懐かしき味噌汁
予定通り私達は朝食を済ませると支度をしてキルトの街へと入った。街に入る時門番から従魔契約の証拠を示せと言われた。私はどうしたら良いのか分からなかったけど、意外とミリロが知っていた。
フェンリル・・・・コハクと私の掌を重ねると淡い光が見えて、そしたら門番の人が「通っていいぞ」って言った。4人分の通行料は取られたけど、1人銅貨5枚計20枚だったから他の街よりかなり格安だ。その代わり何やら怪しげな行為をさせられた。
あれ、何だったんだろう。
私達は街へ入りその賑と色鮮やかな景色に圧倒される。
「わぁ〜!!凄い、きれ〜、すごい〜!!!」
「神子様、凄いって2回言いましたよ。フフフ」
ジュランにそう言われてちょっと恥ずかしくなる。元の世界では世界でも有数の大都市の出身だったんだけど、それとは全然違う。景色も人も空気まで何もかもが圧倒される程素晴らしい。
「お主はこの街が気に入ったようだな」
フェンリルがそう言う。気に入ったどころではないよ。憧れの地へ訪れたような気持ちだ。
「うん、凄っく気に入った♡」
「では立ち止まってないで街を堪能しましょ!」
そうして私達は街を散策し始めた。フェンリルとミリロが美味しそうな匂いに釣られ食べ物の(特に肉を焼く)屋台の前で何度も立ち止まったけど私とジュランで力ずくで引き剥がして散策を続けた。
「ここ!ここに入りたい。いや、入らないと私達の食事事情が非常に貧しいものになる」
「「「入りましょう(入るぞ)!!!」」」
フッ、段々扱い方が分かってきたよ。なんだかズルしてる気はするけど、この際気にしないでおこう。
私達が入ったのはスパイスやハーブを中心に調味料関係を扱っているお店だった。
「欲しいもの沢山あるから手分けしよ。ジュランはハーブ系の肉料理や煮込み料理に使えそうな物を!ミリロはこの間食べたスパイス系で良さそうなものと、今まで私達が食べたこと無い物で香りが良いものを選んで!私はそれ以外の調味料を片っ端から買うわ!」
私達女子3人組はそれぞれ目的のものがあるスペースへと散っていった。フェンリルはそれを呆れた顔で見ていたけど、やっぱり匂いがキツイのかたまに鼻を押さえている。私は見かねて、「外で待ってても良いよ」と小声で伝えたけど、「われも欲しいものがある。付き合う」と言って店に留まった。
フェンリルが欲しいスパイスやハーブってなんだろう?それ以外かな?
私は私の管轄へ戻り、商品を吟味する。その中で目を引かれるものが有った。
「ご主人、これって・・・・」
私がご主人と呼ぶと、お店の人が私の元まで来てくれた。
「ああ、これね。湿度と気温に気をつければそうそう腐らないからって長期保存出来るって聞いて仕入れてみたけど、なかなか馴染みがないから売れないんだよね!?ちょこっとでいいなら味見してみるかい?」
「良いんですか?是非!」
そう言って私はその調味料を味見させてもらった。それは紛れもなく”味噌”だった。この世界にも有ったー!!!これで味噌汁が飲めるー!!!
「どう?気に入ったなら少しでいいから買っててよ。オマケするよ!」
余程売れ行きが悪いのか、店主は売り急いでいるような感じだった。
「これって仕入れてからどれくらい経っているんですか?」
「・・・・・・、いや、ま〜ちょっとは・・・・いや、かなり」
「ご主人?!」
「スマン!本当は3年近く経ってる。腐っちゃいないんだよ。それは俺が何度か自分で味を見ているから確かだ。でも、仕入元の奴が言うように管理はちゃんとしていたんだ。適度な湿度と気温は18度〜22・23度を保ってって言われたからその通りにしてきた。数日毎にかき混ぜたりしながら、陽の光には絶対当てるなって言われたから、新しもの好きの連中にアピールするにしても店先に出すわけにも行かない・・・・俺だって苦労してるんだよ」
最後にやや泣きの入った店主を助けようと変な虫が疼いた。
「ご主人、鍋とその鍋に入れる用のお水後大根、フーフーだったかな、ありますか?それと小魚の乾燥したやつがアレばそれを貸してもらえますか?」
私の言葉に疑問の店主。しかし、店の奥へ行き私が言ったものを全部持ってきてくれた。
店主は私が何をするのか不安なようで、ものすごく失礼な顔でこちらを見ている。
ま〜そりゃそうか!私は気にしないようにして、”味噌汁”を作っていく。そう入っても、フーフーは豆腐のようなものだけど、元の世界の豆腐とは全然違う様に感じる。木綿豆腐より硬いし、高野豆腐とかドライフーズを元に戻したものとも違う。だからこっちの世界の人にはこれが”味噌汁”になるんだろうけど、元の世界の人間が食べたら、味噌汁??ってなると思う。
でも、新しもの好きな人へのアピールには良いと思うんだよね。具だって自由だし、その時の食材事情に合わせて決められるし。
そうして私は大根をいちょう切りにし、フーフーをちょっと小さめの賽の目きりにして、自ら入れて沸騰した鍋の中から乾燥した小魚を取り出し、切った材料を投入した。暫くして大根が透けて火が通ったら味噌を溶かし入れて、味を見る。
「うん、上出来!」
私はそう言って、小皿に少し装った”味噌汁”を店主に差し出した。恐る恐る店主は受け取り、一口飲んでみる。
「!!旨い?!いや、旨い、旨いよ!」
「これを店先で試食してもらったらどうですか?そうすればこの調味料も少しは売れると思いますよ」
店主は持っていた小皿を床に落とし、私の両手を握り泣き出した。
「ありがとう、本当にありがとう。お嬢ちゃんは俺の女神だ!」
・・・・・いや、女神だけは嫌!私達、特に私は女神嫌いだから、ヤメテ!!!
すっごく微妙な表情をしていた私に不思議な顔をしていた店主だけど、商魂たくましいんだろうね〜。
直ぐ鍋を持って店の前に出ていった。
「ご主人〜、この調味料売って欲しいんですけど〜!!!」
そう店先に出た店主に叫ぶと、「好きなだけ持っていってよ!」と言われた。・・・・樽ごと持ってたろか?!
そのやり取りを、それぞれの買い物に勤しんでいたジュランとミリロが気付き、私の元へやってきた。
「神子様、樽ごと持っていこうとなんかしたら駄目ですからね。ここの店主が困ってしまうでしょ!」
「そうですよ。神子様ならやりそう〜」
ジュランの意見はともかく、ミリロの私の評価酷くない?そんなやり取りをしていてはたと思った。
「ふぇ、コハクは?」
3人で不審者のごとくキョロキョロする。
「あ、居た!フェンリル様、何しているんですか?」
ミリロが先に見つけ、フェンリルの元へと駆け寄る。私達も続く。フェンリルの元へ来てみると、そこにはピーナッツバターと書かれた札と商品が並べられていた。
「微かに匂いが有ったのだ。だからずっと探していたがこんな店の奥に有ったとは」
欲しいものってこれか〜!
全部欲しいというフェンリルを宥め、3つほど購入した。味噌はお茶碗に3杯分ほど貰った。
この街での初めての買い物を終え、私達はまた街を散策し始めた。
誤字脱字報告宜しくお願いします。




