ちょっと感動して、損をした話
知里は私の腕を引っ張って、ぐんぐん歩いていく。
「あ、あの、腕…」
「え? あ〜、ごめん、痛かった」
そう言うと知里はパッと私の腕を離した。その後は気にもせず、ずんずんと進んでいく。ま、雄介を追いかけているんだろうけど…。洋輔はそんな知里の横を無言で歩いている。知里がちょっと左に避けると、洋輔も左に寄る。知里が少しペースを上げると、同じだけペースを上げる。
私はその様子を少し後ろから見ながら2人に付いていく。
そう、知里が私の腕を引っ張った理由はこれだ。ま、予想は出来てたけどね。
ただ、ちょっと感動はしたから、損した気分なのは否めない。
洋輔は知里が、というより、クラスの私以外の女子が好きなのだ!ただの助平だ。
当然そんな男がモテる筈もなく、知里は洋輔が嫌いなのだ。表立って嫌うと自分のキャラが崩壊するからあからさまなのは今までない。そのせいで、クラスの中でも1、2を争うくらいに付きまとわれているのだ。知里はそれが鬱陶しくてしょうがない。知里は雄介や智哉みたいなタイプが好きなのだ。雄介は学年でもトップクラスの成績。両親とも外務省勤務のエリートだ。智哉は、成績は上の下といった所だか、父親が車や飛行機なんかに使用される動力系の精密部品を作ってるオーナー社長だったはず。
対して洋輔は街の花屋の息子だ。差はでかい。本人の成績も下の中くらい。要するに頭は悪い。本人の力で将来の出世は見込めない。
知里は多分、金が好きなのだろう。私はそう推察している。外見もお世辞にもイケメンなんて言えない洋輔は、クラスの大半の女子から嫌われている。残りは意識してないから好きも嫌いもないと言う感じだ。
哀れ、洋輔!
「雄介君、見えないね。こっちじゃ無いのかな~?」
多分独り言だろうから私は無視してる。
「そうだね。早すぎるよね! 道違うのかもね」
洋輔がそう返答すると、小さく舌打ちが聞こえた。
あ〜あ。恋は盲目だね!
洋輔の言葉にイライラが増したのか、知里は再び私の腕を引っ張った。そして先に有った脇道に入っていく。私を洋輔と自分の間に入れ、洋輔にくっつかれない様にして。
「早く歩かないと、雄介君に追いつけないよ! 雄介君から離れたら、私達死んじゃうよ。この中で頼りになるの雄介君くらいでしょ!」
知里は洋輔に分かるようにそう口にした。
こんなんで気付く奴なら付き纏って無いと思う。知里も残念なら、洋輔も残念である。洋輔は完全にとばっちりだけどね…。
あ〜あ、まじでちょっとでも感動して損をした!
私は知里に引かれる腕の痛みを、ただ只管我慢して歩き続けた。
一方雄介は、私達が歩いていた道を180度逆方向に歩いていた。テントーレ王国に戻った所で、結果は同じ。ならば別の国を目指してそこで生き残る道を探した方が勝機はあると踏んだ様だ。
だから私達はそもそも雄介に追い付くことは出来なかったのだ。
後に雄介に取ってはこの判断が最良の判断だったと知ることになる。
私達はと言うと、当然最悪の行動をしたのだった。
私達が選んだ道に有った脇道は、森の深くへと続く道。当然魔物の出現率も上がる。
洋輔から逃げたい知里は、脇目も振らずぐんぐんと進んでいく。知里から離れたくない洋輔も同様だった。それに巻き込まれた私…。
1番の被害者だった。
そう、この選択で1番被害を受けるのは私だったのだ。そんな未来の事は当然分からない。
だから後悔が先に来ることは無いのだ…。トホホ。
頑張れ、私!
それにしても、知里のこの力何なの?
誤字脱字報告宜しくお願い致します。
ここの所遅い時間ばかりで申し訳ないですが、今日も22時の更新となります。




