魔力操作訓練終了のお知らせ
すみません。
水曜日には別の話をアップしたいので、これはイレギュラーで…。
カルマさんの地獄の特訓を3日間頑張って、今日はエンリオとファレットに習う日だ。それだけで心の平穏が訪れるようだ。今日は楽しくやろう。・・・・。
・・・・・。え?
物足りない・・・・・・。
エンリオとファレットに教わるのだから、キャッキャ言いながら、もしかしたら新しい魔法も教えてもらえるかもなんて考えていたのに、・・・・・・物足りない。なんでだろう……。
「エンリオ〜、今日これで終わり?」
私が帰ろうとしているエンリオにそう尋ねると、振り返りながら笑顔で「そうよ」と言われてしまった。
「あ、そうそう。お義母さんから.....」
「な、なに?」
「きっと今日の訓練は珠子の気を抜いてしまうだろうから、忘れずに自主練習させないように釘を指しておいて!って言われたんだった」
「え〜?どういう事?気なんか抜いてないよ。ちゃんと言われた通り気を引き締めて訓練してるよ」
「ん〜....?だったら直接お義母さんに聞いてみたら?」
エンリオ〜、それ絶対に他人事だと思ってるよね?
私は諦めてカルマさんの居る、家の裏の小山で行くことにした。
カルマさんは、家事一切の当番をかなり減らされる代わりに、この村全体の守りや補修なんかをになっているそう。だから大体小屋にいる。
小屋に着き、扉をノックする。
「カルマさん、珠子です。いらっしゃいますか〜」
返事はない。この村の出入り口の蔦や村全体の結界のような防御力の綻びを修復するのがカルマさんの役割のようだ。
「カルマさ〜ん」
カルマさんの名を呼びながら扉に手をかけ開くか試してみる。・・・開いた。扉を押し広げ中へ入ろうとする。・・・・・、目が有ってしまった。私は出来るだけ音を立てないように扉を閉め、来た道を戻る。村の広場へ戻ろうとしたところで、ファレットと会った。私は無言で小屋を後ろ手に指し示し、事実を述べた。「チューしてた」と・・・・・。
「そうね〜、夫婦だからね」
エンリオよりもおっとりしているファレットが何でも無いように答えた。
「ちゅ~してた....」
「うん。夫婦だからね・・・・・」
私は何をどう伝えれば良いのか分からず、ファレットのその言葉に頷いた。
うん、忘れよう。そう、人とは忘れる生き物!忘れることが大事なんだ。
そう思ったらこんがらがった頭の中もスッキリした。私の顔を覗き込んできたファレットが私の眼の前に両足を握り逆さまにしていたメンチョウ鶏をさしだしこういった。
「今から〆るけど、珠子もやる?」
エンリオからサラッと聞いたことがあるけど、ファレットは外見に似合わず生き物を〆るのが好きなようだ。無論食べられるものに限ってだそうだけど。おっとりとした性格に見えるファレットだけど、以外にスプラッタとか好きみたいだ。
私は首を振り断った。笑顔で鶏を〆るファレットをなんとなく見る気にはなれなかった。ホラーだ....。
結局この後どうしたら良いのか、本当に訓練を続けてはいけないのか聞けなかった。
私はなんの成果も感じられない時間を過ごしただけの様な感じで仕方なく部屋へ戻った。
「神子様、今日は一段と凄いですね・・・・・」
借りている家の扉を開けるとジュランがいて、家へ入ろうとしていた私を見てそう言った。
「なにが?」
「ご自分ではお分かりにならないのでしょうか?」
「だから、なにが?」
少しイライラしたように尋ねると、ジュランは後ろに体を引き後ずさった。
「なんで後ろに下がるの?」
その行為を咎めると、ジュランは焦ったようにあたふたとして、「フェンリル様〜」と叫んだ。
その声に反応して扉の向こうにフェンリルが来た気配がした。それと同時に殺気も感じた。私は扉に向き直り、ゆっくりと扉を開ける。
そこには殺気を放つフェンリルがいた。
「フェンリル? 他に誰もいないの?」
「われだけだ。お主、何だその力は」
フェンリルにそう言われ私は肩の力を抜く。
「なんだって何が?」
「だから、その体を纏う他を消滅させそうな魔力だ」
「え?私の体の周りになにかあるの?」
「お主、そうか分かっておらぬのか。まあ良い。本日の訓練は終了であったな」
「うん。なんだか訓練した感じがしなくて、もっと練習してもいいかカルマさんに聞きに行ったんだけど、そしたらとんでもないもの見ちゃって、聞けないまましょうがなく帰ってきたんだ」
「とんでもないもの?」
「うん。・・・・・・・・・チュ~してた・・・」
「「は?なんですか?聞こえなかったんですが」」
フェンリルとジュランは私に近付く。
「だから、・・・・・」
「神子様、なんですか?はっきりと言って頂かないと分かりませんよ」
「だから、ちゅーしてた!」
「「あ〜」」
「え?」
「別に良かろう」「そうですね。良いんじゃないですか」って、なんで2人とも冷静なの?
「お主は子供すぎるだろう。襲われていたのか?違うだろう。当人同士が良いなら、別に問題なかろう」
フェンリルのくせに、私より大人なこと言わないで。
「フェンリル様の言うとおりですよ。神子様が子供すぎるんです。良いではないですか!好き合っている者同士がキスくらいそりゃしますよ」
ぐっ・・・・・・・・・。
私はショックなものを見せられたの!誰にも分からないよ、この衝撃は!!!
「村長とカルマさんのキスシーンなんて見せられたら、ホラ〜だろ〜!!!」
家中に聞こえる声で叫んだら・・・・・。
「「「お主(神子様)が失礼です!!!」」」
って、部屋に引きこもってたミリロにまで言い返された。納得いかん!
そんな衝撃的シーンを見せられた翌日カルマさんに呼び出された。
私はとうとう殺されるのだと覚悟してカルマさんの元へと向かった。
コンコン。ドアをノックし声を掛ける。
「カルマさん、珠子です」
そう声を掛けると扉が開き、中から笑顔のカルマさんが出てきた。
「お〜、だいぶ魔力操作は板についてきたようだね。あと少し抑えられるようになっていれば理想だったけど、まあ良いだろう。ここじゃなんだし、さっ、中入んな」
そう笑顔で招き入れてくれた。
笑顔が怖いよ〜・・・・・。
でも、予想していた事はなく、怖がっていた私の取り越し苦労だった。
「昨日は済まなかったね。とんでもないところを見られたと思ったよ」
ちょっとカルマさんが照れている。イスを進められ私はカルマさんの向かいに座った。
「オーパスとは子供の頃から一緒でね、親以外村の連中は私のこの強すぎる魔力を忌み嫌ってた。ハイエルフは元々他の種族に比べて魔法が得意な種族だ。だから魔力が豊富な者が多い。しかし、そんなハイエルフでも異常なほどの魔力量で、村を滅ぼす力だって嫌われていたんだ。私はそんなつもり無いんだけど、それが出来る力があることが問題だったんだろうね。だから私は村を出て皇国で働くことにしたんだ。そんな私の夢を笑わずに応援してくれたのがオーパスだったんだ。そんな事もあってオーパスと結婚してなんだかんだでここへ落ち着いた」
「そうだったんですか」
私は深く聞くことはせず、相槌だけ返しておいた。
「それより、十分魔力を制御出来るようになってるじゃないか。驚いたよ。魔力操作は魔法を使うためでもあるけど、己の中に眠る魔力を暴走させないためでもある。十分、十分」
カルマさんはニコニコとそんな事を言う。
「あの、昨日の訓練あれだけで本当に良かったんですか?」
「フッ。もっとやればもっと強くなれるのに?もっとやれば上手に出来るようになるのに? そう言いたいのかい?」
カルマさんの問に素直に頷く。
「魔法属性を増やすことは少しずつなら大丈夫だろう。でも、ここからの魔力操作は危険が伴うから誰かに言われない限りやっては行けないよ」
「? でも毎日1回はやらないと・・・・」
「それは制御できるようになるまでの話。制御できてから魔力操作を今まで通り続ければ、魔力量が増えてしまうのさ」
「!?」
「ま、知らなくてもしょうがないだろう。人の世界では魔力量は一生変わらないと言われているが、実はそうじゃない。魔力量は増やすことが出来るんだ」
「そう、なんですか・・・・」
私は驚きすぎてまともに答えが返せない。
「ああ、それが制御できるようになった後の魔力操作の訓練を続けることなんだ。でもそれは制御できていたものを再び制御不能の状態にすることになる。魔力操作は続ければ続けるほど日に日に魔力は増えていくから少しでも操作を誤れば、骨も残らないだろうね。そうやって失踪者となった者が過去に多く居るんだよ」
私は相変わらず驚きすぎて言葉が出てこない。
「暗くなっちゃったね。ま、そんな危険が伴うから、ちゃんと珠子を止められる奴が側に居る時でなければこれからの魔力操作は禁止だよ!」
私は想像もしていない事実を知り、ただただ頷いた。私、今自分がどんな状態か知るのが怖い・・・。
誤字脱字報告宜しくお願いします。




