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第十二話【これは恋なのかしら。】

サノアルが目覚めたのは三日後だった。

ギルバートからの情報では王城の兵士達はサノアルを捜索中との事だった。このクラリアス領だけは寒冷地帯な為、捜索の手が伸びていないとの事だ。寒いけれど安全というわけだ。


サノアルが目覚めたと報告を受けた私はクレアと一緒にサノアルがいる客室へと向かった。

サノアルはベッドの上にいて、体だけ起こしている状態だった。クレアが駆け寄って「サノアル!どうしちゃったの?」とサノアルの両肩をもって揺さぶる。

「クレア、どうしてここに…。」と驚くサノアル。驚くとこはそこなのか?

「サノアル、お茶会の後に何があったの?一応数週間前の事だったら少しだけジェイド王子から聞いてるわ。」

「お茶会の後、私は王都に連行されたわよね。サノアル・ハイドシュバルツの偽物の容疑で。」

「なんですって!?」

「王都についてからも、いくつか尋問を受けて、最後の最後に牢屋へ入る事になっていたの。」

「は!?どういう事?プレジャデスはそんな事をする王子様じゃないはず…。」とクレア。

「私だって、そう思っておりました。ですが、今のプレジャデスはとても冷たい目をしていて、腹の底では何を考えているか全く掴めないような方です。それなのに、ジェイド王子の魔力に触れて倒れて、目が覚めると、急に今までの彼が嘘のように、問い詰められる事もなくニコニコと常に笑って欲しいものはないか、困っている事はないかと言ってくるようになってしまい…。私、恐ろしくて馬に乗って逃げだしてきたのです。」


ジェイド王子の手紙に書いてあった「身ぐるみを剥がされ、ベッドに寝かされる二人を傍観してしまった。」に繋がるわけか。恐らく、目が覚めた王子は尋問している時の記憶が無く、ただサノアルと寝てしまったという事実だけが残り、罪悪感からか、そういう行動にでたのだろう。

だけど、サノアルはジェイド王子の魔力のせいで昏睡してしまって、それを知らない。でもこれは推測でしかないから言わないでおこう。知らない方が幸せかもしれない。


「そう。私が仕入れた情報によれば、クラリアス領地への捜索はされないそうよ。」

「良かった…。苦労してここへ来た甲斐があったわ。リア、しばらくの間、私を匿ってくれないかしら。」

「えぇ。いいわ。でも、この本館の客室を使っているとお父様とお母様が通報してしまう可能性があるわ。だから、裏の屋敷に移ってもらう事になるけれど大丈夫かしら?」

「えぇ。あの人から逃げられるならどこでも良いわ。」

サノアルは震える自分の腕を抑える。よほど恐かったのだろうか。確かに私達は悪役令嬢なのだ。いつ殺されてもおかしくない役回り。特にサノアルはどのルートを辿っても死んでしまうし。


サノアルを裏の屋敷にうつして、ギルバートにお世話を頼んだ。彼なら安全だろう。私は自室の椅子にぐったりと座り込んだ。次から次へと、事件が起こっている気がする。眉間に人差し指をあてて凝りを解す。

すると、コンコンとドアをノックされる音がして、側にいたミアが急いでドアを開けにいった。

「お嬢様、クルス先生でございます。」

「入ってもらって?」


クルス先生は紙袋を持って現れた。

「お茶でもいかがですか?」


先生の誘いにのって一緒にお茶を飲む事にした。先生が持ってきた茶葉はハーブティーでリラックス効果のあるカモミールティーだ。口に入れた瞬間、とての懐かしい味がした。おばあちゃんみたいな味。

「随分お疲れのようですね。」

「色々立て続けに事件が起きてしまって、錬成陣を頭に入れるのでいっぱいいっぱいだっていうのに。」

「もう少しペースを落としても構わないと思いますよ?もう我々と同じレベルまで到達しているといっても良いぐらいですし。私が教える事なんて、僅かにしか残ってませんし、授業回数を減らしてみてはどうでしょう?」

「それは嫌!…あっ。です。先生とお喋りする時間が減ってしまうじゃないですか。」

そう、私は好きなのだ。先生の優しい喋り方、声、仕草が。少しでも側にいたいと思ってしまう。不思議な気持ち。どうしてだろうか?先生を親のように思っているのだろうか。

「ははは。とても嬉しい事を仰ってくれますね。では、授業回数を減らして、このように定期的にお茶を楽しみましょうか。今、エルヒリア様に必要なのは休息ですよ。」

「休息…ですか。」

確かに、店の建築で行き詰っている状態だし、解決するまで休息をとっても良いのかもしれない。

ふと、先生を見た。先生は穏やかな笑みを浮かべて紅茶の香りを楽しんでいるようだった。この空気が好きだ。先生といると安心する。安らげる。初めて心から息ができる。

ふと目が合ってしまった。するとフワリと微笑んでくれて、それが嬉しくて自分もニコッと笑ってしまう。


楽しいお茶の時間が終わって、裏の屋敷の食堂へ行って皆と食事をした後、とんでもない知らせが届いた。

どうやらプレジャデス第一王子殿下が行方不明らしい。本当に次から次へと事件が起きる。

どうやらそれで、4公爵、略して4公が王から招集を受け、お父様が夜だというのに王都へ向かおうとしていた。丁度ドーリッシュの様子が気になったので、一緒に王都へ同行しても良いか聞き、許可が降りたので急いで用意してミアと一緒に馬車に乗り込んだ。

ミアに「お嬢様はいつも急でございますね。」とチクリと心に刺さることを言われてしまった。


お父様は馬車に魔法をかけて空に浮かせた。実は浮いたのではなく、お得意の氷魔法で足場を作り、そこを走らせて、走り終わった足場を消していくという粋な魔法を使っているのだ。

特別な訓練を受けている馬は何も疑わず走り続けた。クラリアス邸から王城まで普通の馬車なら2日はかかるところ、クラリアス公爵家の馬車は3、4時間程度で到着する。


王城に着いたのは深夜だった。一番遠いクラリアスが一番最初に着いてしまっていた事と、夜も遅いので王城に泊まる事となった。

本来はメイドと一緒にベッドに入る事などダメだけれど、私とミアの仲だ。今日は隣で寝ようとお願いして、一緒に1つのベッドに入ってもらっていた。

「お嬢様、前々から申し上げようと思っておりましたが、お嬢様はクルス先生に恋をしていらっしゃいませんか?」と、ミアからとんでもない事を言われて変なところに唾が入って咽てしまった。

「ケホッ、ケホッ、いきなり何を言い出すの?」

「いきなりではありません。今日は特に恋する乙女のような目をしておりました。ジェイド様が可哀想です。」

「可哀想って、ジェイドはもうすぐ…。」

ミアは首を傾げる。

そう、ジェイドはそのうち死んでしまうのだ。そういう運命の人だ。だから別にクルス先生に恋したって構わないはず。だけれど、そんな事言えるわけもなかった。それにこれが恋なのかどうかも自分の中ではっきりと答えを出せない。前世のラーメン屋の店長にも同じ思いを頂いていた事があって、大きな手でぶっきらぼうに頭を撫でてくれる手がとても好きだった。それと同じような感情で恋と呼ぶのかどうか定かではなかった。

「お嬢様?」

「あぁ、ごめんなさい。違うの。多分。これは恋じゃないわ。愛よ。」

「もっと悪いじゃないですか!!ジェイド様~、うちのリア様がごめんなさい~。」と涙を流すミアであった。

いつもありがとうございます。感謝!!

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