17話 自由気ままに、マイペースで
〇〇ゼミの電子図書館に入った。
〇〇という普通の名前だから、なんか名前つけよっかな。
俺にとっての娯楽だから、“娯楽ライブラリー”……とか?
“本を選ぶ”のところに入って、新着順から本を探した。
探す本は、どろぼうをするキツネとイノシシの相棒が冒険をするという、低学年向けの本。
家にいるのはつまらなかった。
何か、俺が夢中になれて、全てを忘れられるような、そんなものが必要だった。
ドラ○もん? 全部読んじゃったし笑。
小説とかは、あんまり好きじゃない。
だから俺は、そういう低学年向けの本を探してる。
うん、つまんないよ、本当に本当につまんない。
でも、そういうのを試しに読んで俺は見つけたんだ。
つまんないなと思いつつ、文字を睨みながら本を読むとね。
はは! おもしろ! この本、おもしれぇな!
いいじゃん! 俺はそういう本嫌いじゃねぇぞ!
おもしろい! だからこそ本は素晴らしいだな!
俺は頭いいな! うん! 頭いいよ!
俺は天才だー!
無理矢理自分に、“本はおもしろいもの”だと言い聞かせながら読んだ。
そうすると不思議なんだ、本当っに不思議。
全てが忘れられるんだよな。
余裕がない時だと集中できないゲームとは違って、本は、全てのものを忘れさせる。
思い出したくないことだったり、イライラしていることだったり。
唯一時間を忘れさせるもの。
本というものに俺は、縋りに縋ったのだった。
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「玲士さん、これはどういうこと? 二週間連続も宿題を出してないじゃん」
「…………」
「玲士さん聞いてる?」
――バン!
「はい。聞いてます」
机を叩く音って、怖ぇな。
「明日出してね、絶対」
「分かりました」
「「「…………」」」
クラスメイトは俺を冷たい視線で見ていた。
あれなんだっけ、俺が娯楽ライブラリーで読んでいた、あの本。
いかにも低学年向けの、『ーいじめに立ち向かうー』という題名の本。
”みんなと『違う』という理由で、小学生の間には『いじめ』という問題が起こりやすいと言われています“
やけにカッコで強調されている文章の横に、一枚の絵があった。
頭が丸く、いかにも子供向けの、親しみやすい絵。
一人の子供が何かを言って、その隣にいる子供は泣いていた。
そういう風に描かれた絵。
それなら気をつけないといけないな。
疲れた。
もう疲れた。
毎日がだるすぎる。
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もし他の人が俺だったら、どうしていたのだろうか。
これは何年後になっても、俺が考えるのをやめない問題であった。
日本人は我慢強いとか、そういう話をよく聞く。
じゃあ、もし俺の場合だったら、我慢しちゃうのかな?
我慢して、誰にも言わないで、我慢しまくるのかな……。
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MOBA系。エルブイが時々生放送でやるゲームだ。
待って、でもそれはパソコンでしか、できないゲームじゃないの?
ググってみる。
あった。どうやらモバイル版のMOBAもあるらしい。
「ディメイショナル・オンライン……」
賭けてみよう。
俺が先に飽きるか、ゲームのおもしろさが勝つか。
なんか、疲れてきたな。
宿題とか、めんどくせぇ。
その考えは突然、ひらめく。
「全部、半分くらい、投げ出してもいいんじゃね?」
そう、これが当時、俺の下した決断だった。
宿題とか、そういうものを投げ出すだけだと思う。
なんで、そういうことを選んだのか、俺は知らない。
我慢するという考え方もあったのに俺は、投げ出すことを選んだ。
この考え方はいずれ、俺の生き方に変わってゆく。
“自由気ままに、マイペース”に生きる、俺の生き方へ……。
一年後、俺は目撃した。
そん時俺は五年生になってたっけ。
偶然で終わり、偶然で終わるっていうね。その場面に俺は再び立ち向かうことになる。
その日、学校から家帰ろうとしたら、花梨さんがどこかに向かっていくのかが見えたんだ。
なんで俺はついていったんだっけ。
「あのね、私・・・・」
俺は黙ってその場を離れる。
同じ学年の男子の誰かだった。
「一緒に帰ろうぜ!」
「家の方向違うっしょ?」
「あ……いやでもさ、校門まで一緒に帰ろ」
「やめとく、ごめん」
勇己は相変わらず俺に話しかけてくれる。
俺は宿題何も出してないのにな……。
寂しい? そういうのは、感じなかったな。
俺はもう、どうするべきなのか知ってるもん。
宿題とか、学校は投げ捨てた。
家の生活は、良い方にも悪い方にも向かわなかった。もしかしたら悪い方に行ってるのかもしれない。
でも俺は我慢できないんだ、そういう場所が。
心を保つためには、本が必要。宿題なんかやったら、気が狂う。
無理矢理そうやって自分に言い聞かせた。
その頃の俺は、宿題というものを、投げ捨てることしか考えてなかった。
でも今の俺には分かるんだ。
その心の底にはもう、その考えが染み付いてた。
「俺は自由気ままに、マイペースに生きていたいだけだもん」
これで第1章は終わりです。
次話からは、第2章とは別の章に入っていきます。
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