消えた聖女のステータスと名の力
そういえば・・・・と思い出し、朝食を食べた後ジュランに聞いてみた。
「ねえ、ジュラン、私さ~テントーレ王国に聖女として召喚されたのね。それで、オリファンと出会ってハイエルフの村で魔法を習って、初め治癒魔法を習っていたの!それで村でちょっとしたトラブル見たいなことがあって、それで私も攻撃魔法を学びたいって言って魔力操作ができるようにならないとって結構な時間魔力操作ばっかりやってて、ようやく魔法を学び出したんだけど、その時には治癒魔法の適正でなかったんだよね。なんでかな?」
私の問いにジュランは的確に答えてくれた。
「治癒魔法は使えなくなった訳でも、適性がなくなった訳でもありません。神子様が治癒の上位魔法までを習得出来たためです。治癒魔法は少し特殊な魔法で、適性が出ても上位まで習得するとその適正判定はその後出なくなるのです。しかし、治癒の上位魔法まで習得すると、すべての魔法使用時に治癒がかかるようになり、無限に近いくらいの魔力を使用することが出来るのです」
野営の片づけは終わっていたから、皆で次の場所へ向けてゆっくりと歩きながら私とジュランの会話は続いた。ジュランは事細かに私に教えてくれた。
治癒魔法が魔法の中では特殊で魔法の中でも最上位に位置する。
治癒魔法が使えるようになれば、他の属性は出ていなくても使用できる魔法は増える。これがあったから属性で出なかった風魔法も使えたと思われる。
治癒魔法の上位の習得が終わると適性が出なくなるのは体の一部となり、他の属性の魔法を使用するときとは異なり、手を翳すだけ魔力を触れさせるだけで治癒が出来るため。他属性ならイメージや詠唱が必要となる。その魔法を使いたいといった意識が大事らしい。
そして一番重要なのが、治癒魔法とタイフーンの属性が出た者は総じて魔力に殺されると言われている。今はそれがなぜなのか少しづつ解明されていて、肉体の限界を超えないように魔力を体外に放出していれば短命で亡くなることはないと結論付けられているそうだ。
「神子様は全創造神様と現創造神様のお力の結晶です。魔力に今の肉体が耐えられないということはないでしょうが、適度に魔力を使用することをしたほうがいいでしょうね」
そっか、村でも言われたっけ?!体内に魔力を溜め込んだままで居ると命が危ないって。どういうことなのかな?内側から破壊されていくとかなのかな?
ま、そのへんはカルマさんの方が詳しそうだし、村へ帰ってから聞こう!
その後も私達は話続けた。その間進む速度が遅すぎてフェンリルが文句を言ってきたが、後ちょっと!とごり押しして黙らせた。
「腹が減った!」
1度は黙ったフェンリルも流石に我慢できなくなったのか、伝家の宝刀を抜いた。
「また〜」
私はその言葉に呆れたけどその後の言葉に絶句した。
「後ろを振り返ってみろ!」
「「!!」」
フェンリルの言葉に素直に従い後ろを振り返った私とジュラン。振り返ってその言葉の意味を理解した。私達が朝出発した野営地が今だに目視出来るのだ。既に感覚でも3時間近くは経っている。なのに!振り返れば・・・・・。
「「ごめんなさい」」
私とジュランは素直に2人に頭を下げて謝った。
それから少しだけ進んだら水場が有ったのでその近くで昼ごはんを取ることにした。
木陰に場所を取ったけど、木の向こう側を見るとなんとなく見覚えが在る景色が常に見える…。本当に反省。自分の事ばかり考えていて、皆の事を考えていなかった。だからここからちゃんと移動に専念しよう!
昼ごはんを済ませると、私とジュランは片付けをパッパと済ませいつでも出発出来る体制にした。
「何もそこまで急ぐ必要は無いが…」
この豹変にはフェンリルもミリロも苦笑気味だった。
私達は昼までの遅れを取り戻すように只管に走り続けた。その御蔭で言っていたキルトの街の手前まで来ていた。今晩は大きな岩がいくつかある場所を選んで野営することにした。
「いい場所が見つかって良かったですね。明日の朝にはキルトの街に入れますよ。ゆっくり起きて支度しても昼前には余裕でしょう」
そうジュランが私に言った。
「お主らがのんびりしていなければ今晩は宿で快適に過ごせたはずなんだがな」
フェンリルが嫌味で返す。
私とジュランはタジタジになり、何も言い返せない。そこに意外な助け舟が・・・・・。
「フェンリル様もう良いでは無いですか。今日のご飯私達の好きな物にしてもらいましょうよ!それで良いじゃないですか」
「うむ。それもそうか。よし、ならステーキと前に言っていた唐揚げそれから・・・」
「フェンリル様、神子様が以前ブタノカクニとやらが食べたいと言っていたので、それを所望しましょう!神子様が言っていたくらいです。きっと美味しいですよ!」
ミリロがフェンリルに口添えしてメニューがどんどん決まっていく。肉は確かに昨日の狩りで狩ってきてくれたものがあるから大丈夫だけど、他の食材が…。
そう思い俯いていた私に2人はグイッと顔を近づけて「「文句は聞きません(聞かぬ)」」と言われてしまった。一方ジュランは2人が提案した料理を食べたいらしく、後ろで大人しくしていた。
何かちょっと狡くなですか?!
私はジュランにそんな目を向けると、ジュランはさり気なくミリロに視線をやり、私を避ける。
しょうがない。皆さんのご所望の夕飯を作りますか!私は簡単な下味で焼くだけのステーキから作っていった。ステーキ3連チャンだけど、皆気にしていないよう。メニュー考えるのが毎回大変だから助かることは助かるけど、毎回同じメニューっていうのは作っているこっちからするとちょっと複雑。なので、唐揚げに油をそのまま使用できる賽の目にカットした肉を叩いて固めたメンチカツや、その賽の目より更に小さく切った肉で作ったハンバーグを作った。
ミリロの言った豚の角煮は調味料類の不足で作れなかったので、謝ってキルトの街で食材が手に入れば改めて作ると約束して納得してもらった。
ジュランも私側だったはずなんだけれど、希望の料理って辺りからさり気なく2人側に溶け込み、今となっては私1人の責任だった風になっている。
確かに話を振った私が悪いけど、味方してくれても・・・・。
「それよりお主」
5個目のハンバーグを食べ始めたフェンリルが不意に私に話を振ってきた。
「われに名を付けよ。そうでなければわれだけまた人間の街に入れぬ」
突然言われたことに驚く。
「え、そう。そうなんだ。知らなかった」
「従魔契約をしていても、魔物に名がなければ従魔とは認められぬ。コントロールの聞かぬ魔物を街の中に入れるわけには行かぬだろうからな」
「名前でコントロールするの?」
「そうだな・・・・オリファンに以前別の呼び名を言ったことが有ったのを覚えているか?」
そう言えば、創造神と会う前か後か何か言っていたような。
「それがどうかしたの?」
「オリファンとはあの森の連中が言うように水の守り神だ。それが歴代オリファンと名乗ったものの宿命のようなものだな。われが言った別の名はこの世界全ての森の守り神の名だ」
「森の神様ってこと?でもオリファンは神とはちょっと違う存在だって言ってたような・・・・・」
「ああ、オリファンのままであれば神に準ずる主といったところだろう。神とは力の差が歴然とあると思われる。しかしもう一方は神そのものの役割を担う名になる。だからオリファンもわれに怒ったのだろう」
そう言われて記憶を少し思い出した。あの森の入口でフェンリルとオリファンがじゃれていたような・・・。その時のことを言っているのだろうと思った。そうすると、オリファンはあくまであの森を守りたいということで、神様になりたいわけじゃないとかで良いのか?
「オリファンは神様にはなりたくないってこと?」
「ああ、クピトと前創造神は別だが、オリファンも神には良い感情を持っておらん。この世界の神は碌でもないものばかりだ。だが、この世界に神も人も魔物も共通した事がある。それが名が持つ力だ。言い換えれば皆名によって縛られていると言っても良いかもしれないな」
そっか.....。そうなると下手な名前はつけられないな〜。私はグルグルと考えて、もう1つ思い出した。
「そう言えば創造神がフェンリルのこと『コハク』って言ってなかった?そのコハクって名はどうかな?」
私がその名を口にするとフェンリルはちょっと微妙な面持ちをした。しかし、気の所為だったかのように、直ぐに「良いな!」と言った。
私はこの名付けを後になって酷く後悔することになる。でも今はフェンリルが正式に私の獣魔となったことを喜んだ。
「明日は皆でキルトの街で買い物だー!!」
誤字脱字報告宜しくお願いします。




