2話 チキンサバイバル
まずは最初から見始めることにした。
ユーチューバーの名前を見てみる。
「“Last Vega gaming“……ラストベガ、ゲーミング」
なんかブランドの名前みたい。
ユーチューブのアイコンは、マインクラフトの鶏を擬人化したみたいなやつかな?
“ーMinecraftーチキンサバイバル1話 野馬の調教とスケレトンライダーとの戦い“
そう書いてある動画を押す。
「やっほーみんな。俺のチャンネルへようこそ。俺の名前はLvゲーミング…………」
名前ってそのまんまだな。Last VegaだからLv。
フェイスカメラにしてるんだ。自分の顔を写して、視聴者がそれを見られるようにするやつ。
顔をパッとみて、なんか野球部っぽい人だなって思う。
決して短髪でもないし、髪が伸びているわけでもない。
前髪は少し伸びていて、その他は短髪に近いレベル。
顔のパーツは整っている方かな。
なんとなく、なんとなくだけど、野球部の人が髪を伸ばしたら、こういう感じになるのかな。
呼び方はLvだからエルブイでいいや。
動画の内容....まずマインクラフトとはどういうゲームなのかの説明。そしてエルブイは他の人がやっていて、人気なので自分もやってみることにしたと話す。
「いやー、俺一回三日間試しでやってみたんですけどね。ほら、ユーチューバーが操作とか色々試していて、気づいたら動画は終わってたみたいになるのって嫌じゃないですか。だからやってみたんですけど、死にっぱなし。とにかくやってみたら分かりますよ」
ワールドを作り始めたらしい。俺は静かになって、動画を見始めた。
なんか初期スポーンは平野で、馬がたくさんスポーンしている所に出たらしい。
そこでエルブイは雪のように白い馬を見つける。
「うわぁ!ベガサスかよ!」
白い馬を見て、エルブイはそう呟いた。
「……」
吹いた。過呼吸になりそうだった。
「べwガw、サスwだって(笑)」
声はそんなにイケボじゃない。
でも、人懐っこいような、そういう感じ。
日本にユーチューブが現れて、10年近く経っている。
イケボだの、カワボだの、それで人気になっているユーチューバーももちろんいる。
別にそういうのが嫌いってわけじゃないけど、顔を出してる人の方が好きだ。
表情が読める。
そっちが楽しんでる分、こっちも楽しい気分になる。
そういう意味では、俺はエルブイが好きだ。
動画がかなり終盤に近づいてきた。
エルブイは村を見つけて、野馬を調教し、それに乗っている。
マインクラフトでの雨が降り始めて、結構経った頃だった。
(ドン!)
「え?何?雷? マインクラフトって雷があるんだね」
どうやら、目の前にあるものに気づいてないらしい。
「ふぁ?攻撃された? なんだよ、あれ。怖くない!?」
「ヤバいヤバい、体力ねぇぞ。逃げないとダメd((」
(死んだ)
さっきからエルブイはたくさん高所から落ちて、それで体力が削られていた。
どうやら、食べ物を食べて回復することを忘れたらしい。
「あーはい。ていうことで、俺が死んだんで、今日の動画はこれで終わりにします。はい。さようなら」
もう一度過呼吸になりそうになった。
流れ完璧すぎだろ。
この人は面白い。俺はそう確信した。
そういえば、この動画は……
「1年前の投稿だ」
チャンネルをスライドしてみてると、たくさんの動画が投稿されているということが分かった。
“ーMinecraft Hexxit Modーチキンサバイバル2話 巨大ダイヤの剣で、隻眼アイアンゴーレムと戦闘”
これもまた面白そうだ。
疑問に思ったけど、このチキンサバイバルって何だ?
そうやってしばらくスライドしていたら何となく分かってきた。
どうやらエルブイはマインクラフトが下手らしい。
そりゃそうだよな(笑)
マインクラフトでは、チキンはhpが低いので、それに例えているのだそう。
下手、ぬーぶのサバイバルでチキンサバイバル。
「面白そうじゃん」
これで夏休みは退屈しなさそうだと、俺は思った。
エルブイは実際する人物ではありません。
憧れの人みたいなものです。