第二十四話【王都多難】
「ジェイドが生きる世界線かぁ。」
ベッドに寝転がりなら今日起きた出来事を考えていた。
そりゃあジェイドが死なないなら選んだ責任もあるし、ちゃんと結婚しようとは心のどこかで思っていたけれど、まさか本当に死なないというかバッドエンドを回避しちゃうなんてね。
結婚式の準備には最低でも1年かかるって言ってたっけ。1年かぁ…。って私が結婚?
前世デブ、ブス、貧乏、喪女の私が結婚!?
やっぱり夢かしら。いや、夢じゃないのよね。王族教育って厳しいのかな。私にできるのかな。
結婚かぁ…。前世で体験しておくべきだったなぁって思っても前世は親の借金地獄で、それどころじゃなかったもんなぁ。生活を保護してくれる制度も借金だらけで許可がおりなくて、ずっと苦しいままで…。
ん?生活を保護してくれる制度…そういえばこの世界にはあるのかな?
結婚に浮かれてる場合じゃない。私には救わないといけない子供達がいる。そうね、ゆくゆくは子供だけでなく、浮浪者も救いたいわよね。もぅ、私のような辛い経験をする人が現れない世の中になってほしいわ。こんなに素敵な世界なんですから。
私は、いつの間にか眠っていて、次に目を覚ましたら朝だった。
「凄く寝ちゃったかも。」
「おはようございます、お嬢様。サノアル様が朝食の後部屋によってほしいと伝言を言付かっております。」
「ん?なんだろ?わかったわ。」
私は支度して朝食を済ませ、早速サノアルがいる裏の屋敷の一室へ向かった。
サノアルの部屋についてみれば黒髪の使用人に成りすましたプレジャデス王子とギャラクレアがいた。
「サノアル、どうしたの?」
「そろそろ、王都へ帰ろうかと思って。」
「確かにそうよね。ここは寒いし、暖かい王都やハイドシュバルツ領の方が良いに決まってるわ。でも、その…、もう大丈夫なの?」
「えぇ、もう大丈夫。プレジャデスの事も恐くなくなったわ。」
サノアルは幸せそうに笑うので、もう安心だと確信を持てた。
「そっか、いつ帰る予定?」
「今日帰る事にしたの。」
「今日!?随分急ね。」
「えぇ、1日でも早くプレジャデスの負担を減らしたくて。」
サノアルがそういうとプレジャデス王子がサノアルの頬に触れた。
「俺の事は別に良いよ。サノアルの好きにしていい。」
サノアルは左右に首を振った。
「ううん、大人しく王都で暮らすわ。それに…リアの王族教育を私がしないといけないから。」
「えぇ!?そうなの?」
「ええ。そうよ。私のお妃教育はとっくの昔に終わってますもの、それとも他の厳しい先生の方が良いかしら?」
私が力いっぱい首を左右に振った。
「なら、決まりね。王都で待ってるわ。」
「分かった。私も王都へ行く準備をするわ。」
こうしてサノアルは急ではあるけれど王都へと帰って行ってしまった。
私も王都へ行くとして問題はクレアだ。家へ帰すわけにもいかないし、ジグルドのところもクレアにとっては危険だし…。それにクレアの能力は正直うちに欲しい。
「寂しくなるわね。」とサノアルが乗った馬車を窓から見つめるクレア。
「そうね。…ねぇ、クレア。一緒に王都に住まない?」
「一緒に?急にどうしたの?」
「第二シーズンでお兄様が攻略対象になるでしょ?転生者にとったら私達って邪魔でしかないと思ったの。転生しなくとも、別の悪役令嬢が、この屋敷で悪事の限りを尽くすかもしれないわ。そうなる前にマシな王都に一緒に移り住むのはどうかなって。」
「子供達はどうするの?」
「お父様に相談して屋敷ごと移動させようかと思ってるの。」
「や、屋敷ごと!?」
「ダメだ。」
聞き覚えのない男性の声がして二人で声がした方へ振り向けば水色の髪に緑の目を持つ高身長の男性が立っていて驚いた。
「どちら様ですか?」
「クロエル・クラリアス。この屋敷の主だ。」
「はい!?」と私とクレアが驚いてしまった。
「待って下さい。屋敷の主はエルラートン・クラリアス。私の父なはずです。」
「何を言っている。俺はこの屋敷の事を言ったんだ。まぁ、確かに、本館と呼ばれている邸宅の主はラートンのものだろう。」
「どうなって…。」
どうなっているのかと思った瞬間に父の「亡霊が出る。」と言った話を思い出した。
「あ!!!もしかして、幽霊!?」
「え!?」とクレアが驚いた。
「阿呆。俺は生きている。しばらく眠っていたが、どうにも最近騒がしいと思って起きてみれば、これだ。」
クレアと顔を見合せた。
「あの、誰ですか?」
「だから、クロエル・クラリアスと言っているだろう。」
「いえ、そのー…どこで生まれてどこで育ってどうしてこの屋敷の主になったのかを聞いています。」
「お前はクラリアス家について何も学ばなかったのか?エルラートンは秒で俺がここの主だと理解したぞ。まぁ、何故か、脅えて逃げ出したがな。」
「まさか…初代クラリアスの人ですか!?」
「そうだとも。我こそ初代クラリアス王国を築いた男。クロエル・クラリアスだ。まぁ、途中面倒になって、スイートローズに明け渡して領地に成り下がったがな。」
そんな理由でクラリアス領ができたのかと白けてしまう。
ふいにクレアをチラりと見れば、何かぼーっとしていて様子がおかしい事に気が付いた。
「クレア、どうしたの?」
「決めたわ!!私、クロエル様に貰ってもらう!!」
クレアがとんでもない事を言い出して、初代クラリアス領主と私は目を見開いて驚いた。
するとチカッと一瞬眩い光が差し込み目をギュッと瞑り、再び目を開くとジグルド様が腕を組んで少し恐い顔をして浮遊していた。
「婚約者殿!!ワシという者がありながら浮気するとは何事か!!」
「ジグルド様…。」
「おいおい、怒ってやるなよ。お前が不甲斐ないせいで、このお嬢さんは俺に求婚してきたのではないのか?」
挑戦的な笑みを浮かべるクロエル。また、ジグルドはクロエルを見て大きく目を見開いて後退った。
「な、クロエルではないか!」
「嫉妬に目が眩み、俺に気付かないとは…お前も随分変わったようだな。ジグルド。」
どうやら二人は知り合いのようだ。
「やっとできた一生に一度の婚約者じゃからのぅ。」
「いや、違うだろう?スイートローズに誓った魔法契約のせいで、お前は恋をできないはずだ。」
「どういう事?」とクレアが困惑した顔を浮かべる。
「そうだ。ワシは確かに恋をできぬ契約をした。しかし、どういう訳か神託が下り、婚約者殿に恋をする権利を得た。確かに今はまだ、心から好いてはおらぬが時間をかけて好いていこうと思うておる。無粋な真似はよせ。」
「なるほどな。と言うわけだお嬢さん。私には妻子がいた。そしてその子孫こそエルヒリアというわけだ。すまぬが生涯我が妻だけを愛す事を神に誓っている。お嬢さんのご期待に沿える事はできそうにありません。」
クロエルは左手を前にして腹部に当て、右手は後ろに回し礼をする。
「そう、残念だわ。」
「なっ!?婚約者殿!ワシのどこが気に入らぬのだ。」
「私を好きじゃないところ。」
「ぐぬぬ…。待っておれ。惚れ薬でも何でも開発して絶対に好きになってみせる。」
「そういうところです。」
「ジグルド、お前はガッつき過ぎだ。それにお嬢さんの気持ちをだいぶと無視をしているように見える。恋愛は相手を尊重するという事も大事だ。お前一人であれこれ決めてしまってはお嬢さんの気持ちは掴めないよ。」
「ワシは…間違っておったのか…。」
ジグルドは相当なショックを受けているようだった。膝をついて完全に呆けてしまう。
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