ーBEGINNER PLAYERー『零.』⑥ 敵の敵が味方なら、味方の味方は
アキ:▷弟子よ、遅れてごめん! マッチング、行こっか?
エルブイ:▷おお、ついにですか!?
アキ:▷待たせてごめんね。レジェンドまでランクを上げられたから。
エルブイ:▷すごいです! すごいですよ!
アキさんは、レジェンドランクまで上がれたらしい。
「本当にすごい……」
戦績の方を見てみた。
アキさんの一番使っているキャラは、『ジミー』。
ファニーラーゼみたいに、黄色ゲージがあるキャラ。
まずはジミーは一撃ずつ、通常攻撃をするキャラじゃなくて、1秒間に8回も、小さい通常攻撃のダメージを与える。
攻撃速度はそれがずっと一定で、それ以上は増えない。
買われた装備で増える攻撃速度は、移動速度の方になるらしい。
必殺1は、ジミーの黄色ゲージを消費して、通常攻撃のダメージを高くするやつ。
必殺2は、ジミーの黄色ゲージを少し回復して、指定方向に移動できるやつ。
必殺3は、ミサイルを作って、遠くの方に飛ばすやつ。
通常攻撃に特化したキャラっていう感じだな。
とにかく、ダメージが高い。
黄色ゲージと俺は呼んでいるが、このゲームでは『エネルギー』と呼ばれている。
アキさんすごいな。
『火力が下手な人がいるなら、俺が代わりにやるしかない』
その言葉通りに実現してしまってる。
アキさんのプロフィールの他の『使っているキャラ』では、ハンターの『キャリーラエ』、メイジの『ハーリーズ』がそれぞれ2位、3位になっていた。
枠外であるが、4位には、タンクの『ミノータル』が入っている。
アキさんの言葉を思い出す。
エルブイ:▷『火力が下手な人がいるなら、俺が代わりにやるしかない』とのことですが、火力が上手い人がいる場合、アキさんはどうしていますか?
アキ:▷あぁ、そういう時? もちろん俺はタンク役をやるよ。
「す、すげぇ……」
この頃からかな、俺が万能プレイヤー、『オールラウンダー』に興味を持つようになったのは。
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ルーム招待が来た。
俺は『同意』のところをタップ。
誰か、知らない人が入っていた。
エルブイ:▷あの……よろしくお願いします!
アキ:▷よろしく〜
みい:▷え、これがアキの弟子? わーい。可愛い後輩だね。
エルブイ:▷あの……。
アキ:▷あぁ、これ? 俺の師匠。タンク専だって。
エルブイ:▷あ、そうなんですか! あの、よろしくお願いします!
みい:▷いえいえ〜
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試合が始まった。
俺が今回、使用するのはタンクの『ロインテール』
アキさんは普通に、ジャングルを狩りに行った。
みいさんはメイジも使えるとのことで、メイジキャラの、『カグラ』を使用してる。
アキさんは手慣れた手付きで、ジャングルを狩り始めた。
「おお、まずは『パープルバフモンスター』からか……」
そのモンスターを倒したら、『パープルバフ』を手に入れることができる。
『パープルバフ』は主に、スキルクールダウン時間の短縮、マナ回復の速度を上げる。
「なるほど、それでジミーの強化通常攻撃の数を増やすんだな?』
そのあと、アキさんは『レッドバフモンスター』を倒した。
レッドバフはヒーローのスキル攻撃を少し上げることができ、通常攻撃のダメージを少し増やす。
これだけを見ると『バフ』は別に強くないものに見えるかも知れないが、モンスターを倒すと『職業ボーナスゴールド』がもらえるので、装備が買える。
ミニオンの発生には時間がかかるので、その隙間時間に効率的にジャングルを狩って、それで相手とのゴールド差をつけるって感じか。
俺はブッシュに隠れ、『ロインテール』の必殺1で移動し、スタン機能付きの強化された通常攻撃で、敵を1秒スタン刺せた。
そのスタンにアキさんは気づいて……。
アキ:▷上手いじゃん! ナイス足止め。
エルブイ:▷こちらこそ気づいてくれてありがとうございます!
みい:▷私のこと忘れないでね。メイジの火力で、ダブルキルゲット〜
3人の協力は、凄まじいもので、試合はこちらの『無双状態』で、幕を閉じた。
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アキ:▷みんなお疲れ。エルも意外とタンク上手いな。
エルブイ:▷え、本当ですか!? ありがとうございます!
みい:▷うんうん、ありがとう! ロインテールの必殺2の、盾がなければ私は死んでた!
エルブイ:▷えへへ……。
みいさんはそこで、何かに驚く。
みい:▷え、え、え! え?
アキ:▷うん? なんかあった?
みい:▷レジェンドランクに入ってるじゃん! 凄くない!? 私、今、グランドマスターだよ!?
アキ:▷いやそれは普通に、試合数が多かったから俺は行けたと思う。みいって、タンク上手いし、上手い人と一緒にランクを回せばレジェンドくらい、余裕じゃないかな?
みい:▷いやいや、それでも行けないって!
アキ:▷そうなの、ありがとう!
みい:▷いいな〜私もランクたくさん行きたいけど、仕事が忙しくてさ……。
アキ:▷それは、大変だね。
二人のチャットを俺はただ、眺めていた。
あれだろうか、アキさんはいつ、みいさんに会ったのだろうか。
どうやってみいさんと師弟関係になり、そんなに仲良く話せるようになったのか。
二人は、俺の存在に気づいているのだろうか、多分、あともう2分くらい、気づかないんじゃないかな。
俺も、アキさんとみいさんみたいに、仲良く話せる人を探したいな。
嫉妬を、覚える。
何か、嫉妬のような、ヤキモチのような、そういう気持ちを胸に感じた。
アキさんは性格明るいし、みんなに好かれそうだな。
俺はどうだろう、俺が小学四年生だということを二人が知ったら、どう思うのかな。
黒い染み。
炎が、静かに、燃え上がって。
紙にゆっくりと、染み込む。
「そういうことを考える俺って、優しくねぇやつじゃん」




