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日聖珠子の現状

 都立徳大寺高等学校、2年A組。現在17:53。授業は既に終わっているが、私はまだ教室に残っていた。今日は日直で、教室の窓の施錠と黒板消し等を終えたら、日誌を職員室の担任の机の上に置いておかなければならない。それに今日は、提出物もある為それも集めて置いておかなければ仕事は終わらない。

 しかし、教室にまだ生徒が残っている為、施錠しても帰ることができない。

 “早く帰って下さい”って言えたらな~。

 しかしそんな事を言おうものなら、どんな罵詈雑言が返って来るか分からない。大人しくじっと帰ってくれるのを待つしか無かった。

 「ねぇ、デブまだ居るんだけど」

 「あ〜、今日日直だからでしょ」

 「まじで。いや、早く帰れよ! デブ何か見たくね〜んだよ!」

 ”それはこちらの台詞です。あなた達こそ早く帰って勉強したらいかがですか? 私よりテスト出来悪いですよね?!“って言いた〜い。と思っても顔に出してはいけない。ただ只管黙って待つ。

 そうして黙って居ると、教室に残っていた女子から声を掛けられた。正確には、一方的に話された。話されたというより、どこ見て喋ってるの?的に言葉を聞き取っただけだった。

 「私等で施錠するし、帰れば?」

 “そうですか?!じゃ、お願いします”

なんて言うわけ無いじゃん! あなた達の言葉なんて信用してません。でも、仕方ないので私は一旦帰った振りをした。1年生の教室がある階のトイレで隠れて、みんなが帰るのを待つことにする。残っている生徒は男子9人、女子11人。一クラス35人だから、かなりの居残り率だ。残っている生徒は皆、私よりテストの出来が悪い。要らん情報ですけどね…。


18:43―。

バタバタとかなりの数の足音が階段を降りて行くのが分かった。私はそ~とトイレから廊下見る。人の気配がないのを確認して、教室に戻った。

 案の定施錠はされていない。「馬鹿は馬鹿なことしか出来ないのかね~。責めて何も言わなきゃ良いのに!」思っていた事を口にしながら、奴等のしでかした落書きを消した。彼奴等、デブだの不細工だのそれだけでは飽き足らず、汚い、臭い、ゴミにバイキンなんて書いている。塵と黴菌くらい進学校の生徒なんだから漢字で書いてよ、せめて…。情けないよ。

 黒板を消し終わり、施錠も確認して、日誌と提出物を職員室へ持っていく。こんな時間まで残っていたら何言われるか分かったものでは無い。職員に見つかりません様にと心で祈りながら廊下を歩く。

 なんとか誰にも会わずに日誌と提出物を担任の机の上に置けた。

 ふ〜っと安堵して、そそくさと職員室を出る。

 下駄箱で靴を履き替え家へと向かう。

 帰った所で家族と顔を合わせれば、罵詈雑言の嵐だ。いつも自分の部屋で食事を取り、お風呂も一番最後にこっそり入る。必然的に遅い時間になるから湯船に浸かる事は無い。

 学校に居ようが家に居ようが、私が心休まる場所はどこにも無かった。

 家族からの罵詈雑言は私が幼稚園に入園する前からだし、同級生や近所人たちの悪態もずっとだ。だから、私は私の価値が良く分からなかった。だから勉強を頑張った。人より沢山の事を知っていれば何処かで役に立つことも在るだろうと頑張った。でも、頑張る方向が違ったようだ。

 デブも不細工も自分でどうにか出来る事では無かった。当然ダイエットは小さな頃からやってるし、ちょっとでも綺麗に保てる様に、肌をキレイにする事も頑張った。でも、頑張りに結果が何ら比例しなかったのだ。自分でもなぜだか分からなかったが、結構な時間頑張り続けて、心が折れて止めた。反動とかでドカ食いしたりとかは無い。そもそも食事も真艫に貰えていなかった。実の両親だ。でも、幼少期から食事は1食か多くて2食。量も少なかった。だから太ったりニキビが出来たりする程、そもそも食事は取れていない。それにも関わらず体は年々ブクブクと太り、肌も荒れ放題だった。

 そのせいで両親も祖父母も弟や妹も私を嫌った。そんなことで血のつながった家族が?とも思ったが、それが現実だった。

「私の生きてる意味って何だろう?」

 そんな独り言を呟く。

 出来るだけ何も考えない、何も感じない様に過ごす。その日一日を終え眠りにつくまで。


 そんな当たり前だった日常に変化が有った。

 再びの日直の放課後に。

 その時教室に残っていた全ての者が一瞬にして光の中へ消えたのだった。

 強い光に包まれ目を瞑った。

 次に目を開けた時、目に映ったのは見慣れた教室の風景や校舎、校庭では無かった。


 ギリシャに在りそうな、神殿とかの造りに似た建物の中に居るのだろうと推察出来た。

 壇上の上には王族が座っていそうな椅子に腰掛けた豪奢な衣装を身に着けた人物が3人いた。

 私達、総勢18人は辺りをキョロキョロ見廻してどうしたら良いのか狼狽える者が殆どだった。


 異世界に召喚されたと理解するまでに24時間以上掛かった。

 理解して私が口にした言葉は「どうやって生きて行けば良いの?」だった。

誤字脱字報告宜しくお願いします。


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