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女神の神託

 この一人部屋に案内されてから3日後の夕方、コンコンとドアをノックされ返事をした。

 「はい、どなたですか?」

 「侍女のアリアです。女神の神託の準備が整いましたので、準備をお願いします。30分後にお迎えに参ります」

 ドアの向こう側から声が聞こえた。

 分かりました、とだけ返事をしてベッドに戻り腰掛けた。この部屋の衣装部屋には沢山のドレスが吊るされていた。しかし私が着られるサイズは1着も無かった。だから、ここに来たときの制服のままだ。


 30分後、侍女が大広間迄でご案内しますとやって来たので、後について部屋を出た。

 「ドレスお気に召したものはありませんでしたか?」

 侍女の突然の問いかけに少し躊躇した。しかし繕う必要も無いだろうと正直に答えた。

 「着られるサイズが無かったので。すみません」

 「あ、いえ、とんでもございません。こちらこそ気が付かず申し訳ございません」

 互いに気まずい空気を感じ、言葉を繋げず沈黙が流れる。無言のまま大広間に到着する。

 壇上の前に進むように促され、それに従う。

 私の後ろには、先日のローブを着た男性が8人立っていた。

 壇上にはあのいけ好かない王族が偉そうに椅子にふんぞり返っていた。

 私以外のクラスメートは、佐藤美和子、大貫雅美、京極麻穂子、中村綾香の4名のみが壁際にいた。他の生徒はこの部屋には居ない様だった。

 何故だろうとも思ったが、それよりも私はこの期に及んで大事な事を忘れていた事に気が付いた。

 壇上の前に1人で立たされ、他のクラスメートも側に居ない。友達が居る訳では無いけど、それでも1人だと否応なしに「始末しておけ!」というセリフがリフレインする。そんな状況で考えられたのは、あの日から自分が助かる為の策だった筈なのに、分からないことだらけで、まだ時間あるし!と思考を放棄したままだった事を、屑王族の前で漸く思い出したのだった。背中に冷や汗が伝う感覚がする。焦りばかりで、真艫な考えが浮かばない。”ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…”頭の中はヤバイという文字しかし浮かんでこない。プライドも恥もかなぐり捨てて、泣き叫んで土下座でもしようかな・・・と相当阿呆なことを考えていると、後ろに居たローブの男性達が何かを喋っている声が聞こえた。話というよりは、御経とか呪文の様な感じだった。10分以上その光景は続いたかと思ったら、金色っぽい光の中にスモークの様な煙が立ち込め、そのスモークは白い丸い光を守るように下半分くらいの所で渦巻いていた。

 ちょうど白い光は占いの水晶を一回り大きくしたくらいだった。

 その水晶くらいの大きさの白い光に向かって、ローグラ侯爵が話しだした。

 (テントーレ王国を守護し、我らの女神よお答え下さい。我が国を護りし聖女の在処を)

 ローグラ侯爵が言葉を切る。すると水晶から天に伸びるような眩い光が発せられ、光が収まると水晶の上には以前私の風呂を堂々覗いていた女性が浮いていた。ほっそりとした色白の美しい女性は、確かに水晶の上に浮いていた。 女性はお腹の辺りで結んでいた両手を解いて、広げてローグラ侯爵を見た。

 そして口を開いた。

 (答えましょう。そなたが尋ねし答えは、そなた等の後ろに居る異世界の服装をした娘。日聖珠子です)

 女性の答えに部屋中の人がざわめく。

 (再び問います。何故その者が聖女なのでしょうか?)

 (答えましょう。聖女の定義は、選ばれし乙女と言われていますが、正しい定義はそうでは有りません。聖女の定義は、他を圧倒する豊富な魔力量で聖魔法が扱える事です)

 (この者は魔法は使えません。ならば聖女の定義から外れるのでは?)

 (現状魔法が使えないのは異世界から来たもの全員です。魔力の正しい操作を学ばせなさい)

 (・・・・・・、御意。女神の御心のままに)

 ローグラ侯爵の言葉の後、女性は消えた。

 一連の事に驚いてて、声も出せないまま居たが、視界の端に居た王族を見ると、王子は予測の斜め上を行く程の言い表しようのないくらいの顔をしていた。

 その表情に思わず吹き出しそうになるのを必死で我慢して、ローグラ侯爵に視線を移す。

 侯爵は複雑な表情をしていた。

 御経のような呪文のような事を呟いてたローブの男性は、立場倒れている者や膝と手を床に付いて倒れるのを踏ん張っている者、杖をついて倒れずにいる者、それぞれだったが、相当な疲労があることは皆同じ様だった。


 パンパン―。

 静まり返った大広間に手を叩く乾いた音が響いた。

 「今はここに居る皆が疲れているだろう。今日はここまでにして、また日を改めて話し合おう。今宵は美味い物をたんと食べ、しっかりと休まれよ」

 王がそう言った。貴族風の連中が胸の前に腕をやり、恭しく礼をする。

 私達はまた侍女の案内で部屋戻された。


 部屋に戻り、私は安堵した。

 「とりあえずセーフ、今日はセーフ」

 審判のようなジェスチャーと共に、心のままに声にする。両腕を振り上げ、ベッドの上で踊る。

 「ヒッャホ〜!ヤッタ、ヤッタ―!」

 ベッドの上で両腕を腰に宛ててこれでもかと仰け反る。またしても思考を放棄していることを忘れて。

 「私は生きてる〜!!」

明日は予定があり、書き溜めもないので明日の投稿は無しでお願いします(+_+)


誤字脱字報告も併せて何卒宜しくお願いします。

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