フェンリルの心の在処と精霊王①
私達は草原から近い森の木の陰の所まで移動した。
みんなそれぞれに木の切り株や腰掛けられそうな石の上に腰掛けた。
私はアイテムボックスから人数分のカップとフェンリル愛用のお皿を出し、そこに街で買ってきた紅茶を入れて出した。長い話になりそうだしね。
そうしてみんなにカップをフェンリルに愛用のお皿を出した。
「おお、すまぬな珠子。ありがとう」
そう言ってカムイはカップを受け取った。
「「神子様、ありがとうございます」」
ジュランとミリロはいつもな感じで。
「飴を入れてくれ。後砂糖もたっぷりとな」
そう言われ私はフェンリル用の皿に魔力飴を数個入れてあげた。散々作ったから今ではパッと作れる。砂糖は初めっから入れてあるからそう告げた。そしたら満足そうに飲み始めた。
それを見てカムイが驚いていた。
「珠子、それはなんだい?」
「ん? どれのこと?」
「ガンドの皿に入れた魔力の塊のようなものだよ」
「ああ〜、魔力飴って言ってる。正確なところは分からないんだけど、あの神擬きの元に向かうときジュランとミリロは飛行魔法でフェンリルに着いてきていたから、魔力無くなっちゃうんじゃないかって心配になって。それでフェンリルに聞いたら魔力壁みたいな話が出て、ならって私が作ったの。名前は私が元いた世界の飴ってお菓子をイメージして作ったから魔力飴って言ってるの。こういう物に正式な総称ってあるの?」
その問いにカムイは答えなかったが、微笑んでいた。とっても優しそうな顔をして。
「さて、まずは我の謝罪からだが、どう話そうか」
少し考えてカムイはゆっくりと1から説明してくれた。私の産まれについて、邪神について、邪神とフェンリルについて。ぬけもれがないように気を使いながら話してくれた。
カムイの話をざっと言うとこんな感じだった。
*カムイがまだ年の頃30そこそこの時に、創造神と愛の神との間に子が生まれると知ったこと。
*創造神たちは他の神達が不満を抱え謀反をしようとしていることを知っていたこと。
*私の存在を創造神と愛の神2人から託された事。
*謀反にフェンリルが利用されると創造神から聞いていたこと。
*全てを知っていて、危険があると分かっていて自分の進化の為に黙っていたことを詫びたいという事。
以上がカムイが話してくれたことだった。
「オリファンよ、お主何をふざけたことを言っておるのだ? われが奴に利用され、彼の地を滅ぼすことを知っていて黙っていたということか? 答え次第では、ここでお主を噛み殺しても良いのだぞ」
フェンリルが怒りに満ちた声で、カムイにそう問いただしている。フェンリルとしては当然なことだと思った。だって、あの地に初めっから神擬きだけしか住んで無かったなんてことは無いだろうから、そこに生きていた人たちを殺してしまったって事だからね。
「どうなのだ? 何故黙っている?」
「ガンド、お主は魔物でありながら人殺しを気にするのか?」
「っ、何を言うか! われの意思ではなく、謂えば傀儡にされ奴の代わりに人殺しをさせられたのだぞ。殺したくもないものを殺したのだ」
「だから何だと言うのだ?」
私はカムイとフェンリルの不穏な話にオロオロし始めた。だって、フェンリルは人殺しをどんな理由があろうと自分がしてしまったことに罪悪感を抱き、カムイはそれは間違いだ的な態度を取っている。完全に平行線だよ。一触即発くらいの雰囲気で私1人がオロオロしているなって思ってジュランとミリロを見てみると、・・・2人で楽しそうに喋り込んでいた。オイ。
そんな2人は放っておいてカムイとフェンリルをどうにかしなくちゃ! 再びカムイとフェンリルに目をやると、フェンリルが前足でカムイをがっしり掴んでいる。私は余計にオロオロしてしまい、どうしていいか分からずにいたが、カムイが突然笑いだしその場が止まった。
「あ〜ハッハハハ〜。ガンド落ち着け。ちゃんと話す。お主は人殺しをしていない。だから落ち着け」
そう言われてフェンリルはカムイの肩から脚をどかした。これにはジュランとミリロもお喋りを止めて2人を見た。
「カムイ…どういう事」
「珠子、済まないが我はもうカムイとは....。正式に精霊王になった。ガンドの言うところのオリファンが我の正式な役割だ」
「どういう事? え? っていうかフェンリルのこともそうだけど、疑問ばかり増やさないで。こっちだって質問したいことたくさんあるんだから」
「済まないな。答えられることは全て答える。焦らなくていいから聞いてほしい」
カムイは、いやもうカムイって言っちゃ行けないんだよね? オリファン?だっけ。何か馴染めない〜。でも、ちゃんとしなくちゃね。で、オリファンはフェンリルに人殺しはしていないって言ったんだよね、先ずそれを聞こう。1個1個順番に聞いていかないと、頭の中くちゃくちゃになりそうだよ・・・・・。
「じゃ、先ずはフェンリルの神殿一体の崩壊の事、街を崩壊させたのに人を殺していないってどういう事?」
「ああ、あの神殿が崩壊するさまを皆は見たのだよな?」
「うん。見たよ。なんていうか私の元いた世界で言うところのデジタル画像の崩壊?みたいな感じだった」
「ああ、そういう認識でいいと思うよ。あの地自体そもそも何も無かったのだから。今も昔も実態が有ったのは邪神のみだよ」
「「「「????」」」」
「あれは街も神殿も全て幻だったんだ。邪神は皆に幻を見せていただけに過ぎない。だからガンドが言っている街の崩壊も幻だよ。滅んだのはあの邪神だけ。そもそも無いものは無くなることはない。だって初めっから無いのだから」
言われてみて思う。至極当然のこと。カムイ、じゃなくてオリファンが言っていたのはこういう事かと納得した。フェンリルは幻の映像を消しただけで、いや、それもフェンリルが暴れるのに合わせてあの擬きが消していただけなのかもしれない。それでもフェンリルの心の傷は変わらないだろう。幻とは謂え、眼の前で人が死んでゆく映像は結構な精神的負担に成ると思う。いくら魔物とは言っても。
「そうだな。それは我が悪かったと思う。ガンドには心から謝罪しよう」
そう言ってオリファンはフェンリルに頭を下げた。
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