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後悔先に立たずされども明日がないわけじゃない

 カルマさんの授業はあの後も続いた。私はその間ずっと考えていた。タイフーンの事象の理解。それは台風のメカニズムを理解することと同義。おおよそは分かっていても全てを理解していないとそれだけ本来のタイフーンからは遠ざかってしまうということ。この世界のタイフーン適正者でもこの事象を正確に理解して使用している訳ではなさそうと言うこと。この世界では台風のような気象現象は起きない、少なくとも起きたことは無いということ。そうなればこの世界でこの気象現象を調べることは出来ない。そもそもそんなもの存在しないだろうし。そうなると私がこのタイフーンを使いこなせるかは運次第。これだけの威力があるものを運任せでは使用できない。

 「カルマさんは・・・・・私に望む望まざる関わらず人殺しをさせたいですか?」

 「珠子は何かを誤解しているか、まだ魔法というそのものを理解していないかのどちらかだろうな。私は珠子にそんな事して欲しくないし、させる気もない。このタイフーンという魔法も街1つほどなら壊滅させる威力があるだけで、それをする理由もさせる理由もない。珠子、魔法はどの属性でもそうだが、使うものの心ひとつだよ。珠子が望まない魔法が珠子から発動されることはない。魔法が何なのか魔法の本質を知ると良い。そのためなら私達ハイエルフはいくらでも手を貸すよ」

 そう言ってカルマさんは私に微笑んだ。

 魔法の本質って・・・・・私が理解していない事。私はタイフーンだけじゃない、魔法そのものを理解することが足りていなかったって事?

 魔法って何なんだろう・・・・・。

 元の世界では魔法なんてゲームやアニメの中だけだった。現実には存在しなかった。幽霊でさえ科学で解明されていくような時代に、魔法なんて非科学的なもの存在しなくても当然だと思えた。でも、私達はこの世界の人間じゃなくても魔力があり、こうして魔法が使えるようになっている。魔法の適性が無かったクラスメートも居たみたいだけど、こちらに来た人達はほとんどが魔力を保有し、魔法適性が出たみたいだった。私はあの王宮で自由は無かったけど、部屋の前を走り回るメイドたちの噂話に聞き耳立てていたから、それくらいのことは分かった。言い換えればそれくらいしか分からなかった。適性が出た者が魔法に関する講義を受けたみたいだったけど、当然私は受けていないから、魔法が何なのかなんて知らないまま外へ追い出されている。そんな事実が今の足かせになるなんて・・・・。

 「珠子、考えたって後悔したって仕方のないことは在る。だけどそれを理由に立ち止まるのは違うと私は思うね。魔法のことを知らないのはしょうがないことだ。あんた達の世界に魔法が無かったのは珠子達のせいじゃない。それを悔やんだって今を変えられるわけじゃない。なら、未来に向かって何が出来るのか考えるほうが有意義だと思うけどね」

 って、カルマさんにウィンクされたって....。でも、カルマさんの言う通りだ。私が魔法を理解できていないなら、理解できるまでとことん頑張るだけだ。頑張って出来なければその時考えれば良い。今私が思うこと、それは皆と一緒に旅をするために今できることを頑張りたい!


 カルマさんと話して吹っ切れた私は只管座学と実技を学び続けた。息抜きにエンリオ達の手伝いをしたりして、再特訓から1週間が過ぎた。

 「じゃ、座学はここまでだね。後は実践在るのみ。怖がっちゃいけないよ。前にも言った通り、珠子が望まない魔法が珠子から発動されることは無い!だから安心すると良い」

 カルマさんにそう言われ、私はまたタイフーンの訓練に入った。今回はジュラン・ミリロに加えフェンリルも何故か訓練を見てくれている。

 餌の確保が終わったのかな〜・・・・。

 ま、何にしても私は訓練在るのみ!

 魔力を属性魔法に変換することは出来ているみたい。でも、やはりタイフーンの変換にはなっていないよう。割合は風が8割程後は水が2割弱で残り僅かに何故か火魔法・・・・・。

 私の中の台風の解釈は海水温の上昇、積乱雲の発生、熱帯低気圧に発達で、台風って感じだから風とか水はなんとなく分かるけど、なんで火?熱帯ってイメージで火?空気が温められるから、火ってあまり関係ないよな〜。

 やっぱり台風のメカニズムを知らないと属性変換無理なのかな?!

 「お主は、何故風魔法ばかりを意識するのだ?タイフーンの訓練ではないのか?」

 今日はフェンリルが私の訓練に付き合ってくれている。

 「そうだよ。タイフーンの訓練だから風になっちゃうんでしょ?!」

 「だから、タイフーンと風は違うのに何故そうなるのだと聞いているのだ」

 「え?いやだって、タイフーンって強力な風の渦みたいなものでしょ?」

 フェンリルは「はぁ〜」と溜息を付いて前足に顎を乗せて寝る体制に入ってしまった。

 「だから!『はぁ〜』じゃなくて、タイフーンって風の上位版みたいな魔法なんでしょ?だから風で間違ってないじゃない!」

 フェンリルはその体制のまま片目をちょこっと開いてしょうがないという感じで話した。

 「風は発動者から対敵に向かって吹くが、タイフーンは発動者に向かって風が吹き込んでいく様な感じがする。風魔法は前者の様になる。だから後者の様な状況になるとタイフーンだと分かる。タイフーンは確かに強力な風が吹き荒れるが、決して風魔法の上位などではない。タイフーンはそれ単体のみの魔法で、使用者によって範囲の違いや威力の違いが在るだけだ。お主が使っているのはずっと風魔法だ」

 フェンリルが言った説明は明確だった。私はずっと勘違いをしていたのだ。

 そう、台風は風が渦を巻いて吹き荒れるから風をイメージしてしまうが、台風そのものは台風の目に向かって空気が巻き込まれ渦になり吹き込んでいく。私は全く逆のイメージを持ってタイフーンの訓練をしていた。

 通りで出来ないわけだ。私はフェンリルが言ったことを意識してタイフーンを発動させてみた。

 「ゥォッ・・・・・バ、バカモノ!!ここでそんな威力のタイフーンを発動させるやつがあるか!」

 寝ていた子が起きた。私は焦って発動を何とか止めようとする。アワアワしている内に何とか収まった。危なかった〜。村中の家の屋根が吹き飛んでカルマさんに殺される所だった。

 「しかし、出来たではないか。危うくわれは吹き飛ばされると思ったが、無事だったからま〜赦そう。代わりにアレを寄越せ」

 フェンリルが私にグイッと近づき魔力飴を要求するが、私は顎を手で押し返し要求を拒否した。今はそれよりカルマさんの怒りだ。

 怒られないと言いな〜・・・・・・。

 そんな事を考えウジウジしている所にエンリオとカルマさんがやってきた。

 カルマさんが笑顔だ。

 何言われるんだろう・・・・・・・。

 「珠子、・・・・・出来たようだね。フェンリル様のお陰かね〜。なんにしても、村も無事で珠子もタイフーンを真に習得出来たみたいで良かったよ」

 カルマさんの後ろでエンリオがまたしてもくすくす笑ってる。おのれ〜・・・・・。

 「すみません......被害は弁償します」

 すると2人とも声を出して笑い出した。

 「何も怒っちゃいないさ。私等もこうも早く習得できるとは思っていなかったから油断していたしね。今年は珠子のお陰で雨季の被害もなく過ごせる。多少家が壊れたくらいなら直ぐに修復できるさ。なんせ私達はハイエルフだからね」

 「そういうこと、そういうこと!」

 良かった〜。被害もなさそうだし、怒られずに済んだ。

 私はとうとうタイフーンを習得した。後はこれを自在に操れるように訓練していく。それはこの力をどう使うのかを考え続けなければ行けないという事。

 私はその未来を選んだんだ。後悔はもうしない。前を向く。頑張るんだ!頑張るしか無いから、頑張るんだ。フェンリルやジュラン、ミリロと一緒に居るために、それを決めた自分のために頑張るぞ〜!

 

誤字脱字報告宜しくお願いします。

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