3話 俺だけの世界、俺だけの、マインクラフト
“ーMinecraftーチキンサバイバル3話 木の上で秘密基地作り”
そう書いてある動画を押した。
2話も見たけど、1話と同じように面白いとしか言えない。
まず最初、エルブイは洞窟に潜った。
昨日防具がなくて、それで死んでたからね。
それで全身鉄防具にしたら後ろのクリーパーという爆発するモンスターに気づかなくて死亡。
復活して、瀕死になりながらも、エルブイはスケレトンライダーをなんとか倒すことに成功した。なんとか、ね?
スケレトンライダーとは、1話目にエルブイを倒したモンスターである。
骨で出来ている馬に乗っている、弓が武器のスケレトン。
なんかエルブイめっちゃ喜んでるんだけど? おもろ。
「よっしゃやったぜ。仇を討ったぞ。いやーマジで強すぎてさ、夢に出てきそうだもん」
そう言いながらエルブイは骨馬を倒した。
「マジか……こいつw」
骨馬は結構レアなやつなのにさw。
無害でレアな動物だということを知らないの?w
3話の内容はタイトル通り、木の上に秘密基地を作るものだった。
「俺はネットで秘密基地の写真を見てさ、こうやって写真通りにやればいけるんじゃないかなと思って」
「あれ…なんか違くね?」
何ヶ月後に分かったことなんだけど、秘密基地はジャングルの木を使う方がいいらしい。
要するに高い木ってことだ。
「これはねぇだろ」
「なんで高さ6ブロックのオークの木で家建ててんだよ(笑)」
マイクラのブロックとリアルは違う。
そりゃ自分より3倍高いところに建てるのは安全でいいと思うけど、それはリアルの話。
マイクラは1ブロックより小さいブロックが設定できない。
ハーフブロックというものもあるけど、細かい修飾をするには建物を大きくするしかない。
そういうのがいまいちわからないけど、大きい建物の方が綺麗に作れるってことだ。
高さ6ブロックのオークの木を使ったエルブイの秘密基地はこういう感じ。
屋根は平。
真ん中にドアがある。
おしゃれのつもりなのか、床だけは別の色の木だ。
ドアの両側に一つずつのガラスのブロックがある。
「普通だな」
ていうか、遠目で見てみると……
「人間の顔に見えるんだけどw」
両側のガラスが目、ドアが鼻、肌色の木の床が口に見える。
ついでに秘密基地に登るためのはしごが髭に見えるわ。
………俺の寿命を縮めないでくれ。
「あぁそう言えばね、俺自身でもわかんないんですけど、前前回の1話が少しバズっちゃって、はい。なんか、高評価が6千人でした! ありがとうございます!」
ということらしい。
まぁそりゃそうだよね。
この人面白いもん。さすがチキンサバイバル(笑)っていうね。
「……」
マイクラは絶対面白いんだよね?
なのに出来ない。母さんのIPadのパスワード知らないから、ダウンロードが無理。
マイクラをいつ、自分の手で操作できる日が来るのか、俺はエルブイの動画を見ながらそう思ったのだった。
ーー1ヶ月後ーー
あれから1ヶ月が経った。
クリスマスの日にマインクラフトをダウンロードしてもらうって決めてたけど、待ちきれそうになかった。
頭の中で色々な妄想が膨らむ。
ユーチューブで色々な初心者用動画とかを見た。
“マインクラフトの1日目にやるべき10つのこと”
“サバイバルに役立つ100のコツ”
“ダイヤが大量。ブランチマイニングのやり方”
今日は俺の誕生日だ。
母さんは1ヶ月に一回家に帰ってくる。
誕生日なら、問題ないのではないか。
クリスマスじゃなくてもいいでしょ。
たった一言だけ。
”母さん、誕生日プレゼントのことなんだけどさ、ダウンロードして欲しいゲームがあって…“
これだけの一言。
体が熱くなってくる。この一言で得られるかもしれない喜びや楽しさを想像して、熱くなる。
もう待てない。
「母さん……」
期待を込めて俺は言う。
結果・・・成功した。
母さんはお金“0.99$”の所を見たけど、何も言わなかったってことか。
熱くなった体でiPadを受け取る。
やっと。やっとだ。
Minecraft のMineは英語で“私の、私のもの”という意味があるらしい。
自分の、私のクラフト。それでマインクラフト。
自分だけの世界が作れる。冒険できる。
実にこのゲームらしい名前だ。
“ダウンロードが完了しました”と出て、俺はすぐにマインクラフトのアイコンを押した。
俺だけのワールド、俺だけの家、俺だけのマインクラフトが今、始まる。