創造神と親心
草原で楽しく夕飯を食べた翌日は、3日以内に移動して戻ってくるのも面倒だということで、再びウェザーリアンで食材やら諸々を買い足し、残りは森で狩りをした。主にフェンリルが楽しそうに狩りをしていた。食材として美味しく頂けるものを中心に狩ってもらったけど、それだけではつまらないとちょっとでも強そうな気配が在るとバビューンってそっちに向かって走っていちゃうので、私達は好きにさせることにした。駄目って言ってもそこは本能だろうから、2人とも話して止めても無駄だと諦めることにした。その間私達女性陣は薬草を見つけたり、女子トークしたり、こっそりと美味しいお菓子を作って食べたりしていた。フェンリルは帰ってくる度に『何か食ったよな?』って怪しんでいたけど、3人で白を切り通した。だって、勝手に居なくなる方が悪いんだし、置いて行かれた者同士楽しくやったっていいじゃんね〜。
ってことで3日間を過ごし、創造神と会う日となった。陽が1番高いときって言ってたらからもしかしたら一緒にお昼食べれるかもと6人分の食事を用意して待っていた。要らないって言われたらフェンリルが食べるって言ってたから無駄にはならないだろうし。
そうこうしている間に陽は1番高い位置まで登った。私達は草原のオリファンの声が聞こえた場所で待っていた。
暫くすると、上空にオリファンの姿が見えた。
私達はオリファンの姿をじっと見ている。オリファンは私達の頭上迄来ると、人型になりすっと地上に降りてきた。そこにはオリファンだけで、創造神らしき姿は見えない。
「創造神は?」
私はオリファンに聞いた。
「創造神が地上に降り立つことは無い。そのため今日はジュランの姿を借りることとする。異存はないな?」
そうオリファンに言われたジュランは「もちろん」とだけ答えていた。私はちょっとだけがっかりした。本当の親の姿を見られると思っていたのだが、それは叶わないらしい。
オリファンが自身の力を使い、立派なテーブルとイスを出してくれた。それは黒曜石のような石で、重厚な感じがした。みんながイスに腰掛けて、フェンリルは私の隣で何故かお座りしていた。尻尾が触れているから、楽しいと感じているんだろう。愛の神の眷属だみたいなこと言ってたから、かつての飼い主?に会えるのが楽しみなのかもしれない。
「美味しい紅茶を用意してあるの。出してもいい?」
「もちろん」
オリファンがOKをくれたので、ジュラン・ミリロ・オリファン・私にカップに注いだ紅茶を出し、フェンリルにはヤギの乳がいいと言われたので、それを出してあげた。みんながそれぞれのカップに口を付け、少し落ち着いたところで、オリファンが話し始めた。
「では、創造神とジュランの精神を繋ぐ。良いか」
そう問われ、ジュランは静かに頷いた。
オリファンはジュランの様子を観察し、タイミングを見計らって空から稲妻のようなものをジュランに落とした。
「「.....ジュラン!」」
それを見て、私とミリロが同時にジュランの名を呼んだ。それはなんの説明も無しにオリファンがジュランを攻撃しているように見えるほどの威力だった。
「オリファン!」
私は抗議の意思を込めた声で、オリファンの名を呼んだ。だけど、オリファンは「大丈夫だ」とだけ言い、取り合おうとしない。ジュランが心配だが、稲妻のようなものが落ちて1分も経たないうちにジュランはなんでもないように目を開けた。
「ジュランは無事です。身体に損傷もありません。心配は無用。ジュランもこの術は以前にも経験しています」
そう話すジュランはジュランでは無かった。正確に言うとジュランからジュランでは無い声が聞こえてきたのだ。私とミリロは驚いているが、フェンリルは嬉しそうに尻尾が一層振れていた。
「コハク、久しいの〜。元気そうで何よりだ。お主には辛い思いをさせた。この通り、許しておくれ」
そう言うとジュランの姿が頭を下げた。
「クピト、オリファンから話は聞いた。その時謝罪を受け取った。だからもういいのだ。クピトと離れるのは寂しかったが、それがクピトの望みなら、われはそれを叶えられて嬉しいと思う」
フェンリルの本心なのだろうことは伝わった。とっても穏やかな顔をしているから。
するとジュランの姿は私を見て、手を伸ばし、私の腕を掴み、項垂れた。
私はそのままその姿をみている。するとテーブルにポタッ、ポタッと雫が落ちた。
皆が分かった。創造神が泣いているのだ。
誰も声を発しない。誰も何も言えなかった。
「......珠子、致し方なかったとはいえ、申し訳なかった。傍で守ってやれなかった。前創造神もわれもずっとそれだけが心残りだった。悔しくも有った。他の神を恨んだところでどうにもならない。創造神であるわれらが神を滅すれば地上は混乱する。耐えるしか無かったわれらを許してくれるか?」
切々と語られたことは、得てしまった立場をどうすることも出来なかったこと、子を守るためだと放棄すればどうなるかは一目瞭然。ならば元凶を葬ればそれもまた同じこと。苦渋の決断だったことは伝わった。
「それでも.....、それでも私に何かを伝える方法は有ったでしょ! それに巻き込まれて私はずっと辛い思いをしてきた。あの家族は何だったの? 本当の私って何?」
創造神に怒りをぶつけたところで今更どうにもならない事は分かっている。それでも噴き出した感情を止められなかった。私の言葉に創造神は俯きただただ泣いていた。テーブルに増えていく雫で分かった。
この場の収め方を誰も分からなかった。ただ無言の時間が過ぎていった。
暫くして、フェンリルが腹が減ったと言い出した。皆フェンリルを見て固まっていた。
いやいや、そんな空気じゃなかったでしょ?
しかし、フェンリルはお構いなしに早く飯にしろとせっついて来る。
「コハクは相変わらずだな.....」
創造神の声で、場の緊張感はなくなり、オリファンの取り計らいで、食事を皆ですることになった。
「では、一時を預けたぞ聖霊王アルカディアスよ」
創造神にそう言われるとオリファンは消えていった。スーッと姿が段々と透けていって、最後には消えた。そのかわり、オリファンが消えた後に見知らぬ人物が現れた。その人が現れたら、ジュランはテーブルに突っ伏す様に倒れて気を失っていた。私はどっちを見ればいいのか分からず、右を見たり左を見たりしている。そうしている内にジュランは気を取り戻し、落ち着いたようだった。ホッとしていると、フェンリルは突然現れた人物の元へ掛けその人の隣で伏せ、ジュラン達はイスから降り、片膝をついて頭をたれていた。それで察することは出来る。この人物が創造神なのだろう。濃い茶系のウェーブの掛かった髪をしていて、顔は顎がシュッとした端正な顔立ちをしている。天女の衣のような衣を纏い、男性とも女性とも取れるような雰囲気で柔和は表情を浮かべている。
「我が子とこの様な時間が取れる日が来るとは思っていなかった。皆に感謝だな」
そんな事を言って、嬉しそうな顔に成る。
「さ、早く準備せぬか。神を待たせるな」
そう言いながら、フェンリルはブンブン尻尾を振りながら、涎を垂らしていた。
「お腹空いたんだね・・・・」
私はちょっと呆れながらアイテムボックスから作っておいた食事を出した。かなり頑張って作っておいたから皆で食べられて。オリファンも一緒だったら良かったんだけど、どうやら創造神の代わりをしなければならないらしく、ここには居られないとの事だった。オリファンには後でお弁当にでもして渡しておこうと思った。フェンリルはテーブルに顎を乗せ、涎をダラダラと垂らし続けている。その頭を創造神が撫でている。耳や背も撫でられて幸せそうにしていた。
色々とモヤモヤすることも在るけど、フェンリルのそんな姿を見られたことは素直に幸せを感じた。
今の私にはそれだけで十分だと思った。
「さ、お待たせしました。食べましょう! 頑張って作ったんですよ。お口に合うといいのですが」
そう言って私は創造神に食事を勧めた。
創造神は幸せそうな顔になり、どれから食べようかと迷っているようだ。それをジュランとミリロも幸せそうに見守っている。
今日、こんな時間が取れて良かったと思った。
「フェンリル、ありがとうね」
「ん?何がだ? そんなことより、早く食わせろ。こんなに旨そうな匂いを嗅がされて、マテは拷問だぞ」
そういうフェンリルにフェンリル専用の皿に色々と盛って出してあげた。それを美味しそうに勢いよく食べている。尻尾を勢いよく振り「旨い」と言いながら食べるフェンリルを皆で笑いながら見ていた。
明日同じ20時に更新します。その次は金曜日以降に成ると思います。宜しくお願いします。
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