召喚者
店を出て、街中をうろうろしながらそれぞれが欲しいものを探していた。
フェンリルとミリロは主に食べ物(特に肉)の屋台を、ジュランは着替え用の衣類と珍しい果物を私は・・・・日本に有った食材を探していた。味噌が見つかったことが1番大きい。醤油も欲しい。出汁のもとになる食材も手に入れたいのが正直なところ。しばらく様々な店を覘いてみたが、そうそう見つかるものでもないし、そもそもこっちの世界にあるものかどうかも怪しい。
「あきらめるしかないのかな……」
そう呟き周りを見渡してみたら、・・・・・誰もいなかった。
そう、友達や家族で買い物やお祭りに来ていて側にいるものと思って話したら、みんな居ないとか知らない人が居たって、あの状態。因みに私は元の世界でよく知らない人やってました……。
「ジュラン~、ミリロ~、フェンr・・・コハク~・・・もう、みんな何処行っちゃたのよ~」
みんなの名前を叫びながらキョロキョロしていると、背後から声をかけられた。
「神子様!」「神子様~」「お主!どこをほっつき歩いていたのだ!」
びっくりして振り向いたらみんないた。半ベソ掻きながら、「みんなどこいってたの~」と聞いたら、私だけ知らない間にだんだんと逸れていたらしかった。本当にお上りさんみたいで恥ずかしい。
「はぐれていくのにフェンリル様が気が付いて、神子様を呼んだんですが声が聞こえなかったのかどんどんはぐれていかれて、みんなびっくりしましたよ。どうして離れて行ってしまったんですか?」
ジュランにそう聞かれたが、私は決して離れていった感覚はない。
「離れて行っているなんて思っても気づいてもいなかった。みんなそばにいるとばかり思ってた…」
そう言った私をジュランは抱きしめて「怖かったですね」って言ってくれた。ちょっとホッとしたら泣いてしまった。小さな子供みたいで重ねて申し訳ない。
私が落ち着いたらお昼ご飯にしようとなり、みんなが気になった店に入った。
メニュー表を見ても私にはどんな料理かさっぱり分からないからみんなに選んでもらった物を食べることにした。基本食べられないものはないから、何でも来いさ!!!
フェンリルも一緒に食べられる場所ということでテラス席で食べることにした。
「神子様、ここの店の料理キルト名物なんですって!楽しみですね」
ジュランが笑顔でそう話しかけてきた。
「キルト名物?キルトの名産品って何か知ってる?」
「私知ってます。キルトは貿易の街ということもあって、小麦や古代麦などが有名ですが、知る人ぞ知る名産はタイラントフィッシュとパラライドフィッシュです」
外壁の外に居た時には気が付かなかったけど、街に入ってだんだんと中心地に近づくとわかる。少し潮の香りがするんだ。だからこの街は海に近い街なんだって思った。
でも、タイラントフィッシュって熱帯魚とかの類で食べられないはずじゃ・・・。
「どんなものなの?ミリロは食べたことあるの?」
私の問いに威勢よく「ハイ!」と答えるミリロ。
「特にタイラントフィッシュはおいしいですよ。焼いても蒸しても鮮度が良ければ生でも食せます。火を入れるとホロホロと身が解れ、生ならコリっとした歯ごたえがあるそうです。私はタイラントフィッシュの”オセンベイ“という料理を食べたことがあります」
”オセンベイ”!!!お煎餅って、お煎餅よね・・・・・。まさかとは思うけど、ここに日本人いないよね?
「ねぇミリロ、そのオセンベイって料理はずっと昔からキルトの名産なの?最近の流行とか?」
「いえ、このキルトという街が出来たのが約800年ほど前。それから100年も経たずにここの名産になったと聞いたことがあります」
「あ、その話なら私も聞いたことがあります。なんでもいきなりやってきた旅人か冒険者がこの地を開いたと、そしてあっという間に貿易都市にした伝説を聞きました。噂話程度の話ですが、名前が確か神子様と同じような感じだったと・・・・」
あ、決定ですね。
「なんて名前なんですか?」
「確か、キルトの初代領主はタカシ・シラヤナギというはずです」
はい来ました~!800年前の白柳さん。日本だと鎌倉時代あたりかな?それで名持だと武家とか公家の人かな?白柳なんて家あったっけ?
「なんでも初代領主の手腕は凄かったようです。この街に住む者に戸籍を与えたそうです。そして子供には等しく学びを、大人でも学びたいものは無料で学ばせたそうです。そして1番広く伝わる功績は安い対価で医療を必要とする者に分け隔てなく与えたと言われています」
ジュランが続けざまに情報を与えてくれる。
・・・・・鎌倉時代には戸籍制度なんてあったっけ?戸籍の考え方って外国を真似したとかじゃなかったかな~?でもそれ以上に鎌倉には安価に医療を施すなんて無理なはず。だから個人の理想とかで思っている人が居たとしても広く実現させることはない。その時こっちの世界にだってそんな制度も考えもなかっただろうし。そもそもこっちの世界は治癒魔法やポーションでケガや病気は直すって考えだっただろうし。
「ねぇ、こっちの世界では今も昔もケガや病気は魔法かポーションで治すって考えじゃないの?」
「ええ、そうです。だから医療設備や技術が様々な国から注目を浴び続けているのです」
そうなると鎌倉時代の人なんてありえない。私たちとそう変わらない時代からやってきた人ってこと?時間軸が違うのかも。
「その初代領主様はなくなるまでそんなにいろいろなことを成し遂げたの?」
私の質問に3人とも微妙な顔をする。
「どうしたの?」
フェンリルが2人を止めるように前足を上げた。
「なくなるか・・・・そうだな。この2人の話を聞いていてわれも思い出したことがある。親が小さき頃に話してくれたことだ。キルトという街の領主が光の中へ吸い込まれ大勢の前から消えたと話してくれたことを思い出した。その時われが言われたのは”召喚魔法が使われたのかもしれない”だ。この世界にもお主が召喚されたように召喚魔法は存在する。だからその時はさして気にも留めなかったが、お主の世界には魔法は存在しないのだろ?なら、その領主を召喚したものは誰なのか、いつどこで消えてしまうか分からないからと当時親に常に結界魔法を掛けられていた」
「ん?ん?どういうこと?」
その疑問にはジュランが答えてくれた。
「本来は魔法と魔法は反発しあうものなのです。しかし、特別な術式で編まれた魔法や特別な武具が使われれば火魔法と風魔法の同時使用が出来るのですが、特別な場合です。だからフェンリル様の親はフェンリル様に結界魔法を施したのかと・・・・」
フェンリルの親がフェンリルにした結界の意味は分かったけど、そうなるとさらに疑問が浮かぶよね・・・・?
「私は・・・・?」
「・・・・・・神子様自身が特別だとしか言いようがありません。そもそもが前創造神と現創造神の力の結晶なのです」
タカシ・シラヤナギという人物にも、その人が成し遂げた事にも、そして突然いなくなった事実にも強くひかれた。そしてそれよりも召喚者の異世界か別の国のさらなる召喚という事実に気持ちは複雑になった。異世界への召喚なんて何度も経験して堪えられるものなの?気持ちは?肉体は?
何の確証もないままただ漫然と思い込んでいた。召喚なんて1度限りだと……。
誤字脱字報告よろしくお願いします。




