神の悪戯と失った者
遅くなりました。
ちょっと中途半端かもですか、シーン的に切れるのでここで更新します。
青年は少し怯ながらもゆっくりと話し始めた。
「僕はガルハムンド神殿が在る場所に嘗て栄えた街エーレンの出身です。その街が滅ぶ前、僕は自分勝手に家を飛び出し各地を放浪してました。あるときは冒険者パーティーの助っ人としてあるときはは薬師として日銭を稼ぎながら好き勝手に生きてました。ハイエルフは種族的には皆器用で大概のことは熟せます。だから生活に困ることは無かった。だから家族の事など気にする事なく何年もそんな生活を続けていました。そんな時エーレンの街が一匹のフェンリルによって破壊されたと聞いたのです」
その一言で青年とフェンリルの関係は十分だった。フェンリルは青年がエーレンという街の出身だと知っていたのだ。だから必死に救い出そうとしていたのだ。私は確かめなければいけないことが増えたようでちょっとだけうんざりな気分だ。
「そのガルハムンド神殿だけど、私達が壊した。そこに居た神擬きも消滅させた。…んだよねコハク?」
「ああ、確かに奴はいない。あの地は今は更地だ」
私達の話が衝撃だったようで、あからさまに驚いた顔をしていた。その後は言葉が出て来ない様だった。暫く待ったが続きを話せる心情では無いようで、今日はここ迄にして明日以降また話をする事にした。
ドアが開きそこからジュランが顔を出した。
「全員分の夕飯の用意が出来たそうです。取り敢えず食事にしましょう。今日は皆疲れているでしょ」
そう笑顔で告げると、皆を部屋から出し食堂へと向かわせた。本当に頼りになる。
食堂に着きそれぞれの席に着くが青年は立ったまま座ろうとしない。私は理由が分からず「座れば?!」というが座ろうとしない。
「貴方はもう奴隷ではありません。ゆっくりで結構ですから、慣れていって元の感覚を取り戻して下さい。大丈夫ですか?」
ジュランがそう青年に言うと、青年は静かに頷いた。そうして空いている席に座り皆で夕食を取った。
「そう言えばコハク、コハクは何であんな神擬きに従ったの?コハクなら振り切れたでしょ?」
「前に言わなかったか?」
「言ってない『忘れろ!』だった(怒)」
3人が”覚えてたかー!”って顔してる。
教えてくれるって言ってたもの、忘れろ!と言われて忘れる程私はお人好しじゃない!
青年も興味が在るようだった。自分の故郷を壊されたのだ。興味無いと言うほうが不思議だろう。
青年の表情にフェンリルも観念したようだった。
「はじめはなんてこと無いものだったんだ。ただいつも通り運動がてら狩りをしていて、近くに獲物が居なくなったので獲物を探して移動した。その先にホワイトドラゴンが居て、狩りをするような獲物ではないからわれもその場を離れようとした。そしたらオーテントの奴がそれを見て空からわれに話しかけたのだ。その時はまだホワイトドラゴンに察知されていなかったから逃げられたものを、奴の所為で気づかれしまいホワイトドラゴンと戦う羽目になった。街や村も近くに有りそうだったからわれは其の場からドラゴンを引き離す事を優先した。クピトとは契約していなかったが、われはクピトを好いているからな。クピトが嫌がることはしたくなかった。だから戦う意思を見せ、ドラゴンを引き付け山や草原まで逃げるつもりが、オーテントの奴がそれを阻止してきた。奴はあの地を滅ぼしたかったのだろう。後の神殿を築くためか何のためかは今となっては分からぬが、街を壊したかったのは間違いないだろう。それでその場で闘いになり、街や住人が巻き沿いになり多くのものがなくなった。何度となく場所を移せないか、ドラゴンは意思疎通が可能な種族だ、だから止められないか話してみたが駄目だった。オーテントの奴がホワイトドラゴンの精神に何かをしたのだと思う。われも途中から自分の意思で動くことが出来なくなっていた。奴の精神感応の魔術だろう。魔術は嘗ての魔族のみが使えるものだったんだが…」
「魔族のみが使えるって、その時点でもはや神ですら無いじゃん!魔族じゃん!」
私は思ったことを口にした。フェンリルの話を聞くまで辛うじて神だった。邪神とか擬きだけど神だった。でもフェンリルの説明聞いたら神な理由が無いと分かった。精神に作用する術があるとあれは…そう、ファレットが教えてくれたんだ。その時になんでかかんでか言ってた気がするけど、右から左で忘れた。
「これは前に言っただろ、神とは力だ。われ等のような種族や形ではなく、力そのものが神なのだ」
あ〜、それは何となく覚えてるけど…。
「だからって魔族のみが使えるって、他の神様も使おうと思えば使えるって事?」
「…そうではないが…。ともかく神は神なのだ。あんなのでも神だったのだ。その神が力を使えばわれ等を操る事など造作も無いこと。だからといってそなたが納得出来る話では無いだろうがな…」
そう言ってフェンリルは青年を見たけど、直ぐに所在無さげに目を逸らした。
怒られたり、罵声を浴びれば互いに納得出来るような話でもない。どちらも救われないなと思った。
何となく沈黙が流れ、皆料理に目をやっているが誰も食事をしている訳でもない。ただ誰を、何処に目をやれば良いか分からず料理を見つめて居るだけだった。
「そんな湿気た面で食べるくらいなら食べてもらわなくて結構!とっとと席空けておくれ!」
皆周りの状況が見えていなかったので、その声で皆顔を上げた。声の主はこの宿の女将だった。
「何が有ったかは分からないけど、その子奴隷だろう。でも奴隷にだっておんなじテーブルに着かせるあんた等だ。ちょっとの粗相なら許しておやりよ」
・・・・・・?あ〜、青年が何か言うかやるかしてお通夜みたいになってるって思ったのか!
「いや、そうでは無いんですが…」
「じゃなんだい?!まさかうちの料理が不味いって言うんじゃ無いだろうね!?」
その言葉を私とジュランで慌てて否定する。従魔ㇳいえどフェンリルを宿へ入れてくれたんだ。こんな宿そうそう在るとは思えない。帰りの道中も考えると二度と泊まれないのは困る。
「だったらそんな暗くなってないでとっとと食べちゃてよ。片付きゃしないよ。後のお客さんも待ってるからさ」
女将さんはそうケタケタ笑いながら奥へと消えていった。
私達は互いに顔を見合い、次第に笑い出した。何故かは分からないが笑ってしまった。
「女将さんもああ言ってるし食べちゃおっか。時間かけても迷惑になるし…」
そう言うと皆そうだねってなって食事を再び始めた。青年についてはちょっと思うところが有ったので後で話そうと思った。
誤字脱字報告宜しくお願いします。




