にしているようだった。

 「コハク〜、どうしたの?アッシャムなら大丈夫でしょ?それとも何か凶暴な魔物でも居るの?」

 「そうではない。そうではないのだが・・・・・」

 「う〜ん、なんか言葉のキレが悪いよね?やっぱり何か有るんでしょう!?」

 「そうではないと言っているだろう!お主はさっさと夕飯でも作らんか!」

 フェンリルが私を怒鳴るのは私自身の身に危険が及んだ時だけだ。過去に擬きに殺されそうになった時くらい。それ以外は怒鳴られるなんて1度も無かった。だから驚いたし、悲しくもあった。フェンリルは意味のないことはしない。それは今まで一緒に居て分かっている。でも、今私は怒鳴られるほどのことをしただろうか。自分で自分の言動を頭で繰り返すが、少ししつこいくらいで怒鳴られるほどでは無いと思う。それなのに怒鳴られたことが今までの時間を崩壊させていくようで怖くて悲しかった。

 「・・・・ねぇ、コハク?本当にどうしたの?私そんなに酷いことした?」

 私が歯を食いしばり、泣くのを堪えてそう聞くとフェンリルはバツが悪そうに「すまなかった」とだけいい、テントの裏へ隠れてしまった。

 こんな事は初めてだった。

 私だけじゃなく、ジュランもミリロも驚いている。皆どうしたら良いのか分からず重い空気が漂った。

誤字脱字報告宜しくお願いします。

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