急な旅立ち、後悔は振り返って初めて出来るもの
フェンリルからいきなり言われ、カムイに促されるまま鬼神属の村に部屋を用意されそこに寝かされている。でも眠れない・・・。
「どゆこと?...誰も説明してくれないんだけど」
私は怒りの籠もった独り言をいう。虚しくなったので目を瞑って無理やり寝た。
ちょっと寝不足のまま朝を迎えた。フェンリルもそうだが、鬼を相手に出来る気もしないので、無駄な抵抗をせず大人しく起き部屋を出た。
リビングに行くとカムイの嫁が朝ご飯の支度をしていた。私に気付くと昨日の殺気はどうした?というくらいの笑顔を向けてきた。
「おはようございます。あの、、、昨日はすみませんでした。水神様のいい人かと勘違いして」
そう言うと恥ずかしそうに俯き、顔を赤らめている。こうして見ると年相応の可愛らしい女の人だと思った。
「いえ、私もカムイをからかいたいために貴方を巻き込み申し訳なかったと・・・」
ここで、鬼神の女の人が笑ってくれて和解ムードになる。
「あ、朝ご飯の用意直ぐしますね。座って待ってて下さい」
そう言うと椅子を引いてくれた。私は大人しくその席に着き、出されたセンブリ茶を一口飲んだ。そう、あのバライティーとかの罰ゲームで出てくるせセンブリ茶・・・。何でここにセンブリ茶? っていうか、この世界に何故地球の物があるのかな?
不信感と突っ込みたい気持ちといろいろあるが大人しく座って待つ。
「お待たせしました。鬼神属の朝ご飯でお口に合うか分からないですが、どうぞ召し上がって下さい」
そう言われて出された食事を見る。昨夜の宴の料理はどれも美味しかった。だからこの鬼神は総じてグルメなんだろうと思っていたが、なんだこの朝飯、、、。どう見てもオークの頭だよな? それと、、、これはゴブリンか? ゴブリンぽい緑色の物体が皿に乗っている。他にはアメーバーかスライムか分からん物が入ったスープ。野菜は普通に野菜だが、いや・・・、根菜類なんか生で食べられないよ?! 固くて歯が折れるからね・・・。そんな朝ご飯を出され、どうしようか悩んでいたら、扉がノックされた。
私と女の人が扉を見る。
「おい、早く行くぞ。神を待たせるな!」
お〜、フェンリルだ。ナイスタイミング。
私は席を立ち、扉を開けた。
「わかった。直ぐ支度するからちょっとだけ待ってて」 (グッジョブ!)
私はそう言って、フェンリルに親指を立てgoodの合図をした。フェンリルは事態がわかっておらず首を傾げている。なんか可愛。子犬みたい。思わずよしよしした。”グルゥゥゥゥ” 唸られた。嫌だったみたい。
私は部屋に戻り荷物をと思ったが、エルフの村からちょっと出かけてきただけだから荷物はまだそっちだった。考えなくても分かっているべきことを失念するほど朝ご飯はショックだったようだ。フェンリルの元へ戻り、荷物はハイエルフの村に置きっぱなしだったと伝えたら、フェンリルも”あっ”って顔してた。
私達は村長に村を出ることを伝え、世話になった礼を言い村を出た。カムイには黙ったまま出てきた。・・・イヤ聞きたいこといっぱいあったのに...。ま、フェンリルを尋問しよう。
私達はハイエルフの村に戻って荷物をまとめ、フェンリルが言う神がいる土地まで行くため、村を出ることを伝えた。この世界に来て私を拒否することなく受け入れてくれた初めての人達。ちょっと感慨深かった。まだここにいて沢山の魔法を学びたかったけどフェンリルが怖いから旅立つことにした。
この慌ただしい旅立ちを私は後にひどく後悔することになるが、後悔とは振り返って初めて出来るものなのだ。その真っ只中にいる時に後悔することは無理だった。
(オリファン、ハイエルフの村をでる)
(分かった。我はこちらが落ち着き次第樹海の森に向かう)
(....そうか、神の目的...なる程な。オリファンお主何故分かった?)
(神がお主をこの地によこしたからな。精霊の森にお主をよこすことを消去法で考えれは答えは絞られてくる)
(相変わらずだな。ま、精霊の王になるべくして生まれたらそうならざるを得ないだろうな。オリファンもそんな苦行の様な生き方を止め、われのように自由に生きれば良いものを)
(フッ。我にはこの生き方が性に合っている。娘を護り大地を育む森を育てる。お主はこの生き方に自由がないと言うが、こうやって生きてきたことで、珠子に出会えた。森に縛られた生き方だと言うが、この生き方も楽しいぞ)
(われは御免被る。そこだけは長い付き合いでも相容れないな。フッ)
(珠子を頼んだぞ)
(分かった。われに任せておけ。神の言いなりになり続けるのも癪だしな)
私達は荷物をまとめ、村の入口に立っていた。そもそも王国に追い出された時持ってきた荷物は僅かな食料と水が入った水筒その程度のもので、それ以外のものはこの村生活していく中で用意してもらったものだ。着替え10着に下着類、杖、それから数日分の食料とお弁当。村の娘たちが慌てて準備して持たせてくれた。それとお守り。ハイエルフにだけ意味を持つというお守りだが、何かあった時身を守ってくれるかも知れないと持たせてくれた。両手をきつく握られ、無事でちゃんと帰ってくるんだよと言われた。
目から塩水が出てきた。いや、ただの水かな...。帰っておいでと言われる場所や人がいるって良いね。それだけで幸せだって思えるよ。
サーディンもテンディも見送ってくれた。私達は皆に見送られながら森を後にした。
フェンリルが背に乗せてくれるって言ったけど、森を出るまでは断った。この時間を大切にしたかった。私の人生の中で、またこんな瞬間があるかどうか分からなかったから、ちょっとだけ味わいたかった。ぬくもりを......。
「お主も格好に似合わず苦労してそうだな」
フェンリルにそんな事を言われ、格好って?と聞いたら、この制服のことだったようだ。この世界にも当然学校がある。しかし、貴族や裕福な商人や役人の子供だけが通える学校のようで、その子どもたちは綺麗な制服を着ているのだそう。そうじゃない一般の市民はやはり継ぎ接ぎや破けているような服を着ている者が多いのだとか。だから私を良いところの苦労知らずのお嬢様だと思っていたんだって。だから教えてあげた。私が居た元いた世界ではこのくらいの服装は私くらいの年齢なら皆している。制服とは綺麗に保たれているものだ。そういうものだと。フェンリルはちょっと驚いて見せたけど、演技だと直ぐ気付いた。だってバレバレくらい下手くそだったから。そうこうしていたら森を抜け、草原に出た。
やっと25話・・・。頑張ります・・・。
誤字脱字報告宜しくお願いします。




