タイフーン適性者の悩み
オリファンに魔力飴を渡し、足りなければいつでも言ってもらえば用意すると伝え別れた。
私はカルマさんが戻って来るまで他の魔法を練習しようか悩んだが、ジュランが中途半端に練習するより、癖が付いてない状態で初期に習ったほうが後々上手く行くと言ったので、ジュランやミリロに見てもらってタイフーンをもう一度訓練し直すことにした。
2人ともやはり風邪魔法にしか見えないとの事だった。何とかして風のイメージから抜け出したかったがそれが出来ずに、風邪魔法を連発するばかりになりカルマさんが戻るまで大人しく村の手伝いをすることにした。(泣)
「気ばっか急くな〜」
ボソリと呟いた私の言葉にたまたま傍にいたフェンリルが反応する。
「タイフーンは本来基本属性が全て使えて初めて使える様になる魔法。お主の習得の仕方が異例なのだ」
「そうなの?カルマさんはそんな事言ってなかったな~」
「ま、お主の魔力量を見て基本属性の習得をせずともいけると踏んだのだろう。あのカルマというハイエルフ、相当な使い手の様だからな」
「あ、やっぱりフェンリルにはそういうの分かるんだね」
私の言葉に”フンッ”と自慢気な顔をする。フェンリル位の強者になると鑑定をするまでも無く、相手の大体のステータスは感覚分かるらしい・・・・・。本当にファンタジーだよね~。フェンリルとかドラゴンなんてその種族に生まれただけでチートってやつだね。
凡人な私は師の教えに沿って努力あるのみです!
カルマさん早く帰ってきて〜。
それから2週間近くが経過して雨季の時期に入る頃、カルマさんは村に戻ってきた。
「珠子、あんたが水神様に手を貸してくれたんだって!?水神様の力が凄い事になってたよ」
へぇ~…。どうなってるかは知らないでいた方が良さそうかな。うん。そうしよう!
「戻って直ぐで申し訳ないんですが、タイフーンについてもう一度基本から教えて貰いたくて…」
「ああ、構わないよ。こっちも旅の前にって急かしたところもあるから、基本の…そうだね座学と行こうじゃないか!」
カルマさんからそう言われ、明日から1週間みっちり座学となった・・・・・。
この際魔法の事、とことん学ぶぞ!っと意気込んで見たものの、タイフーンの事だけでも膨大な量でそれどころでは無かった。
タイフーンとはフェンリルが言っていた通り基本属性が全て使える事が使用の基礎だった。
それでも今回カルマさんが私に基本属性を習得させずにいきなりタイフーンを習得させようとしたのは旅の事も有ったけど、本来タイフーンの適性が出る者は総じて火・水・風・土の基本属性とタイフーンが出る事が普通で、私の様に基本属性は火だけ。他は火と相性の良くない雷が出ることはまず無いそうだ。
それなのに私には雷が1番の適性有りで次がタイフーン、最後に基本属性の火。つまり滅茶苦茶なのだ…。だからカルマさんはタイフーンを無理にでも先に習得させようとしていたらしい。そうすれば火魔法は個別での習得訓練は必要無く初級のファイアボール、ファイアトルネード等は使う事が出来るとの事。適性が出なかった風や水魔法も使えるようになる可能性があることがタイフーン習得を急いだ理由だったようだ。旅で水と火の魔法が使えたら重宝しそうだしね。
「じゃ、続けるよ。珠子はその後の練習でタイフーンを使えなかったのはなんでだと思う」
ここは村長宅のリビング。だから周りに居ますよ、エンリオもサーディンも・・・・。めっちゃ見られてるし。クスクス笑われているし・・・・。
「イメージじゃないなら、分かりません。魔法ってイメージじゃないんですか?」
「ん〜....確かに展開したり、発動したりはイメージが大事だ。でも、1番重要なのは魔法を発動する前なんだよ」
「発動前?」
私の疑問に微笑んだカルマさんに対し、やっぱりくすくすする2人・・・・。殴っていいかな・・・?
「エンリオもサーディンも助けてくれないなら何処か行って・・・・」
その言葉にカルマさんが2人を見る。その表情に怯えたようにそっとその場を立ち上がり外へと出ていった。2人を追い出すとカルマさんはまた私へ向き直り答えを求める家庭教師のように頬杖を付き私の顔を覗き込んできた。
「・・・・・・・・」
私が答えに窮し黙ったままで居ると溜息をつき、どうしようかと悩んでヒントを出してくれた。
「魔法発動する前に何をする?」
「発動前にすること?・・・・・・なんだろう?イメージをしっかり持つとか?」
「いや、イメージから離れよう。珠子だけじゃない。魔法を使うものなら皆しなければいけないことだよ」
「・・・?!魔力を体に巡らせること?」
「そう。でも魔力を巡らせるだけでは魔法は発動しない。そこで、珠子が言っているイメージになるんだけど、多分そこからしっかり教え直したほうが良いんだろうね」
そのカルマさんの言葉にギョッとする私。またあの魔力操作の特訓を捺せられるのかと思っていたけど違ったみたい。
「魔力操作をして魔法を発動させる!この一連の流れを本当に理解できているかい?」
「ええ。だって、魔力を体に巡らせたら、使いたい魔法のイメージをして詠唱、発動ですよね!?」
私の答えに唸るカルマさん。
「そこなんだよね・・・・・。イメージって随分都合の良い言葉というか、説明なんだけれど・・・。実際に起っている現象はその本人が持つ魔力が体を巡る、その体を巡っている魔力はまだなんの属性も発動させていない状態何だ。それをそれぞれの属性に変換しているのが、詠唱やイメージなんだけど・・・・・どうしたものかねぇ」
カルマさんが考え込んでしまった。しばらく考え込んでいるカルマさんに付き合い黙ったままで居ると、いきなり広場へ出ようと言われた。
え?!表出ろっ!ってやつじゃないよね・・・・。あまりに覚えの悪い生徒にチョークを投げる先生が浮かんだ。
でも従わないという選択肢がないためカルマさんに続いて広場へと出た。
「じゃ、そうさね〜、火魔法でも使ってみようか。そこで見てな」
カルマさんにそう指示され、少し離れた場所でカルマさんを見ている。すると、カルマさんが魔力を巡らせ火魔法を発動させた。カルマさんは魔法を使う時杖を使っているみたいだけど、ちょっと灯りを付けたり火を起こしたりは素手でやっているから、今もカルマさんの手のひらに野球ボールほどの火の玉が浮いている。でも、それを見ていて分かったことが在る。今までにもカルマさんやジュラン達の魔法を使う所を見せてもらっていたけど、気が付かなかった事。魔力を体に巡らせ使用したい属性魔法を”意識”した瞬間、その魔力に色が付いたような感じ。火魔法なら火力の赤って感じで、魔力に色がついていく感じが分かった。その色のついた部分の魔力が属性魔法に変わっていく。カルマさんが「変換」って言った意味が理解できた。私はイメージ、イメージ言っていたけど、そんな抽象的なものではなく、魔力が化学反応を起こしていく感覚。私がタイフーンを発動捺せられなかった意味が漸く分かった。イメージではなく、実際の現象。タイフーンを現象として変換させなくては行けなかったんだ。そう思ったけど、タイフーンの現象って・・・。
「カルマさん、タイフーンの現象って何ですか?」
私の問にカルマさんはなんだか納得顔。
「理解出来たようだね。・・・・そう、タイフーンの難しいところがそれさ。魔力量も重要なんだけど、このタイフーンはそのものが捉えがたいんだ。だから適正ある者が100%使えているかは分からないんだよ」
私はカルマさんの疑問になんて答えたら良いのか、まるでQ&Aが在るように瞬間的に頭に浮かんだ。
「私が元いた世界では、タイフーンに似た名前の自然現象が有って、それは台風っていうんですけど、その台風は強い熱帯低気圧って言われる現象によって引き起こされるんです。タイフーンがもし私の元いた世界の台風と同じものだとしたら、人がこの自然現象を生み出しているって事ですよね?この台風は災害と言われるものです。家屋を吹き飛ばし、あらゆる物を巻き込みながら巻き込んだものを弾き飛ばしていく。人も物も関係なく破壊していく。それを人が起こし操る魔法って事ですか?」
「・・・・・。珠子が言いたいことも分かる。だからこそ悪用されないように適正あるものがしっかりと理解して、良い使い手にならないとね」
伊勢湾台風だけじゃない。この世界にやって来るまでに多くの台風被害をテレビで見てきた。田畑だけじゃない。街まで水で飲み込んでしまった映像も有った。多くの家の屋根が飛び、飛来した看板で命を落とした小さな子が居たことも有った。それを私が操る。今まではしっかりと理解できていなかったから、この魔法が使えるように成ったらチート何じゃない?!なんてことを心の底では思っていた。でも、どんな魔法より人殺しが出来る魔法。私はこの魔法をちゃんと正しく使えるようになるんだろうか.......。
誤字脱字報告宜しくお願いします。




