ミリロの心配事と魔力操作
中村くんにはげんこつを上げたら笑いは止まったようだ。憎々しげに私を見ているが気にしない。
それよりも私は私の状態を確認しなきゃ!鏡がある玄関口に向かう。
鏡の前に立つとそこには紛れも無い昔の自分が映っていた。
どういう事?!何で突然あの頃の姿に戻っちゃうわけ?
この世界に来た時は確かに元の世界の姿のままだった。あのクソ王子に「デブス!」って言われたことは今でも忘れていない。それで森に捨てられて、オリファンにあって、ハイエルフの村で暮らして昨日までの姿になっていったんだ。でも村で暮らして直ぐには昨日までの姿じゃなかった。・・・・そうだ。魔法を習い始めてからだ!
そう思い至った私は外に飛び出し魔法を発動してみる。すると手のひらに乗るほどのつむじ風が興たが、直ぐに消えてしまった。もう一度と挑戦してみるが結果は同じだった。
意気消沈して家の中に入るとエレノエラさんとフェンリルがリビングで寛いでいた。
「エレノエラさん・・・・」
私は泣き出しそうな声でエレノエラさんを呼ぶ。
「まあまあ、随分と化けたこと」
そう言うとエレノエラさんはケタケタとおかしそうに笑った。
「笑い事じゃないですよ!私どうしたら戻れるんですか?エレノエラさんなら知ってるんじゃ?!」
「私よりフェンリルの方が知っているみたいよ!」
そう言ってフェンリルを見る。私もフェンリルを見る。そうすると面倒くさそうに答えてくれた。
「お主はあの村に居た頃少しづつだが顔が日々変わっていた。オリファンから聞いたら体内に溜まっていた膨大な魔力を体外に放出してから身体に変化が起こったと聞いた。それで考えうるのは今回は膨大に魔力を体外へ出しすぎてしまったために、体はこれ以上魔力を体外に出さないようにしたのではないか。それにより、お主の体内で上手く循環するようになっていた魔力が偏って溜まり始めて元に戻ったのでは無いかという予測だ」
われもこれ以上は分からん、とフェンリルはその場に寝転び欠伸をしている。
「なら、また魔力操作すればいずれ元に戻れる?」
フェンリルとエレノエラさんに向かって縋るような目をしていた所へ、現実に戻ったのかジュラン達が部屋から出てきた。
「神子様〜、あ〜神子様、お労しや・・・・」
ジュランが泣きながら大げさに私に抱きついてきた。それを見て中村くんがまた笑い出しそうになっていたので、私はげんこつを中村くんに見せて黙らせた。ミリロはなんとも言えない表情で私を見ていた。
後でフェンリルがこっそり教えてくれた。ミリロの種族は稀に変異する者が出るそうで、その変異した者は神に召されると言われているそうだ。
私が何処かへ連れて行かれると思ったのかな?
”私は何処へも行かないよ!ミリロ達とずっと一緒にいるよ”私は心のなかでそっとミリロにそう言った。
「それよりもお主、魔力操作と言っていたが、以前とは違い今回は魔力が枯渇しかけてのその状態。魔力が戻るまでは魔法は使うな。魔力操作もだ。少しは大人しくして我慢しておれ!」
フェンリルから尤もなお説教を食らった。
それが聞こえたのか中村くんは口元を抑えながら笑いを堪えているようだった。・・・・もう1発要る?
そうして我慢して数日を過ごした。
私の体は元の世界に居たときの最高潮並の体型になり、魔力も十分に戻った。そこで魔力操作を始めようとジュランとアッシャムを伴って外へ出た。
「やっ!」
そう言ってやって来たのはガレだった。私が倒れてから見舞いに来ていたのは中村くんだけだった。ガレはここへ来ては居ないとエレノエラさんが教えてくれていた。
「お久しぶりですね。今日はどの様な?」
「いや、珠子様が目を覚ましたことはユウから聞いていたのですが、魔力枯渇が影響して体に異変がおきた事も聞いたので、こちらへ来るのを遠慮していたのですが、もうだいぶ良くなられたのですか?顔色は良さそうに見られます」
そう言ってガレは私に笑顔を向ける。
こういう所、流石貴族とでも言うのか、中村くんのような無礼は一切ない。
「ええ、ご心配おかけしました。お陰様で魔力も回復し、これから魔力操作を始めるところです」
「ならば俺も協力いたします。聖女の力を持つ貴女の魔力がまた暴走したら次はこの村全体が危ない」
そう言うとガレはぺろっと舌をだしふざけた。しかし嫌な感じはしない。幼少の頃から行き届いた教育をされると人はこうなるのか!と関心していたら、ジュランから「早く始めますよ!」と叱られた。
ジュランやアッシャムから指導を受けながら、久しぶりの魔力操作をする。段々とカルマさんから扱かれて居た頃の記憶が蘇る。あの頃は本当に真剣に魔法を学ぼうとしていたよな〜。そんな事を思い出し、村の皆のことを思い出す。人生で初めてだったかも・・・誰かのために何かをしたいと思ったのは。
「神子様!集中して下さい。乱れていますよ」
ジュランから指導が入る。私は気持ちを魔力操作に集中させる。
「そうです。しっかりと集中して続けて下さい」
私はジュランとアッシャム、そしてガレに見守られながらお昼近くまで魔力操作を続けた。
「こんなに長く魔力操作を続けるんですか?」
「ええ、神子様の魔力量はハイエルフの私達でも負ける程です。なので魔力操作を無意識に出来るようにしないとまたいつ先日のような事が起こるか分かりませんから」
「なるほど。聖女の力とは本当に凄いのですね」
ガレはそう感心する。
「それより時間は良いのですか?何かあってここまで来たのでは?」
「いえ、今日はユウが皇子の付き添いで来られないので、代わりに様子を伺いに来ただけなので、本当に何の用も無いんですよ。ですので俺のことは気にしないで下さい。それより、何かお手伝い出来ることがあれば言って下さい。なんでもしますよ!」
そう言って再び騎士とは思えないほどの優しい笑顔をした。
ガレって本当に男前なんだなぁ〜。ぼんやりとそんな事を思った。
誤字脱字報告よろしくお願いします。




