分からぬ恐怖と皆の優しさ
私はシラヤナギ氏の事を聞いて気が気じゃなかった。こことはまた別の異世界に召喚されてしまうかもしれない可能性。そして1番危惧するのは......元の世界に戻されてしまうかもしれないということ。それが出来てしまう可能性が出てきたことだった。
この世界に来て、今本当に私は幸せなんだと思う。これ以上なんて望まない。今が続けばどれほど幸せなことか・・・・。元の世界になんて絶対に戻りたくない。フェンリルは結界魔法使えたよね・・・・。ジュランとミリロはどうだろう。もし2人が使えたら3人で交代して私に結界を張ってもらうって対策する?
いや、それは現実的じゃない。魔力の無駄遣いだし、起こるかどうかも分からないことに皆に無駄な事はさせられない。
「神子様、神子様・・・・大丈夫?顔色悪いよ」
ミリロが私の隣から顔を覗き込んで来た。「大丈夫だよ・・・」と答えて視線を逸らす。
私達は昼食を済ませるとその店を出て、また街を散策しようとなったけど、私は疲れたからと先に宿へ行くと伝えた。
「神子様・・・・・」
「お主大丈夫か?!領主の話が出てから顔色が悪いようだが」
フェンリルにはバレていたようだ。隠す必要は無いのかもしれないけど、無用な心配はさせたくない。
「全員で今日の宿へ行くぞ!」
フェンリルがそう言うとジュランとミリロも頷いて皆で宿へと向かった。
「入ったお店で聞いておいたんですよ。何件かに聞いて、進めてくれたのが、あ、そこの角を曲がった道にある『フォンデルベ』というお宿です」
ジュランの言った通り角を曲がって直ぐ看板が見えてきた。扉の上辺りに店の名を書いた宿屋の看板。その扉を開いて中に入る。
「いらっしゃい。3人と従魔で良いかい?」
「はい。従魔は獣舎になるんでしょうか?」
「安い部屋だと入れないからそうなるけど、上の階の高い部屋なら獣魔も一緒に泊まれるよ!どの部屋にする?今ならどの部屋も選べるけど」
「従魔と一緒のお部屋はおいくらですか?」
「夕食朝食込みで1泊1人銀貨9枚と銅貨3枚」
「じゃ、取り敢えず3泊で金貨12枚で払います」
「金貨10枚で釣りを出すよ。人はさっき言った値だけど、従魔は1泊銀貨3枚と銅貨5枚。それで3泊ならあんたら全員で金貨9枚と銀貨4枚銅貨2枚だ」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
私が考え込み俯いている間にジュラン達が部屋を確保し宿代を払ってくれた。
「さ、神子様お部屋へ参りましょう!?」
ジュランとミリロに支えられ、お尻をフェンリルの鼻っ柱で押され、私は今日の宿部屋へと入った。
そのままベッドに座らされたまま私はまだ考え事をしていた。
すると両腕を少し強く引っ張られ、呼ばれた。
「神子様。神子様!!大丈夫です。私もフェンリル様もこう見えてミリロだって役に立つんですよ!私達で必ずお守りします。だから、1人で悩むの止めて下さい」
「ジュラン・・・・・」
私とジュランの目が合った所でミリロが割り込む。
「ジュラン、こう見えてって失礼だ。私は強いし、神子様の従者だ。ちゃんと神子様を守れる」
「はいはい、期待していますよ・・・・」
「それ絶対に期待していない返事だ。ジュラン〜!!!」
「貴方のそういう所がダメなところなんです。もう少し大人になったら?」
私が呆然をしている間にジュランとミリロがじゃれ始めた。ほっとくと本気の喧嘩になりかねないから、止めなきゃいけないんだけど、何故か体が重い。動かないほどじゃないけど、ベッドから立ち上がることが出来ない。
「こ奴らの言う通りだ。皆居る。お主1人守るくらい造作もない。たまには人を頼ったらどうだ?!」
フェンリルにそう諭された。
でも、私は今まで皆に助けてもらうばかりでずっと足手まといだった。やれることは必至でやってきたけど、それが皆の役に経っていたのか分からない。
私だけ邪魔者扱いされて、置いていかれたらと思うと怖くなる。
「お主はわれ等を信用してはおらぬのか?」
「・・・・・・!」
「どうなのだ?」
「・・・・・・そうじゃない。そんなわけ無い。それでも私は皆の足を引っ張っている。まともに狩りもできないし、この世界のこと何も知らないし、それでまた他所へ召喚なんてされたら・・・・」
「お主が恐れる気持ちも分からんではない。われも童の頃両親から結界魔法を常に張られ、それが不気味でしょうがなかった。大きくなり結界魔法を掛けられなくなっても、理解できるまで、信用しているいないの問題ではなく、自身の身に何かが起こり己の力ではどうすることも出来なかった時の事を考え、それが自分の親を殺してしまうことになったらとそんな想像をどうしてもしてしまうのだ」
「コハク・・・・。ゴメンね。皆ゴメンね。・・・・・私ね、今生きてきた中で1番幸せ。だからこの幸せをなくしたくない。でも、もしシラヤナギ氏と同じ事が起こったら、そう思うと・・・・怖くて怖くて・・・」
そう告白した私の目の前にジュランが跪き、両手を握り、優しい声で話す。
「大丈夫。大丈夫ですよ。神子様は我等が絶対にお守りします。私達だって神子様と一緒に居たいですから!!」
そう笑顔で話してくれたジュランに、ミリロとフェンリルがウンウンと頷いた。
本当に私は皆の優しさに助けられてばかりだ。
気持ちだけでどうにかなる問題じゃない。召喚術が使われその対象となれば強制的に召喚されてしまう。召喚術についての知識と、対策をしっかりと講じよう。そのうえで召喚された時はその時だ。その時にドウするのかを決めておけばいいだけ。今無暗に怖がったり不安に思ってもしょうがない。今できることをしよう。そもそも今回の旅は、皆で思い出作ろうと思って出発した旅なんだ。メソメソしてもしょうがない。
「ゴメンね。ありがとう。この事はまた時間を作って皆で話し合おう。それで色々決めよう。それまで悩むの辞める!」
「「「はい(うむ)!!!」」
誤字脱字報告宜しくお願いします。
遅くなりすみません。




