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中村雄介の話し

遅くなりました。


”ユリアの店”のユリアは店名でそこの支店長?がミュミュです。

 ここは旧テントーレ王国の隣国ファスカル帝国の、帝国騎士団第1訓練場。

 中村雄介は今日も朝から訓練に励んでいた。

 騎士たちの訓練は朝日が登ってから昼食を挟み夕方頃までである。

 しかし雄介は日が沈んでからも1人黙々と訓練を続けている。初めは同じ隊の騎士たちや団長・副団長が止めるように促していたが、聞く気が無いのだと分かってからは誰からも止められなくなった。

 帝国騎士団全ての隊が、雄介がテントーレ王国で勇者召喚で召喚された者であると知っていた。

 雄介なりに思うところが在るのだろうと無理に止めることはなくなったのだ。しかし、それでぶっ倒れられても困るため、体力が尽きる前にだけ隊長が首根っこ引っ掴んで隊舎まで引っ張っていく事が恒例となりつつ有った。

 「ユウ、気持ちは分かるが無理して倒れられてはこちらが困る。程々をいい加減知れよ」

 「すみません隊長。でも、王国の連中がいつ俺のことを探しに来るか....。その時皆には迷惑をかけたくないんです。自分の事は自分で何とかしたいんです」

 「あのな〜....。まぁ、それがお前だから分からなくはないが、俺達は仲間なんだ。その程度のことは迷惑とは思わないし、仲間なら迷惑くらいかけろ!いいな。くれぐれも無理はするなよ」

 「......はい」

 雄介は隊長の言葉に頷くしか無かった。焦った所でどうする事も出来ないのは事実だったから…。

 しかし、雄介は程なくしてこの心配事は取り越し苦労だったと知ることになる。


 雄介達の隊が隊としての久しぶりの休日、仲間たちと街へと繰り出した。

 「なぁ、ユリアの店に行かないか?」

 そうみんなに問いかけたのは、隊1番のお調子者ガレだ。たまには皆で出かけようと言い出したのもガレだった。

 「やっぱりそういう事か!ガレ、いい加減諦めたらどうだ?ミュミュはお前に興味無いんだろ?!」

 そう返したのは隊長のオルベスタ・コードュロイだ。コードュロイ伯爵本人。

 「隊長〜、そりゃ酷いですよ~」

 そう言いながら半べそになるガレ。

 ミュミュというのは雑貨店を営むガレの想い人。隊の皆は知っているけど、何も言わない。ミュミュは今年の帝国祭で恋人と結婚する。ガレ以外にはミュミュはこの事を伝えていた。当然隊長の耳にも入っている。帝国祭まで約3ヶ月。この事を皆どうガレに伝えようか悩んでいた。雄介も知っているからガレとはあまり恋愛や女性関係の話はしないようにしている。

 皆でガレをイジって進んでいるとミュミュの雑貨店に着いてしまった。喜び勇んでガレが扉を開ける。

 皆はしょうがない・・・という感じでガレに続いて店内に入っていく。

 しかし少し進むと皆が玉突き事故を起こす。

 「おい、何だよ。突然止まるなよ」

 隊員がそうクレームを入れる。他の隊員も「そうだ、そうだ」と同意をする。

 しかしクレームを入れた全員の視線が前方に向くと皆一様に言葉を詰まらせた。

 そこにはミュミュと婚約者が仲睦まじイチャついていた。ガレは目の前の事実を受け入れられないように下を向いていた。その様子を見た隊員達はガレにどう声を掛けて良いのか腫れ物を触るように見守る。

 そこで声を上げたのはまさかの雄介だった。

 「なあガレ、お前だって薄々気付いていたんじゃないのか?それを認めたくなくて見ない・知らない振りをしていただけじゃないのか?好きな女が幸せになるんだ。認めてやれよ」

 「ユウ、お前に何が分かる。俺はずっとミュミュが好きなんだ。ミュミュが俺を好きじゃないことも、好きなやつが居ることも知ってたよ。それでもどうすることも出来ないんだ......」

 そういうとガレは涙を流して俯いた。そして店を飛び出していった。

 皆ガレを視線で追う。そしてこの状況になった原因の2人を見る。

 隊員と視線が重なったミュミュは苦笑いをしている。

 「良かった〜。沢山買い物してくれるお客さんだったから直接は言いづらかったんだ。みなさんもありがとうございます。結婚式ぜひ来てくださいね」

 能天気に人を傷つけていることにも気づかない女はそう宣う。これには隊員全員が怒った。

 『いや、我々は迷惑だろうから式は欠席させてもらうよ。この店に来ることも今後やめよう。その方が花婿も憂いなく過ごせるだろう。どうぞ勝手に幸せになってくれ。行くぞ』

 隊長のその号令で皆店を後にした。

 店を出てガレは何処に行っただの、今日は飲み明かそうだの皆がガレを想った。皆の心の中はあんな女に大事な仲間が捕まらなくて本当に良かった、その思いだけだった。


 夜の酒場─。

 「皆、グラスは持ったか?今日は明日のことなど考えずにとことん飲むぞ〜!カンパ〜イ」

 「カンパ〜イ」

 皆がグラスを上に持ち上げ景気よく乾杯をする。皆笑顔だ。今日の嫌なことを忘れるように飲んで食べて騒いだ。そこには当然主役のガレも居る。本人は部屋に引きこもっていたかったようだが、皆で無理やり部屋に押し入り、無理やり連れ出した。

 「今日は隊長が珍しく奢ってくれるってさ!行かなきゃ損だろう?!な!来いよ!あんな女、お前には似合わなかったんだよ。もっといい女が現れるよ。だから元気出せよ」

 「.......いい女って何処に居るんだよ。いつ会えるんだよ?!」

 「それは・・・・・」

 「少なくとも部屋に引きこもっていて出会えるわけでは無い。外へ出て、楽しく笑って過ごしていればガレの良さに気付く女は必ずいる。正直皆こうなって良かったって想ってるんだ」

 「ユウ、テメェ〜・・・」

 「誤解するな。皆ミュミュがああいう女だって知ってたんだ。でもガレが好きな女だから皆言いづらかっただけで、店にもガレが一緒じゃなきゃ誰も行かなかった。ミュミュはガレのこと良い金づるくらいにしか想ってないと思う」

 雄介がガレにそういうと、側にいた全員が『うん、うん』と頷いた。

 そんな事があって、ガレを部屋から引きずり出すことに成功して、この場に連れてきている。

 その日は雄介にとっても人生初というほど羽目を外した夜だった。

 この世界に召喚され、殺されそうになり、なんとか助かったこの命、この仲間の為に使いたい!そう思う雄介だった。


 酒盛りの翌日。皆平然と稽古をしている。

 昨夜は遅くまで飲んで板にも関わらず、二日酔いなどなんのそのといった感じに、皆元気だ。

 雄介は未成年だが、元の世界でも飲んだことがあり、気分の悪さを感じることは無かった。

 「ユウ、昨日はありがとな」

 「ん?何が?」

 「いや、だからさ....お前が言ってくれたじゃん。俺の良さを分かる女なら居るって」

 「あ〜あ、いや別に誰か紹介するとかじゃないぞ。自分が好きな女くらい自分で見つけろよ」

 雄介はそう言い残してその場を後にした。

 後に残されたガレは・・・・・・真っ白だった。

 ガレに爆弾を投下した後雄介は騎士団の事務室へと向かっていた。国を守る仕事とは言え、名誉職ではなくエリートと言われるほどの給与を貰っている。そのため、1日何をしていたか、計画通りの行動を取ったかなど、書類を毎日提出しなければならない。要するにサボっていなかったかのチェックをするための書類た。それを毎月隊長に纏めて提出する。隊長は隊全員の分を国の財務を預かる役所に提出する。それで皆毎月高額の給与がもらえるのだ。面倒でもサボれない仕事の一環だ。

 そうして事務室へ歩いている雄介の背後から声を掛けたのは、宰相だった。

 「ユウ、あなたに大切な話があります。いずれ他の隊員たちも知ることになりますが、あなたは誰よりも早く知るべきことだと思います。執務室へ来て頂けますか?」

 国を動かす立場の人にこう言われ断れる人は先ずいないだろう。雄介もただ頷き宰相の後について行く。

そこで雄介たちを召喚したテントーレ王国が魔王軍の手に依って滅ぼされたと言われた。国民までの詳細なことは判明していないが、王族とその取り巻きの貴族はもれなく首をはねられ、街中に晒されているとの事だった。これを聞いた雄介は驚いたが、安堵とともに喜びが湧き上がってきた。それを抑えきれずに両腕を突き上げ言葉にならない叫びをあげた。

 皇族もこの場にいたが、誰もそれを止めなかった。危惧していたことが無くなり、心が晴れたのだ。それを止めるほど人でなしはいなかった。

 こうして雄介は不安材料だった王国のことを気にすることなく、このファスカル帝国の一員として職務に邁進できると喜んだ。隊の仲間たちとも一層楽しく過ごせる未来に期待を膨らませた。

今週は多く更新するつもりでしたが、ストックが在るわけではなく、話も今回のような本筋の真面目な話ばかりが当分続く予定です。そのため以前の話を確認しながら出来るだけ齟齬を起こさないように書いていこうと思いますので、更新はかなり遅くなると思います。

サクサク、ポンポン進められれば良いのですが、力不足で申し訳ないです。

のんびり気長に構えて、手持ち無沙汰なときにでもお読み頂けたら幸いです。

いつもお読みいただきありがとうございます。


誤字脱字報告宜しくお願いします。

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