聖女の本当の力②
デブは聖女になれないんですか?を読んで頂き、ありがとうございます。
先発部隊の状態を確認し、疲労が酷いため、救出部隊の後ろに下げた。救出部隊で斥候、剣士、魔法の順に部隊を編成した。私は先発部隊の疲労を癒やす。皆殆ど体力が残っていなかった。昼食を取ってここを目指していたら間に合わなかったかもしれない。そう思うとまた恐怖感が襲って来る。
「珠子、しっかりするんだ。目の前の奴らをしっかり見ろ。そいつ等はまだ生きている。死んではいないのだ」
カムイの言葉ではっとする。これで何度目だろう。強くならなきゃ! 弱いままで居たくないなら! 私には私に出来ることがある。役割がある。今はその役割をしっかりと熟そう。
私は先発部隊のハイエルフ達を全員回復させる。しかし、魔法で無理やり回復させた体は、通常の食事や睡眠で回復した状態とはやや違う。救出部隊に加わろうとするハイエルフを止めた。
「珠子、何故止める?! 俺達もドラゴンを倒す」
「気持ちは十分過ぎるくらいにわかります。しかし、治癒魔法で無理やり回復させただけで、皆さんは万全の状態じゃ無い。冷静に考えて下さい。今のあなた達にできる事を」
私はカムイに言われたことを、ハイエルフの皆に言った。これでちょっとは冷静になってくれると良いんだけど…。
うん。私の言葉で少し冷静になってくれた様だった。元々カムイの言葉だしね。
先発部隊のハイエルフ戦士達は冷静に話し合い、後方で魔法支援に回ることを決めた様だった。ハイエルフという種族が膨大な魔力を持つ種族だ。ドラゴンも討伐出来るだろう。
「あ、そうだ、言わなきゃ!」
先発部隊のハイエルフの女戦士が唐突にそう言った。何を言わなきゃなのかな?
その言葉で先発部隊全員が思い出した様に口を開いた。
「「「「アースドラゴンだけじゃない!」」」」
「この地には現れる筈のないノースドラゴンが居たんだ! 俺達はアースドラゴンを見つけて、アースドラゴンならこの人数でもいけるだろうと踏んで狩りを始めたんだ。この場所に着く少し前の広い場所で戦闘をしていたんだか、そこへ突如ノースドラゴンが空から氷魔法を放ってきて、アースドラゴンとノースドラゴン同時に相手をする事は出来ない。だから撤退を選んだんだが、簡単に退ける相手でもない。それで何人かを先にひかせて村へ急がせた。食料何かの物資も尽きかけてたからな。残った者でアースドラゴンを弱らせて逃げ出す隙を伺っていたが、ノースドラゴンが度々氷魔法で攻撃してきて此処まで追いやられて居たんだ」
そう話してくれていた時、空に大きな影が現れた。大きな翼で、大きな体。アースドラゴンと対峙している戦士以外皆空を見る。恐怖で体が強張る。直ぐに動けない。ノースドラゴンはそれを見て空から広域に氷魔法を放つ。そこで幾人か我に返り、近くの人を引っ張り木々の間に身を隠す。なんとかノースドラゴンの攻撃は避けられた。アースドラゴンと対峙していた者も、幸か不幸かアースドラゴンの大きな体に守られていた。アースドラゴンは背にノースドラゴンの攻撃を受けていたが、硬い皮膚によって大したダメージは受けていない様だった。
私はそれを見て、カムイを探した。カムイはデカい。この広範囲の攻撃を避けきれたのだろうか、不安になりカムイの姿を探す。
しかし、私はあの巨体を見つけられない。
「何で…。何で居ないの? カムイ〜!」
カムイが進んでいた場所の方を見た。木々の間からカムイの美しく輝く鱗が見える。私はそこへ向かってまた叫んだ。
「カムイ〜!」
カムイに向かって走り出す。カムイの顔の前に立ち呼びかける。
「カムイ? カムイ〜!」
力なくカムイが目を開き、私を見た。
「珠子か、お主無事か?」
「私のことなんていい…。カムイ、どこが痛いの? 私が治す」
私のその言葉にカムイはいいやと言いたいようだった。
「何で、私治癒魔法使えるようになったよ!」
「魔力操作を学び始めたばかりで、あれだけの治癒魔法を使ったのだ。これ以上魔力を使えば、お主が危ない。われは大丈夫だ。心配するな」
カムイは私にそう言った。でも私は納得出来ずに、カムイの体を調べる。すると、お腹の辺りに酷い傷を負っていた。その傷のせいで地面に倒れたんだろう。そこにノースドラゴンの攻撃も受けて居たようだった。お腹の脇辺り広範囲に出血があった。私はそれを見て言葉を失う。その間も血は流れ続ける。
私は慌ててそれを手で抑えるが、私の手では当然止血する事など出来るほど傷は浅くなく、1箇所だけの傷ではない。
私はなんとも表現できないような感情に全身が襲われていく。それと同時に魔力がどんどん体から漏れ出て行ってることも感じられるようになっていた。でも、それを止めることは出来ない。どんどん体から魔力が出ていく。
「冷静になって。今私に出来ること」
声に出し、カムイに言われたことを思い出す。それでも魔力の流出は止められない。止められないなら、その魔力総てを治癒魔法に変えていく。治癒するイメージ強く持ち、私の魔力に触れた場所を治癒していく。魔力が流れ出した場所にあった傷は出血が止まり、段々と治っていく。後は魔力が触れなかった場所の傷だ。アースドラゴンから負った火傷はほぼ治っている。カムイ本体の治癒の力もあるのだろう。後はノースドラゴンから食らった氷魔法の傷が数か所。確認していくと致命傷になりそうな傷はもう無かった。私は落ち着いてそれぞれの傷口に治癒魔法を掛けていく。
くどいがカムイはデカい。だから体全体に治癒魔法はまだ上手くかけられない。体全体に掛ければ傷口が上手く塞がらない所が出てきてしまう。私は丁寧に治癒魔法を掛けていく。
最後の傷口に治癒魔法を掛ける。
カムイの表情も落ち着いたように感じる。それで私も漸く落ち着けた。
「落ち着いている場合では無いぞ! まだアースドラゴンもノースドラゴンもいる」
カムイのその言葉で2体を確認する。
救出部隊はまだアースドラゴンと好戦していた。それをノースドラゴンが狙っている。しかし、そこは流石にハイエルフの戦士達。アースドラゴンと戦う者と、ノースドラゴンを警戒する者と別れているようだ。今の所大きな怪我をしている人はいなさそうだ。私はカムイの状態を確認して、皆の下へと急いだ。
「村長さん、皆無事ですか?」
村長さんが私に振り向いた。
「おお、珠子か。皆無事だ。水神様は…?」
私はニコリとし、大丈夫です!と答えた。
私が治癒魔法を掛けてから大分経ったが、まだ戦闘は続いていた。もう空には月が輝いている。暗い中での戦いは不利だ。しかし、背を向けて逃げれば、2体から同時に攻撃を受け、全滅してしまうだろう。夜の戦いでも逃げることは出来ない。
風に雲が流され、月を覆う。
僅かな間の暗闇。その隙をつきノースドラゴンが再び氷魔法を放つ。その攻撃が傷が癒えたばかりのカムイを襲う。それにキレた私は2体に向かって「肉になれ~!」と手をかざし叫んだ。
すると、2体共同時に強い光に包まれあっという間に素材に変わっていた。
・・・・・・? どゆこと?
その状況を見て、皆私から数歩遠ざかる。
なして…。
泣きそうになるのを我慢せずに泣いた。
「カムイ〜、皆がひどい〜」
私はカムイに近付きながら、愚痴を溢した。
「だって、私何もしてないのに〜!」
「「「「「「え〜?????? ドラゴン2体一瞬で倒したじゃん!!!!!!」」」」」」
私ただの聖女なのに・・・・・納得いかないっ!
誤字脱字報告宜しくお願いします。
予告通り次は12日の日曜日の夜までに最低1話更新となります。それ以上書ければ1話以上更新しますが、色々と立て込んでいるので、無理のないように更新を続けて行きたいと思います。宜しくお願い致します。




