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聖女の本当の力

 狩りに同行して先に村に戻ってきていた戦士たちの案内で狩り場まで進んでいた。

 昼過ぎに村を出た為に、追いつく事なく途中で野営をする事になった。

 ハイエルフの戦士たちは、手慣れた様子でテントを建てていく。そのテントの中心で焚き火をして皆で食事を取った。温かなスープとパンと肉の串焼きだった。その後それぞれのテントに入って休んだ。

 私はテントに入らず、救出に同行してきたカムイのお腹の当たりに頭を預けて、眠った。

 毛布を顔半分まで被り、朝を待った。皆本音は夜通し狩り場へと向かいたいだろう。しかし、私が同行しているのもあって無理な進行はしなかったのだろう。それが私には、お前は無力だと言われているようで悔しかった。1日でも早く魔法を使えるように、この間も魔力操作を行い続けた。

 「珠子、お主の悔しさは分かる。でもだからと言って無理をすれば良いというものでは無い」

 カムイはすごいね。なんでもお見通しだ。

 私はカムイに縋って泣き続けた。もうあんな光景は見たくない。誰も死ななかったからいいもの…。

 「カムイ、あの村に戻ってきた人達助かったんだよね? 誰も死ななかったんだよね?」

 「ああ、この一行には居ないがね。流石に村に残ってるよ。でもあれだけの傷だ。われでも助けられたかわからん。珠子はそれだけの事をしたんだ。何も悔しがる必要は無い。ハイエルフの戦士は強い。信じよう」

 大量に出血し、私の治癒魔法で一命を取り留めた者たちはこの救出部隊には居ない。比較的軽傷で動ける者が同行していた。カムイの言葉に私は頷いた。カムイは私を励ましてくれている。ここでカムイに反論してもなんの意味も無い。私は泣くのを止めた。自分の非力さに悲劇のヒロイン振ってるだけだ。現実を受け止めよう。

 私は弱い。弱いなら弱いなりの戦い方がある。


 朝になり、皆それぞれの準備をし、朝食を取った。皆気合の入った顔をしている。私も気を引き締めた。今日中に絶対に追いつく!

 朝食前にテントは素早く解体されていたので、後は焚き火を消したら出発だ。

 隊列を組み、皆無言で進む。

 私は最後から2番目に居て、私の後ろをテンディが付いている。カムイは大きいから1番最後尾から付いてきていた。

 皆の足取りは早い。気が急いている証拠だろう。でも、誰も文句を言わずに只管前の人に付いていく。そんな感じだった。暫くするとテンディが私に昼飯食べるかと聞いてきたが、私は首を左右に降った。今は只1歩でも前へ進みたかった。皆も同じ気持ちだった様で前を歩いていた数人が振り返り、私に向かってニコッとした。前へ進もう。

 そうして昼の休憩も取らずに只管進み続けたからか、狩り場が夕刻には見えてきた。

 「見えたぞ〜!」

 先頭を歩くハイエルフの戦士がそう叫ぶ。

 皆その言葉に息を飲んだ。坂の下にいるあれは多分、ドラゴン…。それを見た瞬間、ハイエルフの皆は覚悟した。たった10人程度で仕留められる獲物ではないからだ。如何にハイエルフの戦士が強かろうと、魔法が得意であろうと、犠牲を出さずに戦える相手ではない。それが分かるから、ハイエルフの皆は覚悟したのだった。

 「1人でも生きててくれよ…」

 テンディがそう呟く。

 私はその呟きに泣きそうになるのを必死で堪え、皆と共に歩き出す。

 「ギュイ〜、キュェ〜」

 そう咆哮が聞こえた次の瞬間、前方が熱と光で目が眩む。顔の前で両腕をクロスして目を覆う。

 誰かが私の首根っこを掴んで後ろに引っ張った。私は勢い余って尻もちを着く。

 その瞬間眼前を熱を持った強い光が通った。

 ちょっと髪が焦げた。ちょっとで良かった。チリチリパーマになったらいくら私でも恥ずかしさで生きていけない…。

 私は尻もちを着いて呆けていたが、私を引っ張ったテンディが後ろから叫んだ。

 「皆生きてるかー? 近くの奴の生存を確認しろ」

 はっ!そうだ。あれだけの攻撃だ。死人が出ていても当然だ。私は何呆けていたんだ。助けにきた筈なのに…。唇を噛み目を見開く。辺りを見渡しハイエルフの人達を確認する。数人が腕や脚に酷い火傷を追っている。また私の中に震える感覚が戻ってくる。

 「珠子、怖いのは皆同じだ。お主だけが無力なのではない。今できることに目を向けろ」

 カムイが私にそう声を掛けてくれた。そのおかげで自分を奮い立たせて傷を負った人に近付く。

 覚えたばかりの治癒魔法を使う。安定的に魔力の出力が出来なければより悲惨な事になる。魔力を体外に出すイメージをしっかりと持ち、日々の鍛錬を思い出す。一遍に治せる人は2〜3人。出血の酷い人から治癒魔法を掛けていく。

 「ヒール」

 ”大丈夫、大丈夫、焦るな。焦っても何かが変わる訳じゃない” そう自分に暗示を掛ける。

 ヒールを掛けた3人は出血が止まり、爛れた肉や皮膚が元に戻っていく。3人は傷を負った箇所をそれぞれに確認した。元に戻っていたそれに驚く。

 私は治った事を確認すると、次の負傷者の元に行く。次々と負傷者を治す。たった数回でも1回1回が経験になるかの様に、どんどん上手く治癒魔法を掛けられるようになる。

 テンディが言っていた。聖女の力は”祈りの力・愛の力”だと。私がするべき事が分かった。

 でも、バカ王子と私を蔑んできたクラスメートや教師は赦せない。

 それよりも、これからを考えるより、今は・・・・目の前の敵をどうにかしなければ、私達の命が危ない。この時私はカムイの声が聞こえていたことで、姿を確認しなかった。

 ……、ドラゴン討伐って聞いてませんけど…ハ〜。

誤字脱字報告宜しくお願いします。


宣告通り、今日20時で1日2回更新は一旦取りやめとなり、週1更新を目指して頑張ります!

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