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奴隷商と思わぬサプライズ

 しばらく頭がフリーズした。その間男性は黙ったままお茶を飲んで待っている。漸く声を発することが出来るようになっていた頃には男性はお茶を飲み干していた。

 「すみません.......今だに理解が追いつきませんが、貴方が倭国という国からやってきた召喚者だということ、その国がないことは頭に入りました。でも・・・・・・」

 ジュランから聞いた国名も”倭国”だった。違う国かとも思ったが、同じ国だろう。そうそう国名が同じなんてことはありえない。ならば国が滅んだことが外へ漏れていないということ?国が無くなるなんてこと隠そうと思って隠せるものではない。何で10年以上前に滅んだ国の情報が何も無い。それどころか滅んだ後にその国名を名乗った商人が他国で商売している。どういう事・・・・・。

 今だに混乱しているだろう私を心配してか、男性はこの話はまた今度ということになった。聞きたいことがあればこの街にいるからいつでも聞きにこれば良いと言ってくれた。

 「なら、私自身の話をしようか。これも貴方には大事な情報になるだろう。私は倭国を出て、アメリカで生きていた時の経験で何とか生き延びることが出来た。私は様々な国を超え倭国を出てから1年近くが経とうとした頃この街にたどり着きました。この国も通り過ぎる予定でしたが、タカシの名を聞きここに留まることを決めました。タカシの情報を得るために私がこの地で生きていくために奴隷商になることが最善と判断し今に至ります。奴隷商は私達からすると卑しい裏の職業の様に思うでしょうが、この世界では借金のかたに家や土地、資産の代わりになりうるものと言った捉え方なんです。私達が想像するのは犯罪奴隷といわれる者で、其の者達には人権はありません。なので通常の奴隷にはどの国も基本人権を認め、しっかりとした労働環境で働き口を探すのが奴隷商という仕事なのです。だから奴隷商は資金と資格が必要となります。そして奴隷商の1番の稼ぎが奴隷の売買ではなく、情報の売買だということが私がこの職を選んだ1番の理由です。奴隷商とは私達の感覚で行けば、スパイ家業といったところでしょう。だからこそ倭国が無くなったことも知っていたにも関わらず、自分の情報を出さずに済んでいるんです。それでなければ私も倭国が無くなったことを今でも知らなかったはずです」

 「ならば私は貴方に対価を払わなければ行けないですね」

 「今回は私の独り言です。それにお付き合い頂いたまで。それに同郷に会うとなんとやらですよ!惑星規模ですけどね」

 男性は私に笑いかけ、店の人に勘定とチップを渡し店を出ていった。店の小さな窓から差し込む光はオレンジと血が混ざったような目を奪われる色をしていた。その光を暫く見つめて、私は席を立ち宿へと戻ることにした。


 宿に戻ると皆宿の前で待っていた。誰か来るのだろうかと思い声を掛けると、ミリロなんて泣きながら私に駆け寄ってきた。

 「ミゴザバ〜・・・・」

 涙と鼻水が・・・・。

 ミリロを受け止めるとこが出来ずに、ただ抱きつかれているだけの私。ジュランはその側まで来ると目に溜まった物を指で拭き取っていた。フェンリルはブスッとしか顔で私を見つめていた。

 「皆どうしたの?」

 「どうしたのではありません。部屋へ戻ってみれば袋に小分けにされたお金が人数分。荷物はしっかり整理され、肝心の神子様はいない。私達皆置いていかれたって思ったんですよ!でも、フェンリル様がただ買い物に出ているだけかもしれないと言われたのでずっと待っていたんですが、・・・・・・心配で。置いていかれて無くて良かったです〜」

 我慢していたのだろうか、話し終えたらジュランまで泣き出した。何でそうなるんだろう。置いていかれたのは私の方じゃ・・・・。

 「朝早くから皆いなくて、置いていかれたのは私のほうじゃないの?」

 そう言うと、ジュランもミリロも声を上げて泣き出した。困ってフェンリルを見るが、相変わらず機嫌が悪いようで、外方向いている。

 「皆どうしたの?だって、昨日といい今日といい、置いていかれたのは私でしょ?!皆のほうが先に出掛けたんじゃない!なのに何で私が皆を置いていくの?」

 その質問には誰も応えようとしない。どうやら聞かれたくないことの様だ。仕方なくミリロを引き剥がし、私は1人部屋へ戻ることにした。しかし、力が強すぎて引き剥がせない。それどころか何気にジュランまで凄い力で裾を引っ張ているし、終いにはフェンリルまで前足の爪で服の裾を引っ掛けている。

 ・・・服が破れるし、伸びるんですけど・・・。

 私は重たい体をズリズリと引きずり宿の中へと入る。宿の人も何事かと見に来たが、私達だと分かると笑いながら奥へと引っ込んでいった。

 助けは求められないと諦め、どうやって階段を登ろうか悩み階段の手前で止まる。

 「・・・・・このままだと皆を引きずりながら階段を登ることになるけど、良いかな!?皆色んなところ打ち付けて痛い思いすると思うけど、良いよね・・・・・・」

 私の言葉に漸く離れてくれた。それでも私の腕を取り離そうとしないミリロと左手を両手で握り離そうとしないジュランに、私の背やおしりにグリグリと頭を擦り付けているフェンリル。もはやカオスだ・・・。

 「ねえ皆、本当にどうしたの?何か有ったの?」

 3人とも押し黙ったまま。私はその沈黙を受け入れ、黙った。すると3人がその沈黙に耐えきれずに答えた。

 「だって、神子様・・・」

 「ミリロ!」

 「もう良いではないか。ここまで来て隠し通すほどのことでも無いだろう」

 フェンリルの言葉に観念した2人が話してくれた。

 「神子様、明後日お誕生日でしょ?だから、皆でお祝いしようってなったけど、この街に居るのは今日まで。明日には此処を発つから、野営でも何か出来ないかって・・・・・」

 私の誕生日?!

 「私の誕生日は3ヶ月も先よ!?」

 「それは神子様ではなく、元の世界の者の誕生日ですよね?其の者に恨みがある訳ではありませんが、其の者の所為で神子様が辛い思いをされたと思うと、私達には創造神様達が生んだ神子様の誕生日こそ祝うべき日なのです。其の者の誕生を祝う気にはなれません」

 思いも寄らないサプライズに驚いた。

 それに誕生日を祝われれるなんて生まれて初めてだった。おかしな行動はこのためだったのだ。

 私は皆の行動から気持ちを疑った自分におかしくなってきた。馬鹿だと思った。自分がこんなにも馬鹿な人間なのだと笑ってしまった。

 その姿を3人は不思議な顔をして見ていた。

 

誤字脱字報告宜しくお願いします。

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