15話 絵夢
俺の作った造語です。絵に描いたような綺麗な夢。絵夢。M。
〇〇ゼミの青い箱を見た。
俺はさ、今大変な気分になっているのに、なんでだろう。
箱の中身が気になって仕方がない。
青い箱を開けた。
なるほど。このタブレットを使って、通信教育をやるんだな。
てか、それの意味って何?
iPadを使ってグーグルで調べてみた。
通信教育。
その意味は”自宅で学習しようとする者のために、主として通信によって施す教育”
お母様笑、塾の送り迎えがめんどくさいからってこれはなくない?
はぁ……、なんか苛立ってくんのは気のせい?
「説明書・・・・」
見てみよっかな。
え………息が止まったような錯覚を覚えた。
説明書には、“〇〇ゼミ”のおすすめ機能! なんと、ゼミのサービスを利用すれば、サービスの中の電子図書館に内臓されている本が無料で読めるんです!」と書かれていた。
「え、本って、小説の、あの本のことだよね!? あの、物語が書かれている小説のやつ?」
俺はまだ小説のことを、詳しくは知らない。
でも、これで、暇つぶしができるのかもしれない。
あの、午前1時からの暇つぶしに。
母さんに対する苛立ちは、次第に消えていった。
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俺は歩きながら、あの頃の『思憶』について思い出した。
右手を掲げて俺はゆっくりと、何かを確かめようと目を凝らす。
肌色の光、俺の軌跡が、今も俺の右手に焼き付いている。そして、左手にも。
先日、友達のあっくんに言われた。
「簡単に違う世界に生まれたかったなんて言うもんじゃない」
確かにそうだけどさ、俺も、違う人生に生まれたかった。
「その言葉で傷つく奴がいることをこの目で見てきた」
もし俺がすごい大学に入っていて、将来も決まっている人だったとして、それらの言葉を言われたら……。
は?ってなるよね。
俺はなんて、醜いやつなんだろうな。
「はははw」
夜の公園は誰も来ない。
ゆっくりと息を吸う。
夜の公園には、夜の公園の独特な匂いがする。
俺はね、この匂いが好き。
何とも言えないような、その匂いが。
俺の大事な、思憶たち。
公園のその空気をたしかに肺に感じながら、俺はゆっくりと過去に思いを馳せた。
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エルブイの動画で、最近ハマっているものがある。
“MOBA“系の、タワーディフェンスゲームを実況している動画だ。
MOBAとは“マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ”の略とのことだった。
3vs3や5vs5などのチームに分かれ、お互いの拠点を取り合うゲーム。
相手の本タワーのhpをゼロに減らすことができれば勝ちらしい。
「オンラインゲーム……!」
マイクラはたしかにつまんなかった。
でもそれは俺が独りでソロプレイをしてたからではないか。
「他のゲームが必ずしもつまんないとは、限らないか……」
ユーチューブで100人のプレイヤーで銃で戦い合うバトルロイヤルの実況動画を見たことがある。
やりたくなるほどには面白くなかったと思うけど、つまんないとも思わなかった。
MOBA系。
これこそが俺のやりたかったゲームではないのか。そう思った。
試したい。試して、そのゲームを楽しみたい。
そういう衝動にかせられた。
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思憶………いい思い出だな、あれは。
できれば、明るい性格の、普通の家族の世界線に生まれたかった。
今の世界線の記憶を忘れてもいい。
ただ、普通の、笑いが響く世界で、「生まれたかっただけなんだ……」
「でもそれがいけないよね。ねぇ、あっくん」
たしかに、正しいな。
そう思うってことは今の、俺を否定しているようなもんじゃん。
思憶の反対は、忘憶……か?
あの冬休み、俺がしたことはもう一つある。
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俺のした、もう一つのこと……。
母さんに、父さんと仲良くなってって言われた。
でも何をすればいいんだろう。
何か俺にできるようなこと……。
父さんは、英語ができるんだよね?
「あのさ父さん、今日から俺と英語で喋ってくんない? 俺さ、英語を喋れるようになりたい」
伏線みたいなものが入っています。




