枝話①
本筋の話ではないので…。
GWで時間があったので、閑話を(^^)
担任の渥美あつ子は数名の女性生徒と同じ部屋に通された。あつ子のスキルは風属性の魔法。魔力量から中級が精一杯な所だった。
「みんな大丈夫?」
「先生〜、私達どうなっちゃうんですか? 帰れるんですか?」
半べそであつ子にそう聞いたのは、大貫雅美だ。
彼女のスキルも風属性の魔法のみ。初級〜中級、中級は使いこなすのに苦労するだろうといった魔力量だった。他にこの部屋に居たのは、京極麻穂子と私を除く女性生徒全員で、目立ったスキル持ちは居なかった。もう一つの大部屋は、中村雄介と新村順也を除く男性生徒で、そちらも女性生徒と同じ様な振り分けだった。
私、日聖珠子が聖女スキル。
京極麻穂子が全属性適正ありの魔法使い。
中村雄介が聖騎士。
新村順也が魔導師ということだった。
他に特筆したスキル持ちはいないようで、こちらの世界の住人でも平均的なスキルだけの様だ。
私達4人が、こちらの世界ではレアスキルの持ち主となるようだ。
大貫雅美の問いに、あつ子は答えることが出来ずにいた。そう聞きたいのは自分も同じだったからだ。教師と云う立場に在ろうと、わからないものは答えようもないし、誤魔化す事さえ難しい。
誰に何を問えば良いのか、混乱するばかりだった。
混乱していたのは一人部屋に案内されたと他の生徒も同様だった。一人部屋なことが余計に不安を大きくさせていた。
京極麻穂子「日聖さん、殺されちゃうってことかな?…そんなわけ無いよね…。私達もそうなるって事? お父さん、お母さん…」
中村雄介「何がどうなってるんだ。何で誰も居ないんだ! 俺はどうなる? ここはどこなんだ!」
新村順也「・・・・」
一方、こちらの世界の人間は…。
「殿下、聖女は精霊の森に捨ててきましょう。新たな聖女は国内の令嬢か、今回召喚された者の中から殿下のお好みの者を聖女にいたしましょう」
「あ〜、そうしてくれ。あんな女とするくらいならオークのメスとした方がマシだ」
苦々しい、怒りに満ちた顔をしている王子にローグラ侯爵は王子の機嫌が収まる様な話をする。
召喚された娘たちの中には、綺麗な顔立ちをした者が数名居たと記憶している。スキルはいくらでも誤魔化せる。問題ない。残りの者は、駒にでも使えば良いだろう。ローグラ侯爵は王族派閥の筆頭だ。王子に取り入ることは自然な流れ。そんなローグラ侯爵も喉につっかえた小骨の様に忌々しい相手は居る。どこの派閥にも属さず、誰に遣えているのか雲を掴むような男。モロジー伯爵だ。
「あの男、一体何を考えているのか…忌々しい」
「ローグラ侯爵、何か言ったか?」
「あ、いえ殿下、なんでも有りません。今後の事を考えておりました」
ローグラ侯爵は努めてにこやかにそう返した。
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