戦争の始まり
本編のみだとこれが100話目になります。(合ってる?)いつもより少し長めになってますが、以前の100話目の半分くらいです。
のんびりと楽しんでもらえたら嬉しいです。
玄関から入ってきた中村くんがこちらへ向かって手を上げて、ヤッという感じで家の中へと入ってくる。
「日聖久しぶり」
「うん、でもどうしてこんな遠い所まで?」
「皇帝の勅命なんだ。邸では話せないだろ?俺達はブルーバレ付近の村で出没報告の有った魔物の集落の討伐に出たことになってるんだ」
なるほど。
「でも、それって直ぐに嘘だってバレない?」
そう言うとガレと中村くんは2人で大笑いを始めた。
「あ〜、ははは・・・あ〜。いや、大丈夫だよ。討伐は本当にしてるから。此処に来るまでにオークの集落とゴブリンの集落を殲滅してきてるから問題ないよ。そうでないと日聖達を護衛した人数は説明がつかないだろ」
中村くんってこんなキャラだったけ?もっとクールな感じじゃなかったけ?
私は大笑いした中村くんと、放課後教室にいたクールな印象の中村くんを比べてちょっと面食らった。
でも本当の中村くんはこういう人なのかもと思うほど楽しそうで、幸せそうだった。
「中村くん、楽しそうだね。良かった」
私の言葉に中村くんは少し照れたように鼻の頭を擦りながらヘヘッと笑い「まあな」って言った。
「あっちの世界では親父の会社を継ぐ事が決まってるみたいな所が有って、そのための毎日で俺の希望なんて聞いてもらえなかった。それを思えば今は自分の気持に正直に毎日を生きているよ。日聖は?」
「毎日楽しく、昔では考えられない悩むことも有って、生きてるって感じかな?!」
その言葉に中村くんは嬉しそうにしている。そしてボソリと「良かったな」って言ってくれた。中村くんは中村くんで心配してくれていたんだな、そう感じた。元の世界に居たらきっと知らないまま人生を終わっていたんだろうなと思う。この世界に来て、自分が思っている以上に他人から思われていたことを知った。そういう意味でもこちらに来られて私は良かったと思っている。皆とも知り合えたしね!
「あ、それで今日は戦争を止める・・・ため?」
「そう。その話し合いにこんな時間に来たんだ。昼間だと誰に見られているか分からないだろ?」
なるほど、何処に目があるか分からないしね。
「誰がスパイか分からないからな」
私は中村くんとガレの顔を代わる代わる見る。
「騎士団の中にもあの男の息がかかっている者がいると思われます。そのため今夜はユウと討伐祝に夜通し飲みに出たことになった居ます」
・・・・それ、飲み屋に居なかったらバレるのでは・・・・。
「それ、遅くても朝にはバレますよね?」
「いいえ、皇子も含めて大勢で出かけていますので、2人居なくなったくらいじゃバレませんよ」
いや、それはそれで居なくなったのバレたら変な噂立てられるやつじゃない・・・・。大丈夫?中村くん・・・・・。元クラスメートとして不安だよ。
「挨拶はそのへんにして早速話し合いを始めましょう。時間はいくら有っても足りないのよ」
エレノエラさんにそう促されてガレと中村くんは空いている椅子に腰掛ける。
私は2人に紅茶を出した。コーヒーを出そうかと思ったけど、ガレは貴族だと言っていた。コーヒーより紅茶の方が飲み慣れているだろうと思った事と、コーヒーを飲んだことがあるか不明だったためだ。2人の前に紅茶が入ったカップを置き、私も席に着く。
「では、先ず騎士団が手に入れている情報を教えてもらいましょうか。当然話してくれくれるのよね?ここまで来て隠し事は無しよ!」
「ええ、皇帝にもあなたへ全てを話すように言われています」
エレノエラさんが2人へ向かって話すとガレがそれに答えた。
エレノエラさんから粗方のことは聞いている。でもそれだけでは話は済まないのだろう。それは分かるけど、騎士団の人とこんな隠れて合うみたいなことをするほどの情報って・・・・。
ガレが紅茶を一口飲み、この計画の話を始めた。
「まず、皆さんに始めから何故この様な事になったのかの話から始めた方が良いでしょうね。エレノエラさんには少しお付き合いをお願いします」
そう前置きをいい、私達一人ひとりに目を配り再び口を開く。
「皇帝が我々騎士団に勅命を下したのは2年近く前になります。突然私と団長が呼び出されて騎士団の中で真に信頼できる者を洗い出せと言われ、今回この討伐に参加した者を皇帝に進言しました。そして皇帝から何故その様な事を依頼してきたのか、事の詳細を聞きました。それが今回の戦争を止めるための計画でした。皇帝が怪しみ出したのは我々に信頼できるものの洗い出しをさせる3ヶ月程前です。その頃にあの男からファーストコンタクトが有ったようです。それで皇帝は密偵に男の素性をあらわせ、800年前この世界に突如として現れたキルトの領主であることを突き止めました。そこで始めに皇帝が取った行動はあの男をこの国に取り込むことでした。しかしあの男はそれを利用するような行動を取り始めたのです。それで皇帝は表向きその行動を維持し裏では男の本当の目的を探り始めました。引き続き探らせていた密偵から入った情報は謎に包まれた倭国とあの男が繋がっているかも知れないということです。そこで皇帝は倭国がこの世界全土での戦争を仕掛けようとしているのかもと山をはりそれに特化した情報をを集めさせました。公に動いている密偵とは別の情報源を使ってですがね。あの男が今現在でもこちらの動きが何処まで筒抜けになっているのかは未確定ですが、こうして貴女方が奴らを巻けたことは確かです。そこで我々は行動を起こすことを決めました。お見事でしたよ。貴女方が潰したあの道具調べてみましたが我々では分かりませんでしたが、ユウが教えてくれました。追跡用の道具では無いかと。それが我々の眼の前で粉々になっている。それを皇帝に伝えたらそれは大層喜ばれいました。あ、あの男には分からないように話しているのでそれはご安心下さい」
そこまで話すとガレはまた紅茶を一口飲んだ。中村くんも一口紅茶を飲む。
「で、ここからが肝心なところなんですが、今現在で我々が掴んでいる戦争になりそうな国は、ミニハン王国、ガルバノス、ドンチャプギ連合国、テントーレ国、西国が戦争へ向けた動きをしています」
その国を聞いて私は頭にクエッションマークが浮かぶ。テントーレ国???
「疑問ですか?」
私が首を傾げながら考えているとガレがそう聞いてきた。
「テントーレ国?王国なんじゃ?」
「ああ、貴女は王宮から出た後のあの国の事を知らないのですね。貴女が森に捨てられてからしばらくしてあの国は多くの魔物に襲われ、王族とそれに連なる貴族は殺されています。王族に至っては首を切られ、街なかにそれが晒されていると伝えられています。それは民衆の行為とも言われていますが、帝国も含めた隣国は黙認し、魔物の行ったこととし誰も裁かれることは有りませんでした。その後国民は新たなリーダーをたてて仮にテントーレ国として歩みだしています。しかし王族の身勝手な政策のため国は瀕死の状態です。それを脱却するために戦争するしか無いと考えている国民が多く、大衆の意見に流されているのが現状です。それを止めるために支援を行おうとなったのですが、それもままならない状態です。魔物が国そのものを蹂躙しているので、住む場所を失った国民ばかりです。雨季にあたったこともあり、感染症が蔓延し亡くなるものも後を立ちません。今現在も感染症を抑え込めていないため、カルマ氏に依頼をし感染症の封じ込めにハイエルフの村の方の手を借りています。封じ込めが成功したらカルマ氏から連絡が入るようになっています」
雨季はあの村も大きな被害が出るって言ってた。オリファンが今年は1人で頑張るみたいに行ってたけど、村から出られる状況じゃないはず。それなのにあんな国のために村を犠牲にするなんて・・・・・。
・・・・・、そう言えば他のクラスメートはどうなったんだろう。魔法が使える人間がかなり居たはず。そのクラスメートたちは何をしているのだろう。放りだして逃げたのか?
「他の奴らはまだあの国にいるよ。でも、感染症を抑え込めるほど魔法を使えるやつは居ない。それほど使いこなせるほど魔法の訓練をしていなかったみたいなんだ。王族も殺されたこともあって、王宮の無事な場所で皆身を隠しているらしい。出ていってもどんな扱いになるか分からないし、帝国も保護するか悩んでるんだ」
私が考えていることが伝わったのか中村くんが教えてくれる。その情報はなんとも納得行くものではなかったけど、・・・・。
「今王宮に残ってる連中はあの王族に贅沢を味あわせてもらった奴らばかりだ。その金は国民の税金だ。それなのに国民を助けること無く逃げているも同然の行動を取っているのは納得いかないよな・・・・」
中村くんの言葉が心にストンと落ちてくる。
これはクラスメートの待遇の差に嫉妬していたからなのだろうか、それとも私の中にある正義なんだろうか。なんだかモヤモヤする。でも今私は自分が助けに行きたいとは思っていない。カルマさん達を心配しているだけだ。クラスメートと大して変わらないな。そんな自嘲が心を占めていった。
「王宮に残った者たちのこと心配と思いますが、今はカルマ氏からの連絡を待ちましょう。貴女がいまここで抜けられてはこの計画は成功しません。難航すると思われていたタイフーンの使い手を見つけたのですから!」
ガレの言葉にガレを見た。クラスメートの事が心を支配しているのは変わらない。しかし頭の中はガレの言葉がリフレインする。
タイフーンの習得を決めたのはカルマさんだ。それも通常のタイフーンの習得方法とは異なる習得。この計画のためにあんなに急いでカルマさんは習得させようとしていたのだろうか。更に心がモヤモヤする。
「あの、カルマさんはこの計画を知っていたのですか?」
「・・・・・ええ、皇帝から直接手紙を出して協力を依頼されているはずです。賛同したかどうかは我々は知りませんが、王国で蔓延している病を抑え込むために力を貸してくださっていることは事実です」
私の言葉にガレが答えてくれる。
心が安定しない。体がフラフラと揺すられているような感じがしてくる。どんどん皆と距離ができて私だけ何処かへ引きずり込まれていく感覚がする。
「日聖・・・・ひじり・・・ひ・・・・・」
なんだか中村くんの声がする気がする。
次の瞬間私は椅子から落ち床へ倒れ込んでしまった。その後の事は記憶がなく、目を覚まして皆から聞いて慌てふためくのだった。
誤字脱字報告宜しくお願いします。
次話タイトルに触れる話になると思います。(あくまで触れるだけで解答編では有りません)




