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1日、1日、人は大人になってゆく

 アッシャムを筆頭にガレ・皇子様・私・中村くん・ミリロでジュランを追う。

 ミリロが後ろから行く先を指示する。

 ジュランとミリロはクピト様の取り計らいにより、互いの居場所が判るようになっているらしい。《血の契約》という様だ。それを行っている者同士は磁石のように引き合い、相手の居場所を探し当てられるらしい。2人に騎士のような任務を与える時にクピト様が逸れても大丈夫なようにそうしたようだった。

 「そこから道を外れて下さい。森の中へ入ります」

 あの家を出てから街までの道のりは来た時と同じ道だった。しかし街から移動魔法を使ったところまでは行かずにその手前の森の中へ入ったようだ。

 「ガレ!」

 「ハッ!ユウもいいか!」

 「ああ、分かっている」

 皇子様に名を呼ばれガレが返事をするが中村くんも何が分かっているのだろうか・・・・・。

 「聖女珠子様、この森はテントーレ王国と我が帝国の境に位置する大森林に続く道です。ヘタをすればテントーレ王国へ入ってしまうかもしれません。暴動は多少抑えられていますが、立て直しがあまり進んでおらず、民達は飢えから暴力行為に出るものも少なくありません。このまま突き進みますが宜しいですか?」

 皇子様の説明でガレと中村くんの返事の意味もわかり私は頷いた。

 「ジュランを助けに行かない選択肢はありません。それが己の危機を招くとしても、私はジュランの仲間です!」

 私の言葉に頷いてくれた皇子様は「前進!」と号令を掛けた。そうして森の中へ歩を進める。少し開けた所で休憩を取ることにした。

 私はその場で食べられるオープンサンドを作って出した。ジュランとミリロが街で大量に食材を調達しておいてくれたお陰でまだなんとか持ちそうだった。途中食べられる魔物を狩りながら進もうと言うことになった。ジュランが直ぐに同行されることは無いだろう。しかし私達が急がなければ行けないことも事実だ。でも焦って急いで私達自身が遭難したり食料不足に陥ってしまっては元も子もない。その辺は流石皇子様、きっちりと采配を振るってくれました。焦る私達を諌め、間違いなくジュランに追いつくために!

 「今夜はこの辺で休みましょう。その代わり・・・・明日日が昇る前に出発したいのですが宜しいですか?」

 皇子が私達にそう尋ねる。私もミリロもアッシャムも頷く。土地勘がない場所で明かりもない場所をうろつくのは危ない。皇子に従った。テント張りや薪の準備は騎士の2人が行ってくれた。慣れているのか見事な動きだった。

 「凄いね。騎士ってテント張ったり薪を用意したりするの?」

 「言っただろ。討伐なんかがあれば何日も家を開ける。当然野営をする。その時テント張れない、薪の用意も出来ないじゃ足手まといだからな!」

 中村くんは自信満々でそう答えた。

 「初めはへっぽこのポンコツだったけどな」

 ガレが中村くんの隣へやって来てそう茶化した。

 「2人は初めからそんなに仲が良かったの?」

 私がそう聞くと2人は顔を見合って笑い出した。

 「いや、いや。そんな事は無い。ユウは勝手にこっちの世界に呼び出されてあんなひどい森に捨てられて、命も危ないって思いをしてこの国にたどり着いたんだ。初めは誰も信じなかったよ。皇帝の言葉すら信じなかったくらいだからな!」

 そう言うとガレは中村くんの方に腕を掛けた。そして話を続ける。

 「それでもユウを大森林で見つけた騎士やこの国の人と触れ合っていくうちにこころひらくようになって・・・。それまでは騎士団の訓練を受けるときも皆怖くて話しかけなかったもんな。初めは騎士になるつもりで騎士団の訓練受けてた訳じゃないんだよな?」

 「ああ。皇帝がこの国で生きろって言ってくれて、拾ってくれた騎士がこの国の貴族で、その人の好意でこの国の学校に通えてしっかりと学ぶことが出来たんだ。何かお返し出来たらなって思って騎士団の訓練に参加してただけだったから、騎士になるつもりが初めから有ったわけじゃないんだ。でも俺は聖騎士のスキルがあるから剣術はメキメキ上達していって、単純な剣術なら誰にも負けないくらいになってた。それでもあの豚王に捨てられる原因になった魔力なしが原因で今でも1番には成れてないよ・・・・」

 そう話すと中村くんは離れた場所に腰を下ろし沈んでいるようだった。私は魔力が無いと駄目なのか、単純に剣術だけ強くては駄目なのかガレに聞いてみた。

 「う〜ん、普通の騎士ならそれだけでも相当な地位につけるくらい出世はすると思うよ。でもユウは皇帝から期待されてるのも在るけど、あの国から守ってもらってるって意識が強いからな・・・・。もう一人だって十分に戦えるのに・・・・・。聖騎士って魔法が使える騎士のことなんだ。俺も多少の魔法なら使えるけど、聖騎士の魔法ってぜんぜん違うんだよ。う〜・・・ん。そうだな、賢者や魔導師が国1番の剣術使いって言うと分かりやすいかな」

 「え?!そんなの無双じゃないですか」

 「そ。だからユウも焦ってるんだと思う。魔法が使えない自分になんで聖騎士なんてスキルがあるのか、本当は魔法が使えるんじゃないかって」

 「中村くん、魔力は有るんですよね?」

 私の言葉にガレは首を振った。帝国で魔力測定を行った結果中村くんに魔力反応はなかったそうだ。私はなんと言っていいか分からず晩御飯を準備するとその場から逃げた。魔力が有りすぎて捨てられた私と、魔力0で捨てられた中村くんか・・・・・・。あの王国の非道な行いに改めて腹が立ったのと、私達は現実を知らない子供なのだと思い知らされた気がした。

 社会に不都合な人や物事は処分されるんだ。そうして平穏を保っているのが社会なんだ。私達子供はそうしたことから大人達に守られている。その現実を受け止めるには私達には乗り越えてきたものが、力が圧倒的に足りないのだと感じた。そんな事を考えながら作った晩御飯は久しぶりに失敗してしまった。

 そんな食事を皇子様は美味しいですよと笑顔で食べてくれた。そんな気遣いが心にチクリと刺さり、そして救われるような気持ちがしたことも事実だった。ガレはそれを見てまた私から目を反らして不機嫌になっていた。明日の朝ご飯はちゃんと美味しいものを作ってジュラン捜索に力を貸してもらおう。

誤字脱字報告よろしくお願いします。


2日も更新できずに申し訳有りませんでした。

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